「ウナギとマグロは食わないことにする」 ということについて
日経ビジネスの「キーパーソンに聞く」というシリーズに、「ウナギのことを何も知らずに食べる罪 東京大学農学生命科学研究科の海部健三・特任助教に聞く」という記事がある。
この記事には、稚魚(シラスウナギ)の不漁に伴い、ウナギの値段が急騰している今、河川や沿岸におけるニホンウナギの生態研究を続け、『わたしのウナギ研究』 の著者でもある海部氏に、「ウナギをおいしく食べ続けるためには何が必要なのか」を聞いたというような前文がある。
私はつい 1ヶ月半前の 6月 14日に「当面、ウナギとマグロは食わないことにする」という記事を書いている。その中で、「ウナギは資源枯渇が最も危惧される魚種であるらしい。だったら、簡単な話で、ウナギが増え始めるまで食わなければいいだけのことだ」と宣言しているのである。
自分が生きているうちにウナギの生息数が上昇に転じることはないだろうから、多分、一生ウナギは食わないことになるだろう。ただし、これには条件があって、「仕事などの出先であてがい扶持の弁当で出てきた場合は、捨てるのももったいないから、仕方なく食う。つまり、自分で選択して食うということは、絶対に止める」と述べている。
そしてありがたいことに、これまでのところウナギの入った弁当をあてがわれるなんてことはなしで済んでいる。最近は値段が上がっているから、ウナギ入り弁当なんて贅沢品になってしまったのかしらん。なんなら、もっと超贅沢品になってもいいのに。
というわけで、絶対に一口も食わないわけではないが、いずれにしても、生きているうちにウナギを食うことは滅多になくなるだろう。つまり私としては、「ウナギをおいしく食べ続けるためには何が必要なのか」なんてことは考慮しないということだ。むしろ「間違ってもウナギを食わされないために、何をすべきか」を考えたいほどである。
で、上述の日経ビジネスの記事がどういうことを提案しているのかといえば、何と、何も提案していないのである。わずかに「ハビタットロス(生息域の減少)を食い止めることが必要」と説いてはいるものの、すぐに続けて「それは難しい」と言っている。
さらに、ウナギを食べ続けるかどうかは「消費者が決めること」と言っている。「ウナギの現状を知って買うのと知らないで買うのとでは意味が違い……」と述べた上で、「極論を言えば、すべて知って納得づくであれば、絶滅してもいいから全部食べてしまえという考えだってある」と言うのである。
ずいぶん乱暴なお話をするものである。人間が己の食欲に任せて、生物を絶滅させても構わないというのである。これって、もしかして記者の聞き方が間違っているかもしれないとまで思ってしまう。
私としては、生物多様性を損ねてまでウナギを食うなんていうのは夢見が悪すぎるから、ハビタットロスを食い止めながら、消費も大幅に減らすべきだと思う。だからこそ「当面、ウナギとマグロは食わないことにする」 と宣言して、今週行った長崎でも、マグロの入った海鮮丼はパスしたのである。
「消費者が決めればいい」というのなら、消費者の一人である私としては、「食わない」と決めるほかない。要するにそれだけのことである。食わなくても、別に命に関わることじゃないし。
大切なのは「ウナギをおいしく食べ続けるためには何が必要なのか」ではなく、「生物多様性を守るためには何が必要なのか」である。この期に及んでまでの人間の欲望を前面に出したレトリックは、恥ずかしすぎるとまで思う。
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コメント
おじさんはうなぎが大好物なので残念ですが、
消費量を減らしたほうがいいんでしょうね…
(´・ω・`)
投稿: ひろゆき | 2013年8月 3日 16:30
ひろゆき さん:
人にまで絶対に食うなとは言いませんが、減らすことはオススメします。
投稿: tak | 2013年8月 3日 19:40
日経さん、うなぎ屋に配慮したつもりの論調なんですかね?
我が家の周りでも、うなぎ屋が数件、商売してますが、そもそものウナギが資源枯渇したらってこと、どう思ってるか、聞いて見たいところではあります…(笑)
投稿: もりけん | 2013年8月 3日 21:37
もりけん さん:
6月の記事でも触れましたが、私はスーパーや牛丼屋の 「蒲焼き」 は控えて、専門のうなぎ屋でくうぐらいの流通に限ればいいと思っています。
スーパーの売り場では 「国産うなぎ」 の比率が妙に高いような気がしますが、私はこの表示を信じていません。
投稿: tak | 2013年8月 4日 17:48