火葬場の骨拾いの作法いろいろ
一昨日の「所変れば冠婚葬祭の風習も変る」という記事でも書いたのだが、福島県郡山市の葬祭というのはとても念の入ったもので、時間もたっぷりかかった。とくに感心してしまったのが、火葬を済ませてからお骨を壺に収める時の作法である。
係員が電気磁石のようなもの(あまりにも雅なデザインなので、最初は何だかわからなかった)で、棺に使われていた釘を除去する。私は何度か親族の骨拾いに立ち会ったが、あんな装置は初めて見た。もしかしたら、実家の酒田だけが遅れているのかしらん。
そして脚の骨から順番に遺族が共同で大きな木の箸で取り上げ、丁寧に壺に収める。その後に親族が順番に拾い、途中で係員がまことに丁寧に小さな破片まですくい取って、崩れないようにそっと壺に収める。
さらに「喉仏」とやらを丁寧にすくって遺族に鑑賞させた後に壺に収める。最後にもう一度遺族が共同で頭の骨を拾い、壺の一番上にそっと収める。こうすることで、壺の中には上から頭、胴体、腰、脚という順に整然と収まる。
それに比べると、酒田の骨拾いなんていうのはざっとしたもので、各自がてんでに小さなチリトリみたいなのに集めて、ざざっと骨壺に入れる。順番なんかお構いなしだから、足だろうが頭だろうが、ごっちゃに収まっていく。
さらに私の父は昭和一桁生まれにしては大柄だったから、骨が壺の口から上にはみ出すほどだったので、係員が上から無慈悲にガシガシ叩いて砕き、無理矢理に押し込めようとする。
私はそれを見ながら、「おいおい、俺の親父なんだから、そんなに叩かないでおくれよ」と思っていたが、係員はお構いなしで、骨が崩れて壺にちゃんと収まるまでガシガシ叩く。さらに、台の上に小さな骨の破片の取り残しがあるのに、委細構わずさっさと片付けてしまう。
郡山の火葬場の係員のものすごく丁重な作法に比べると、その大雑把さ加減が際立つ。私なんか六尺近い体だから、「俺が死んだら、さぞかしガシガシ叩かれるんだろうなあ」と思ってしまったのだったが、郡山のような土地で死んだら、少なくとも叩かれるなんて乱暴な扱いは受けずに済むかもしれない。
でもまあ、どうせ死んでしまって魂の抜け殻なんだから、どんな扱いを受けても別に構わないかと、あっさり思ってしまうのは、私の酒田の血のなせる技である。
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コメント
わたくーしのおとっつぁんときも、火葬場のかたが、くびのとこのホネをとりあげて「これがのど仏でして、ほとけさんのなんちゃーらかんちゃーら」とやっておられましたネ(町屋斎場ちゅーところでしたネ)。
んでも、火葬って、いぱーい燃料を使うんでCO2がいぱーい出るし、なんかからだがアッチッチな感じなので、わたくーしはイヤダナ。
鳥さんに食ってもらうとか、おサカナさんに食ってもらうのがイイナ!
投稿: ルイ・フェルナンド・ゲスヴェイ | 2013年6月24日 23:10
関西ですが、こちらでも喉仏の説明ありました。
これは全国的なものなのでしょう。
しかし俗にいう喉仏は、甲状軟骨という軟骨なので
火葬すれば残りません。
見せられている物は軸椎(首の骨の上から2番目)です。
投稿: ぴろん | 2013年6月25日 10:08
ルイ・フェルナンド・ゲスヴェイ さん:
喉仏なんて言われてもねえ。
ウチの斎場でもどうのこうのといわれて、お寺さん曰く、「喉仏は本山に収める」 とか何とかいうことで、壺には収めず、実家に保存してあります。
ただ、本山に収めるとなったら、結構な額を包むことになるんでしょうから、何だかなあという気がしています。
投稿: tak | 2013年6月25日 12:17
ぴろん さん:
>しかし俗にいう喉仏は、甲状軟骨という軟骨なので
>火葬すれば残りません。
そうでしょうねえ ^^;)
「怪しい話だなあ」と思っていました。
投稿: tak | 2013年6月25日 12:20
ここしばらく骨上げまで付き合うことがないので、
ちょっと記憶が曖昧なんですが、大阪周辺では、
主な部分の骨は近親者が不揃いな箸を使って拾います。
なので、食事のときに箸が不揃いであるのは、
そういう習慣を知らない若い人はともかく、
お年寄りは、山盛り御飯にお箸突き立てるのと同様
嫌がりはります。
あれは日本全国そんなものかと思ってましたが、
そうでもないんですね。
投稿: Jizi_t | 2013年6月25日 12:50
Jizi_t さん:
不揃いな箸というのは、初耳です。
ウチの田舎では、近親者が箸で拾った骨を、もう一人の近親者の箸に渡してから壺に収めるのが正式とされている (「合わせ箸」 とか 「箸渡し」 とか言うようですが) ので、それを普段の暮らしですると、年寄りが異常なほど激怒します。
ただ、最近ではそんな風習もかなり廃れました。
投稿: tak | 2013年6月25日 22:41