名古屋水族館のイワシとマグロのストーリーに、オチを付けたくて
emi さんが「イワシとマグロ」という記事を書いておられる。例の名古屋港水族館の黒潮水槽で、イワシの群れがだらけてしまって緊張感が薄らいだので、活を入れるために天敵のマグロを投入したというストーリーに関する論評だ。
このお話、なかなかビミョーに込み入っていて、しかもまともなオチがつかなかったために、誠に残念な結末になってしまっていて、emi さんも次のように言っている。私としてもまったく同感である。
あーあーあ。
せっかくおもしろいネタだったのに。
こんなことならニュースにしないで、数日寝かせて上手にアレンジして
完成度の高いエイプリルフール話に仕上げておけばよかったよね。
日本のメディアのセンスでは難しいか。
ことの顛末はご存じの方も多いだろうし、emi さんの記事に手際よくまとめられているので、今さら繰り返す必要もないほどだが、一応ざっとレビューしておこう。
まず、朝日新聞が 3月 26日に、"水族館イワシに迫る危機 「緊張感を」 マグロ軍団投入"という記事を報じたのが発端。実際にそれは実行に移され、28日には "悠々マイワシに緊張走る 天敵クロマグロ、ついに水槽へ" という続報まで出た。
ところがその翌々日、Slashdot に、その水族館の飼育係を名乗る人物からの投稿があり、元々、イワシもマグロも同じ水槽で飼育しているのであり、「実は連日の報道の目的の部分『イワシに喝を入れるためにマグロ投入』はマスコミの創作です」という「告発」が為されてしまった。(参照)
で、一時は「またしても、朝日の捏造記事か」とネットの世界は色めき立ったのだが、水族館に対する再取材で、あの飼育係はなりすましで、水族館側ではそんな投稿はしていないと判明。さらに、朝日の記事は不正確ではあるものの「完全な創作というわけではない」なんていう、実に「どーでもいい」ことになってしまった。(参照)
まったくもう、同じネタを使うのでも、もう少し上手にお料理してくれないと、読み手としては消化不良状態のまま放って置かれたような気がしてしまう。
ここで話は唐突にぶっ飛んでしまうのだが、私はこの顛末で山之内貘という詩人の『鮪に鰯』という作品を思い出していたのだった。「鮪の刺身を/食いたくなったと/人間みたいなことを/女房が言った」で始まる詩である。
先頃死んだ高田渡が曲を付けて歌っているので、ご存じの方も多いだろう。YouTube でも聞けるので、この際だからえいやっとばかりにエンベッドしておこう。(詩は こちら で読める)
詩人は 「亭主も女房も互に鮪なのであって/地球の上はみんな鮪なのだ」と言っている。「ビキニの灰をかぶって」 核汚染されているとはいえ、マグロであるというのである。貧乏詩人であってもアル中のシンガーであっても、みんなマグロであると思っていられたのだね、あの頃は。
そして今、あの頃に比べてかくも豊かになったというのに、もはや我々は自分がマグロだなんて決して思えない時代に生きている。それどころか、突然外からマグロを投入されてちょっとびっくりこいているイワシであったりするのである。「だらけていて、何が悪い?」なんて、シニカルにうそぶきながら、群れに付かず離れず泳ぐイワシ。
「ビキニの灰をかぶっている」なんていうのは、あの震災以後の現状を振り返るに、あまりにできすぎで気持ち悪いほどなのだが、名古屋の水族館と朝日に代わって、少しはオチをつけてあげられたかな? 大分回りくどくて、無理矢理なオチではあるけれど。
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コメント
とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
投稿: 自己ピーアール | 2013年5月30日 12:34
自己ピーアール さん:
いつものお行儀の悪い履歴書屋さんですね。もう来なくていいです。
それから、リンク先をもっと楽しいページに変えさせていただきましたので、よろしく。
投稿: tak | 2013年5月30日 23:27