橋下発言と、マグダラのマリアのお話
今月 18日に "橋下さんの「トンデモ発言」について、二重三重に危惧する" という記事の中で、私は 「橋下さん、それほど滅茶苦茶なことは言ってないじゃないか」と、もしかしたら「トンデモ」と思われかねないことを書いた。ある意味、炎上覚悟だったが、今のところは炎上どころか、この記事には 1つのコメントもついていない。
この問題に関して、橋下さんは 「米軍の風俗活用推奨」は、さすがに勇み足も過ぎた発言と気付いたようでわびを入れているが、「慰安婦問題」に関しては、一貫して自分の主張を貫こうとしている。これは煎じ詰めたら、「日本だけじゃねぇんだ、お前らも自分の胸に手を当ててよく反省してみろ」ということだ。
私はこの間のゴタゴタは、「既に結論ありき」同士の、文脈を無視したせめぎ合いでしかなかったと思っている。図式的には、かなり馬鹿馬鹿しいレベルの低い話だ。
橋下さんは、慰安婦問題に関しては「マスコミの誤報」と怒っている。彼の気持ちとしては、「常々僕が主張していることをきちんと理解していれば、『慰安婦は今も必要』なんて言ってるわけじゃないことぐらい、わかって当然だろう」ということなんだろうが、私に言わせれば、「例えわかっていても、そうは書かないのがマスコミ」なのである。
大手マスコミ側には彼らなりの「既に用意された結論」というのがあって、すべての発言は、彼らの結論(というのが言い過ぎなら、「価値観」と言い換えてもいい)に沿って「翻訳」される。だから今回の発言も、彼が依って立つ「前提としての、よく知られていないわけでもない文脈」なんてすっ飛ばして、その部分だけトリミングして報道された。
マスコミというのは、そういうものなのだ。橋下さんが、「前の戦時下では、善悪は別として(慰安婦的な機能が 必要視されていた」というのと同じぐらい、善悪は別として、そういうものなのだ。
だから、私としては 「橋下さん、それほど滅茶苦茶なことは言ってないじゃないか」とは思っても、これはやっぱり、橋下さんの大チョンボなのである。よっぽど周到な手順を踏んで言うのでなければ、それは世間では通りにくいということを理解していなかっただけ、政党の代表としては失格である。人の世は、それほどクールじゃない。
彼の気の合う者同士(つまり「前提」を共有しているもの同士)では当たり前に通じる話でも、そうした文脈を受け入れないマスコミにかかれば、容易に「トンデモ発言」になってしまうのだ。私としては「そんなことぐらい、それこそ当然の前提としてわかっとけよ!」と、橋下さんには言いたいのである。
だから、私は一貫して橋下徹という政治家を支持することはない。こんなのを支持したら、アブナくてしょうがない。私はれっきとした改憲論者(参照)なのに、政治家の中で支持すべき改憲論者が見当たらないのは、悲しい限りである。
ただ、「慰安婦」を "sex slave" なんて「超訳」してまで彼を非難するのは、ヒステリックに過ぎる態度だと思うほかない。私なんぞはつい、マグダラのマリアの話を思い出してしまう。
「汝等のうち、罪なき者、即ちかつて姦淫の罪を犯せしことなき者は、先づ石にて彼女を撃つべし」と、イエスは言ったのだよね。橋下さんの件は、ここまで深いものとは言わないけれど。
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コメント
橋本さんは承知の上で挑発というか、意図的に発言を「炎上」させているものと思っていましたが……。
分かっていなかったんでしょうか。マスコミの手にかかったら、文意などお構いなしに発言を切り貼り引用されてしまうこと。
挑発だとしても、お行儀の悪い真似だとは思っていましたけど。
分かっていなかった、もしくはいざ炎上したとたんに日和ったのだとしたら、本当にがっかりです。そのクソ度胸にだけは感心したのに。
投稿: kanata | 2013年5月29日 21:38
kanata さん:
もし 「意図的」 だったとしても、もっと上手なやり方があったはずだと思いますがね。
投稿: tak | 2013年5月30日 12:17
奴隷的拘束のもとでセックスサービスを強要していたのに「慰安婦」などという単語を使うほうがよっぽどごまかしだと思うのですが。
投稿: Tonbi_ko | 2013年6月14日 21:01
Tonbi_ko さん:
「奴隷」と「奴隷的拘束」は違います。
「奴隷」の根本的定義は、「他人の所有物」であることです。
投稿: tak | 2013年6月19日 16:05