一人出家すれば九族天に生まる
仏教には「一人出家すれば九族天に生まる」という聖句がある。自分が一人出家すれば、九族が天に生まれるというのである。
九族というのは、自分から上は父母の代、祖父母の代、曾祖父母の代、高祖父母の代の 4代、そして自分から下の子の代、孫の代、曾孫の代、玄孫の代の 4代を含めている。自分からみて両方に 4代ずつだから、自分の代も入れて、九族になる。
ただ、どうして「族」という字なのかは知らない。「尊属・卑属」は「属」の字を使うしね。
「出家」というのは、必ずしも家を出て僧侶になることとは限らないという説もある。『維摩経』に出てくる維摩詰のように、俗世間にいたままで悟りの境涯に達して、自由自在の生き方をすることでもいいというのである。出家する、あるいは仏道を悟るというのは、それほどの功徳のあることのようなのだ。
ただ、この聖句を「自分が出家した、あるいは悟ったお陰で、九族が悉く救われるのだ」と考えると、結構傲慢なことになるような気がする。本来は「有情非情同時成道」なのだから、別に自分が無理して出家しなくても、九族は既に悉く成仏しているのである。
「気付いてみれば、(自分も含め)九族はことごとく天に生まれており、迷っている霊などどこにもいなかった」ということが、出家してみて初めて、ありありとわかるというのが、本来の意義なのではあるまいか。
ちなみに、この聖句の読み方は、「「一人 (いちにん) 出家すれば……」が正しい。原典は漢語だから、「ひとり」ではなく「いちにん」と読む。「日々是好日」が「ひびこれこうじつ」ではなく 「にちにちこれこうじつ」がよりオーセンティックとされているのと同様である。
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コメント
tak-shonaiさんこんばんは~
え?出家してもしなくても、関係ない。だれでも人はそのままですばらしいのだから、と言う意味なんですかね?
だったら、一人出家すれば・・・・という言葉は、誰かの希望的な言葉だったんでしょうかね?救われたくて。
私が今、考えてみますに、
世を捨てて帰依しなくても、人間は、そのままで良いのだよ。
という意味なのかしら?禅問答ですね。
投稿: tokiko | 2013年8月15日 16:20
tokiko さん:
本文で触れているように、出家してみて、あるいは、悟ってみて、初めてありありと自覚されるんでしょうね。
迷いというのは、自覚していない状態なのかも。
投稿: tak | 2013年8月15日 18:10