ネット選挙に、大金を投じるがいい
ずっと 「選挙に web を使わせろ」 というサブサイトをやってきた上に、今月 14日には "ネット選挙は、まだ「全面解禁」なんかじゃない" なんて勇ましいことを書いちゃったものだから、tak-shonai はずいぶんネット選挙に入れ込んでいるなんて思われているかもしれないので、ちょっとクールダウンしておこうと思う。
元々 「選挙に web を使わせろ」を始めたのだって、特別な思い入れがあってのことというより、「当たり前のことが、この国では何で当たり前にできないんだ !? 」という驚きからである。だから、今頃になってネット選挙が解禁になったとたんに、何も知らない政治家が広告代理店の餌食になるかもしれないという気はしていた。
そんなことなので、"ネット選挙解禁・有料バナー広告で格差 無所属不利、「金権」に拍車懸念も" なんていう記事が出ても、別に驚かなかった。無駄に失っても惜しくない金のある政党は、どんどん無駄遣いすればいい。ネットを上手に使えるスマートな候補が、きちんとした使い方をしてくれさえすればいい。
そもそも、これまでの投票率を辛うじて支えてきたような、地方のじいさんばあさんは、ネットなんて見ない。だから 「ネット選挙解禁」 なんて言っても、「よくわかんないけど、なんだかやってるみたいね」 ぐらいにしか思っていない。ネット選挙の効果が及ぶのは、普段フツーにネットをやっている有権者に対してである。
例えば、フツーにネットをやっている有権者は、政党から選挙キャンペーンのメールが来たって、そんなのまともに読まない。ただでさえ毎日毎日膨大な数のメールが届いて、本当に読むのはその 10%もないぐらいなのだから、開いてみるのもうっとうっしい。
それに、たとえ開いてみたところで、どうせ歯の浮くような、そして選挙が終われば忘れ去られてしまうような、どうでもいいことがちりばめられているだけなのは、わかり切っているではないか。
さらにそれから、地元関係のウェブサイトに政党の選挙キャンペーン・ページに誘導するバナー広告が貼られたところで、まあ、一度ぐらいはどんなものか見るためにクリックするかもしれないが、行った先で 10秒以上滞在することもなかろう。知りたい情報があったら、自分でググって行く。
ネットに慣れた有権者は、政党や候補者の都合だけで運用されるメールは読まないし、いかにも急ごしらえのキャンペーン・ページにも行かない。そして、そもそも 「ネット選挙って何?」 というようなじいさんばあさんにとっては、そんなの全然関係ない。つまり、ネット選挙に金をかけても、効果は悲しくなるほど薄いだろう。
ネット選挙解禁といっても、私が期待しているのは、なにも特別なことじゃない。そもそも「ネット選挙」なんて言うからまぎらわしいのである。ネットは選挙対策のためにあるんじゃない。日常的な情報発信のために使ってこそ、選挙でも生きるのである。
だから、普段からフツーにブログや SNS を通じてまともな情報発信をしてくれている政治家が、選挙期間中もしっかりとリアルタイムの情報発信を継続してくれさえすればいい。私の期待は、言ってしまえば、この一点に尽きる。これまでは、こんな当たり前のことができなかったという、それだけのことなのだ。
他のことに関してはすれっからしだけれど、IT 関連についてはどうしようもないほどウブな政治家が、広告代理店の口車に乗って、役にも立たないウェブサイトやバナー広告に大金をはたくなら、それはそれで 「お好きにどうぞ」 ということである。
そんなような、地元のボスとつながってるだけの「おっさん政治家」たちが、選挙が終わってから 「インターネットに大金使ったけど、全然効果がなかった。やっぱりインターネットなんてものはダメだ」 とこりごりして、ネット対策からすっかり引き上げてくれれば、なおありがたい。
この夏の参院選は、ウェブ上にどんなずっこけキャンペーンが登場するか、みものである。そして次回からは、まともな候補者がまともにネットを使いこなしてまともな情報発信をすることで、少しはスマートな選挙ができることだろう。
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