「アレルギー」の語源について、一石を投じる
今月 19日の "「アレルギー」の語源と、世間が本当にググらないことについて" という記事で、「ギリシャ語の "allos"(奇妙な)と "ergon"(反応) という 2つの単語を組み合わせて、ドイツ語風にアレンジした造語」と書いたが、これについてはちょっと怪しいということがわかったので、改めてこちらに書いておく。
当該記事にも【6月 23日 追記】として触れておいたが、Clark さんの次のようなコメントで、私は自分の甘さを反省した。
allos はプレーンに「他の(other)」を意味する語なので、「正しいもの」と対置して「変わった」となる場合もありますが、一語で「奇妙な」と訳すのは少々怪しい気がします。
この指摘で、私はギリシャ語がさっぱりわからないくせに、ネット上の「奇妙な反応」とした説を鵜呑みにしたことをとても恥ずかしく思ったのである。
で、改めてオンライン辞書で調べてみたところ、"allos" に対応する英語は "other" あるいは "another" であると信じていいようだと思われた (参照サイトは、こちら)。つまり「別の」とか「もうひとつの」とかいう意味である。
ただ、"ergon" というギリシャ語に関してはついに調べがつかなかった。しかし英英辞書で "ergo" を調べると "therefore or consequently" で、おおよそ因果関係のあるところにおいて 「それ故に」という意味で使われるというところから、古いギリシャ語の "reaction" (反応)という意味の言葉が語源だったのだろうと推測できる。
つまり「アレルギー」という言葉は、「(正常な反応とは別の)、もうひとつの反応」ぐらいに考えるのが無難なところという気がするのである。それを突き詰めれば「奇妙な反応」と解釈することもできるかもしれないが、確かにちょっと意訳しすぎという気がする。元々は「過敏な生体反応」を指す言葉として作られたのだから。
というわけで、日本語のネット上では「奇妙な反応」説が優勢だが、ここに一石を投じておくことにする。
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コメント
俺は蕎麦アレルギーなのです。
なんとか治す方法があったらなあ。
(´・ω・`)
投稿: ひろゆき | 2013年6月24日 20:20
知人が白血病で造血幹細胞移植を受けたんですが、そうすると免疫系が入れ替わってアレルギーも移植前とは変わってくるような話を聞いた覚えがあるけど、それはアレルギーを治すのとは違うからなぁ……(汗)
投稿: 山辺響 | 2013年6月25日 11:06
ひろゆき さん:
蕎麦好きの私の感覚からすると、蕎麦アレルギーは本当に気の毒です。
杉花粉アレルギーなんて、まだまだ生やさしいですね。
投稿: tak | 2013年6月25日 12:12
山辺響 さん:
そんなことがあるんですか。
前よりひどいアレルギーになったりしたら、悲惨ですね。
投稿: tak | 2013年6月25日 12:13
takさん、はじめまして、こんにちは。hokkaidenseと言います。
10年ほど拝見してます。2004年秋から2005年春にかけては
スペイン国からアクセスしてました。
それはさておき、語源の話が気になったので、投稿してみました。
指摘いたしたい点が何点かありますが、
まずは、ラテン語のergo(それゆえ)とギリシア語のergon(仕事、効果)を結び付けてはいけません。
これは全く別の語です。
デカルトが「我思う、ゆえに我あり」と言いましたが、
これはラテン語で、Cogito, ergo sum.でした。
ergoはラテン語の接続詞です。
で、allergyですが、寺澤芳雄(編)『英語語源辞典』研究社に
よりますと、ドイツ語のAllergieは、「1906年にオーストリアの小児科医Clemens von PirquetがNL allergia strange actionにならって造語したもの」とあります。NLとはNeo Latinを指します。
で、これを分解すると、確かにallosとergonになるのですが、
-ergyという接尾辞をこの辞典で引きますと、
「仕事、効果の意の名詞連結形」とあります。また、
元はergonですが、接尾辞としては-ergeia、-ergiaという形態
だったと語源の欄にあります。
よく考えますと、エネルギーのことを「エネルゲイア」と言いますよね。
したがって、「別の効果、作用」といったところから生まれた語ではないでしょうか。
先にラテン語があり、それをドイツ語訳したようですね。
投稿: hokkaidense | 2013年6月28日 01:05
hokkaidense さん:
>まずは、ラテン語のergo(それゆえ)とギリシア語のergon(仕事、効果)を結び付けてはいけません。
>これは全く別の語です。
そうでしたか。
ご指摘ありがとうございます。
この辺り、私、疎いにもほどがありますね ^^;)
>したがって、「別の効果、作用」といったところから生まれた語ではないでしょうか。
>先にラテン語があり、それをドイツ語訳したようですね。
おお、何とラテン語なんですか。
道理でギリシャ語で調べてもおかしな感じでした。
ありがとうございました。
投稿: tak | 2013年6月29日 23:39