韓国語の濁音
知ってる人にとってはあんまり当たり前すぎて、「何を今さら」と言われそうだが、私にとっては目から鱗みたいなことを最近知ったので、それについて書いておく。「韓国語の濁音」についての話だ。
韓国人、あるいは韓国語に詳しい人が「韓国人が日本語の濁音の発音が苦手なのは、韓国語には濁音がないからだ」と言うことがある。私はそれを聞くたび、「ウソばっか。韓国語は、『ゴスミダ』とか『ハムニダ』とか、濁音がやたら多いじゃん!」と思っていた。
しかし、最近になってようやくわかった。「韓国語には濁音がない」というのは、まんざらウソじゃない。「当たらずといえど遠からず」程度のことのようなのだ。
正確にいえば、「韓国語には濁音がない」のではなく、「濁音と清音の区別がない」ということのようなのである。それで、同じ字(もちろんハングルね)で表記される音でも、単語の最初にくれば清音になるが、途中だと濁音になる。
例えば、「金 大中」は「キム・デジュン」と発音するようだが、名字を省いて「大中」だけだと「テジュン」になるという。さらに「中」だけだと 「チュン」になる。2011年に世界陸上が開催された「大邱」というところは、フツーは「テグ」だが、何かに続いて発音されると「デグ」になってしまうのだろうね。
これらは意識して発音し分けられているのではなく、ほとんど無意識のことで、彼らにとってはあくまでも「同じ音」でしかないらしい。やはり人は、音を耳で聞いているのではなく、脳で聞いているのである。
そんなわけで、韓国の人は「下駄箱」の発音がとても苦手のようだ。大抵「けだばご」みたいな発音になる。同様に「バナナ」は「パナナ(panama)」みたいになる。
日本語だけでなく、英語でも例えば韓国人が "doctor" というと、"togdor" みたいに聞こえたりして、なかなか聞き取りが難しい。
韓国人に聞くと、幼い頃からそうした言語圏で育っているので、清音も濁音も同じに聞こえて、区別がつかないというのである。それは理解できる。日本人が "L" と "R" が同じ音に聞こえて区別が付けにくいみたいなことなのだろう。
このことを知って、私は韓国語が東北弁、とくに日本海側の方言(庄内弁、秋田弁、津軽弁など)と共通したイメージで聞こえることがある理由の一端がわかったような気がした。
例えば日本語でも「所々」 などは 「ところどころ」 と訛るが、東北弁はそれだけでなく、「とごろどごろ」と、徹底的に訛る。「酒、魚」は「さげ、さがな」だ。ただ、「ざげ、ざがな」とはならず、つまり第一音節は訛らないところが、韓国語の法則と共通する。
これを言っている現代の東北人は、共通語教育のせいで「自分は訛っている」と自覚しているが、それがなければわかっていなかっただろう。韓国語の場合も、そんなようなことなのかもしれない。
ただし、東北弁でも「下駄箱」は「げだばご」と、最初の音が元々濁音なら濁音で発音する。この辺りは韓国語とは明確に異なる。
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コメント
以前、山手線に乗っていたとき、若い女性が二人割と大きな声でしゃべっているのが耳に入ったのですが、感想は「若いのにえらい訛っとんな。東北の人やろか?(こっちは関西弁崩れ)」でした。もう一度耳をすましてみると、韓国語でした。
自分だけだと思っていましたが、やっぱり似ているんですね、東北の訛りと。
投稿: かっぱー | 2013年9月20日 12:53
かっぱー さん:
発音のみならず、イントネーションまで似てますよね。
日本の東国と韓国は、言語文化がかなり近いのかも。
投稿: tak | 2013年9月20日 22:22
ハングルの超初心者です。
中国語、英語、日本語プラスモンゴル語も少し話せた所為か、もともと言語についての面白い話は大好きです。
『なんでハングルの発音はこんなにいい加減なの?』と思っているところ、この文章を拝見しました。
とても分かり易く、納得出来る解釈で、大変勉強になりました。
投稿: 太陽島 | 2014年9月23日 11:38
太陽島 さん:
お役に立ててなによりです。
中国語とモンゴル語、韓国語もできるなんて、素晴らしいですね。
投稿: tak | 2014年9月23日 19:58