日本における 「PC の時代の終わり」は、やや錯綜している
Wired が「減少続く世界の PC 販売、健闘はレノボのみ」と伝えている。世界の PC 出荷台数が前年同期比で 5四半期連続の減少をみせており、これは「PC市場の歴史上、最長の減少」ということらしい。いよいよ「PC の時代」は終わりつつある。
私は過去に 「PC の時代の終わり」について、少なくとも 3回書いている。以下に挙げてみよう。
PC の時代は 2015年で終わり? 2006/11.29
「PC の時代の終わり」 が現実感をもってきた 2010/07/03
「PC の時代」 の終わり 2011/01/06
最初は 7年近く前の記事で、「PC の時代が 2015年で終わる」という雑誌の記事タイトルを取り上げたものだ。7年前には 「2015年で終わる」と言われたものの、それがどういうことなのか、はっきりとはイメージできなかったのだが、2010年の時点ではなんとなくリアルに実感されてきて、その翌年には本当に確信をもつことができたのである。
情報技術の世界では、実際の動きが予言よりも早くなる。そして「ポスト PC」の動きにおいては、それがとくに目立っている。「PC の時代の終わり」は、ついに統計的にも裏付けられつつある。
2013年第2四半期の PC の全世界出荷数は約 7,600万台で、前年同期比は、Gartner Research 社の調べで 10.9%減、IDC 社の調べでは 11.7%減だった。いずれにしても、1割以上減っているのである。その原因ははっきりしていて、需要がタブレットに置き換えられたのだ。
しかし、日本においてはその動きがちょっとスローになっている。総務省の調査によると、日本のタブレット端末の普及率は 12.3%で、日米英韓などの先進 6カ国中最下位。最高のシンガポール(42.8%)に比べると 3分の 1にも達しておらず、SNS やクラウドの活用も遅れている。(参照)
おもしろいのは、PC の普及率に関しては、日本は他の国と遜色がないということだ。日本でスマホやタブレットの普及が遅れているのは、60歳以上の高齢層である。これは昨日も書いたことだが、日本の年配者のイメージでは、PC は 「メールもできるワープロ専用機」 であって、とりとめのないスマホやタブレットよりむしろ取っつきやすいようなのだ。
本来は PC をしっかりと活用できていたわけじゃない高齢者にとって、操作の楽なスマホやタブレットは福音であるはずなのだが、実はこんなことで逆に作用している。「PC ならワープロとして使えるけど、スマホやタブレットは、よくわからない。電話とメールするだけなら、ガラケーの方がわかりやすいし」ということだ。
最大の消費セクターであるはずの団塊の世代が、全然積極的に手を出さないのだから、日本のスマホやタブレットの普及率は、なかなか上がらない。というわけで日本における「PC の時代の終わり」は、やや錯綜している。終わってはいるのだけれど、次がなかなか始まらないのだ。
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