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2013年7月 3日

「片腹痛い」の語源は本当に「傍ら痛し」だったのね

「片腹痛い」 の語源が 「傍ら痛し(かたはらいたし)」であるという説は、知ってはいたが、私としてはずっと片腹痛いほどの俗説だと思っていた。しかし、どうやらこれはちゃんとした通説らしい。へぇ、そうだったんだ。

「ちゃんちゃらおかしくて、聞いてる方が恥ずかしいわい」というぐらいの気分が、「傍ら痛し」→「片腹痛い」に変化してしまったわけね。源氏物語の「桐壺」の巻に、「この頃の御気色 (けしき) を見奉る上人 (うへびと)、女房などは、傍痛しと聞きけり」とあるから、どうやらこれで間違いないようだ。へぇ、へぇ!

「傍ら」の音は「かたわら」だが、歴史的仮名遣いは「かたはら」である。それをつい「片腹」と表記するやつがいて、それがなんとなく、すとんとはまってしまったものだから、一人歩きして、ついには「片腹痛い」で立派に辞書にまで載るようになってしまった。これだからもう、「言葉は生きもの」なんていうことになってしまうのだよね。

似たようなのに、「当たり前」がある。語源は「当然」で、この「然」の字を音が同じの「前」 にして「当前」と表記するやつが江戸時代に続出して、それを「当たり前」と読むようになった。 草書体で書くと「然」より「前」の方がずっと手っ取り早いから、つい当て字してしまうのだよね。これには「当然の分け前」から来たという説もあるが、私は「当前」説を支持している。

それから「気配」という言葉がある。本来は「気延ひ(けはひ)」という和語なのだが、「気配」なんていう当て字をされてしまったので、まるで漢語のようなイメージになってしまった。

「気延ひ」から派生したもう一つの言葉に「化粧」がある。元々は「ケワイ」と音便化した読まれ方をしていて、鎌倉には今でも「化粧坂(けわいざか)」という地名がある。もっとも、「化粧」は似たような意味合いの漢語でもあるので、今では「化粧」を「けわい」と読む人はいなくなって、「けしょう」がスタンダードになった。

これについては、7年ちょっと前の "「気配」 のニュアンス" という記事に詳しく書いてある。

まあ、本当に本当に言葉というのは生きて変化するものである。私は今では「ら抜き言葉」にはものすごく寛容だ。「○○が売ってる」とか 「いらっしゃいませ、こんにちは」は、今でも違和感が強すぎてダメだが。

 

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コメント

手元の大辞泉で「片腹痛し」で当たると、「傍ら痛し」から解説が始まってますね。笑止千万と同義のようで、笑いすぎると腹がちょっと痛いことから「片腹痛し」が定着したのでしょうね。

コンビニの、「いらっしゃいませ、こんにちは」にはすっかり馴らされてしまいました。

投稿: ハマッコー | 2013年7月 4日 16:07

ハマッコー さん:

>手元の大辞泉で「片腹痛し」で当たると、「傍ら痛し」から解説が始まってますね。

そうでしたか。初めからきちんと辞書を引いとけばよかった ^^;)

>コンビニの、「いらっしゃいませ、こんにちは」にはすっかり馴らされてしまいました。

こればっかりは、私はまだダメですね。

投稿: tak | 2013年7月 4日 16:17

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