鯉のぼりの老人ホーム
最近地方で、川越しとか谷越しとかに鯉のぼりをずらりとさしかけて、それがらみのイベントをするのがはやっているようだ。「鯉のぼり」 をキーワードに画像検索すると、そんなのがわんさとヒットする(参照)。我が居住するつくば周辺でも、川の両岸に満艦飾の鯉のぼりを立てて、屋台の店なんかが出ている。
それでなくても、ここ茨城県南部は鯉のぼりの盛んな地方のようで、30年前に引っ越してきた時は、一軒の家の庭に、20匹ぐらいの鯉のぼりが圧倒的に泳いでいるのを見てたまげた。1本の柱に沿って上げるのでは足りないので、柱のてっぺんから逆V字型に 2本のロープを張り、そこにびっしりと鯉が結ばれるのである。
聞けば、この地域では男の子が生まれると初節句前に、親類縁者から次々と鯉のぼりが贈られるのだそうである。本家だの分家だのいう「格」によって、贈る鯉の大きさまで決まっているという話さえ聞く。それで 1本のロープでは足りなくなるほどの「大家族の鯉のぼり」になってしまうのだ。
初節句ばかりでなく、七五三なんかもかなり派手にやるようで、親類縁者一同が料亭に集まり、主役の子供が「お色直し」をするほど金をかけた宴会をするのだそうだ。私は地元出身ではなく、いわゆる「新住民」なので、そうした宴会は話に聞くばかりだが、とにかくそういうことには金をかけるらしい。
しかし近頃、その「大家族の鯉のぼり」を見ることが、めっきり少なくなったのである。
私がここに引っ越して来た頃に初節句を迎えた男の子たちは、もう 30歳を過ぎた。ちょっと前の感覚だと、とっくに結婚して子供がいてもいい年頃だが、最近はそうはいかない。30歳を過ぎて独身というのが少しも珍しくないどころか、どちらかと言えば多数派と思えるぐらいだ。農家では 40歳を過ぎた独り者ばっかりである。
そんなわけで、お定まりの少子化なのである。夫婦がバース・コントロールをして産む子供の数を減らしているというよりも、なにしろ結婚しないのだ。子供は結婚しなくてもできないわけじゃないが、この辺りの状況では、未婚の母みたいな存在も少ない。子供が減って、年寄りばかりが増えるのである。
そうなると、親類同士であれだけどっさりあげたりもらったりした鯉のぼりが、今は押入の奥で山のように死蔵されることになる。子供は育っておっさんになるが、高度成長期以後の鯉のぼりは合繊なので、いつまでも長持ちするのだ。
それで、せっかくの鯉のぼりを押入の奥で日の目を見ることもなく死蔵するのはあまりにも不憫だというので、年に一度の虫干しというわけでもないだろうが、川越しや谷越しにずらりと並べて満艦飾にするイベントが、田舎に行くほど盛んになっている。何しろ鯉のぼりはどこにでも売るほどあるので、飾るのに事欠かない。
あれは見た目はなかなか派手だが、実は鯉のぼりの老人ホームみたいなもののようなのである。
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コメント
へぇ~、鯉のぼりが余ってるんでげすか。
ま、このご時勢じゃ、また出番が増えるこたぁ、なさそうでげすな。残念ですがね。
あたしゃ思うんですが、こういうのも、経済効率を優先したせいじゃねぇかと。
そういうのは、長い目で見りゃ、ろくなことにならねぇでげすよな。
おっと、余った鯉のぼりの活用法でげすが、鯔背なアロハに仕立てちゃいかがでげしょう。
本家のアロハシャツも、初期は着物を仕立て直して作ったてぇ話ですからな。
いいアロハシャツが出来ると思いやすよ!
投稿: 下衆兵衛 | 2013年5月 1日 14:47
下衆兵衛 さん:
ウロコが光るきらきらたろアロハですね (^o^)
投稿: tak | 2013年5月 1日 23:30