「あんじょう」の語源を知って、ちょっと驚いた
関西の言葉で「あんじょうしぃや~」なんて言われると、なんとなくほっこりとしてしまったりするが、この あんじょう」という言葉の意味を最近まで知らなかった。せいぜい「安穏」と「養生」 足して 2で割ったようなニュアンスで、「安生」とでも書くのかぐらいに思っていたが、そんな名前の人はいても、普通名詞としてはどうやら存在しないようなのである。
で、例しに辞書を引いてみたら、これは漢字では表現できない言葉なのだとわかった。『大辞林』によると、旧かなでは「あんぢよう」と表記し、「味(あぢ)よく」 のウ音便の形である「味よう」の変化形なのだそうだよ。ちょっとびっくりだ。調べてみるものである。
これとはちょっと違うが、庄内弁に「あんべ」という言葉がある。語源は「塩梅/按排」で、「いいあんべ」と言ったら、味加減がいいとか、体の具合がいいとか、そんな意味になる。逆に「あんべわりぃ」と言ったら、体の具合がすぐれないとか、物事の処理が思うに任せないことを言う。
銀座の山形県アンテナショップに、アルケッチャーノの支店「ヤマガタ・サン・ダンデロ」があるが、この店のメニューの前菜には「アンベ・ミレー」と記してある。知らない人はイタリア語か何かだと思うが、これは「塩梅見れ」ということで、「味見してごらん」という意味である。
どうやら、「あんじょうしぃや~」は、「いいあんべ」で行きなさいということのようなのだね。
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コメント
昔は、大工さんなんかが“ちょっとあんべえわりいな”なんて
言いながら、仕事していたもんです。
“具合がわるい”よりまだ余裕がある感じですね。
私の頭の辞書には“あんべえ”は入ってますが、日常使うことはまずないですね。好きな言葉ですけど、若い人に使っても怪訝な顔をされるだけでしょう。
投稿: ハマッコー | 2013年7月11日 17:32
「アンベ・ミレー」いいですね(^^) 母音がしっかり入るせいか、「イタリア語に見える/聞こえるけど実は日本語」みたいな遊びは、けっこう使われているんじゃないでしょうか。
私がたまに行く地元のイタリアンは、「ドンツッキ」という店名です(^^; 駅を出てガード沿いをまっすぐ行って、突き当たり……。
投稿: 山辺響 | 2013年7月11日 18:41
ハマッコー さん:
私の中では、「あんべ」はしっかりと現役の単語です。
「(渋滞に遭わずに)スムーズに着いた」 は、「いぃあんべつだ」
「お腹が痛い/苦しい」は、「はらあんべわり」
「あいつは、頭の具合がおかしいんじゃないか?」は、「やろ、あだまあんべおがしなでねが?」
などなど。
字面だけでみたら、まるでスワヒリ語 (^o^)
投稿: tak | 2013年7月11日 20:53
山辺響 さん:
実は、「アルケッチャーノ」 が庄内弁そのもので、意味は「あったもんだよね」 ぐらいのところでしょうか。
直訳すると「ありけりとやの」 の訛りです。庄内弁は雅なんですよ (^o^)
投稿: tak | 2013年7月11日 20:58