« 英語の "-er" と "-or" の違い | トップページ | 辻井伸行氏の演奏を巡る冒険 »

2013年9月25日

iOS 7 にアップデートしたら、NY からいきなり LA に来たみたい

このほど、iPhone と iPad の OS を iOS 7 にアップデートした。基本的な使い心地に大きな変化はないので、ほとんど戸惑わずに操作できる。これはありがたいことである。Windows 8 みたいに、アップデート したとたんにベテラン・ユーザーがいきなり初心者レベルに叩き落とされてはたまらない。

Ios7pic

ただ、アイコン・デザインが例の 「フラット・デザイン」 とやらに大きく振れていて、デスクトップの見た目の印象がかなり違っている。iOS 6 までの、立体感と陰影を強調したデザインから比べると、ずいぶん薄っぺらくてチャラい感じになってしまっている。

このことに関して私は、今年 6月 11日の記事で次のように書いている。

「フラットデザイン化」 は、スティーブ・ジョブスが生きていた頃は不可能なことだったろう。アップル特有の、グラデーションやシャドウを強調した立体的なデザインは、多分ジョブスのお気に入りだったのだと思う。そしてそれは、私のお気に入りでもある。

  (中略)

それがいっぺんに現代風なフラット・デザインにされてしまったら、なんとなく、Apple が Apple じゃなくて、バナナかマンゴーかなんかになっちゃうような気がしてしまう。

  (中略)

立体的デザインの UI というのは、オールドタイミーなものになってしまうのかなあ。そうだとしても、あまりのっぺりしたものにしないで、最低限の立体性は残してもらいたいものである。今風の無機質なのっぺりデザインと、どれも同じ顔に見える韓流女性タレントって、私の中では同じ範疇に属してしまうのだよね。

で、アップデートしてみたら、「最低限の立体性」の残っているアイコンもあるが(「メール」とか「設定」とかね)、おしなべて味も素っ気もなくなってしまった。「カレンダー」のアイコンなんて、当日の曜日まで表示されるという機能アップは果たされているものの、デザイン的には芸がなさ過ぎだ。(フォントはいいけどね)

これだけとったら、あのデザイン感覚ダサダサのマイクロソフトと、それほど変わらなくなってしまっている。「シンプル」ということは、「芸がない」ということとは違うはずなのだ。スティーブ・ジョブスは、それをしっかりとわかっていて、「シンプルで芸あり」のデザインを提供してくれていた。

このデザイン変化について、IT Pro に "iOS 7 がフラットデザインを採用した理由、「既存のメタファーでは表現できない時代に」" という記事がある。要点だけを述べれば、従来の「スキューモフィズム」では、IT の成熟した現代に合わなくなったからというのである。

スキューモフィズムとは、「カレンダー」のアイコンが「日めくり」を思わせるデザインだったり、削除する時に「ゴミ箱」のアイコンにドラッグしたりするように、UI を現実に似せたメタファーで表現することだが、IT が成熟した今は、現実に似せた「過剰な」デザインは、邪魔になるというのだ。

しかし、アイコンのシャドウやグラデーションごときを「過剰」だなんていうのは、IT オタクの陥りやすい罠でしかないんじゃないかなあ。その程度の微々たる「過剰さ」を切りつめたところで、機能面での効果は知れたものだろう。

私は機能なんか度外視して、見た目の心地よさにつながる「リッチ」なデザインの方が好みである。「リッチ」といっても、派手とかゴージャスとかいうのではなく、ちょっと深みのあるデザインのことで、その方が使っていても気持ちいいじゃないか。

昨日、iPhone ユーザーの知人と話す機会があったが、「iOS 7 にしたとたんに、ニューヨークからロサンジェルスに飛んできたような気がするよね」と言ったら、「そうそう、まさにそんな感じ。東海岸から西海岸に、いきなり飛びすぎ!」と激しく同感してくれた。

このあたりのことは、単なる「機能」では割り切れないことで、基本的な「テイストという範疇のことなのである。iOS 7 で、iPhone というデバイスの「テイスト」は、大きく変わり、「思い入れのある道具」から「単なる便利グッズ」になってしまった。

このチャラいインターフェイスをみて、「ああ、スティーブ・ジョブスは本当に死んでしまったのだなあ」と、しみじみ実感した。

 

|

« 英語の "-er" と "-or" の違い | トップページ | 辻井伸行氏の演奏を巡る冒険 »

パソコン・インターネット」カテゴリの記事

コメント

なんだかのっぺりしましたよね…
(´・ω・`)

投稿: ひろゆき | 2013年9月25日 22:51

ひろゆき さん:

チャラすぎです。
アイコンに妙な機能なんか求めてもしょうがないじゃん! と思ってしまいます。

投稿: tak | 2013年9月26日 21:18

手許のiPad2はまだアップデートしていません。昔だったら、陰影つけたりするとマシンパワーを消費していたのでしょうけど、今なら誤差の範囲でしょうにね……。↑のスクリーンショットを拝見する限り、なんだか先祖返りしたというか、Win3.1みたい(笑)

投稿: 山辺響 | 2013年9月30日 18:32

山辺響 さん:

若い世代はこんなでもいいのかと思っていましたが、ウチの娘も 「デザイン台無し!」 と憤慨してました。「ちっともカワイくない。こういうのはアンドロイドに任せておけばいいのに」 と。

「カワイくない」 というのは、なかなか言い得ていると思います。

投稿: tak | 2013年10月 1日 00:27

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: iOS 7 にアップデートしたら、NY からいきなり LA に来たみたい:

« 英語の "-er" と "-or" の違い | トップページ | 辻井伸行氏の演奏を巡る冒険 »