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2013年9月28日

平成の神隠しを巡る冒険

千葉県茂原市で行方不明になっていた女子高生が、2ヶ月半ぶりに発見されたというニュース(参照)、何だか私の守備範囲のような気がする。この類の話は、フォークロア的にはとくに珍しい話ではなく、日本の各地で語り継がれる伝承の中に、いくらでもある。

柳田国男の名著『遠野物語』の中に、「寒戸の婆」というエピソードがある。松崎村の寒戸というところで、若い娘が梨の木の下に草履を脱ぎ置いたまま行方不明となり、30年余り過ぎて親類縁者が集まっているところに、老いさらばえた姿で戻ってきた。どうして戻ってきたかと聞くと、みんなに会いたかったからだと言う。そしてまた、そのまま去っていった。

その日は風の激しい日だったので、今でも風の騒がしい日には、「サムトの婆が帰ってきそうな日」と言うのだそうだ。ちなみに Wikipedia によると、遠野の松崎村には「寒戸」という地名はなく、「登戸(のぼと)」という地名があるそうで、いろいろな推測がなされているらしい。(参照

遠野物語の中には、この他にも山女の目撃譚がいくつか収録されている。髪を振り乱した異様な姿で、山中を飛ぶように移動しているという。どうも昔から、霊感の強い女性は山の中に入って山女になるようだ。これが里の側から見れば「神隠し」ということになる。

今回の女子高生は、2ヶ月半ぶりに戻ったということなので、寒戸の婆の 30年に比べれば生やさしいところかもしれなが、現代における 2ヶ月半というのは結構な期間であり、「神隠し」というに十分である。彼女の体力の回復を待って、この間のことを根掘り葉掘り聞いたとしても、結局はよくわからない部分が多く残されるだろう。

確実に言えるのは、「神隠し」といっても、里からはそんなに離れていない所で暮らしているということだ。日常世界と異界とは、実は驚くほど近い。いつもの道からちょっと外れるだけで、立派な異界の住人になれる。我々は異界と隣り合わせの世界に住んでいる。というより、日常世界と異界は、かなり重なり合っているぐらいのものなのである。

いずれにしても、このようなタイプの女性は「神懸かり的体質」が強いということになる。昔だったら、再び山の中に帰らなかったら、巫女とか拝み屋などになるところなのだろうが、これを現代でいえば、カルト関係のカリスマというところかもしれない。いずれにしても、今後どんな人生を送るのか、興味深い。

 

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コメント

柳田國男みたい!
(◜▿‾ ≡‾▿◝)

投稿: ひろゆき | 2013年9月28日 19:20

昔から佐藤さとるさん的なお話とかが大好きでした。異界がすぐそこにあるんだと思うと、この年になってもちょっと恐くてわくわくします。

投稿: めぐみ | 2013年9月28日 20:47

ひろゆき さん:

おぉ、正字で来ましたね。参りました。

投稿: tak | 2013年9月29日 22:31

めぐみ さん:

日常の世界と異界は、ちょっとした意識レベルの変化で行ったり来たりできるみたいです。

ただ、それが簡単にできちゃう人となかなかできない人がいるみたいで、これはもう、体質の違いとしか言えないんじゃないかと思います。

投稿: tak | 2013年9月29日 22:33

Tak さんはひょっとしてできる体質の方でしょうか?

私はかなりこういうことには全く鈍感だと思っていたんですが、最近なんかいわくつきの山に登った時ぞくっときました。

投稿: めぐみ | 2013年9月30日 20:29

めぐみ さん:

私、霊感というのが少しはあるみたいです。(6年半前の記事をご参照ください)

https://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2007/05/post_1e4b.html

https://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2007/05/post_531b.html

投稿: tak | 2013年10月 1日 00:33

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