ほうらやっぱり、そこら中 「虚偽表示」 だらけ
先月 29日付の「阪神阪急ホテルズの件での違和感」で 、"「やべぇ!ウチの車海老だってブラックタイガーじゃん。でも、みんなやってるはずなのに、今さら何で責められるの?」と思いつつも、口を拭って知らんぷりしている業者は、日本中にくさるほどあるはずなのだ" と書いたが、ついに口を拭いきれずにカミングアウトする業者がボロボロ出てきた。
「ゴキブリを 1匹見つけたら 100匹いると思え」というが、こうした問題では、昔からまさにこんなような様相となる。今回の場合、すぱっと割り切れば、それはもちろん「虚偽表示」という結論にはなるのだろうが、現場の意識としてはほとんど「誤表示」と「だってそんなこと、深く考えなかったんだもん」の間の、いわく言い難いところなんだろうと思う。
そもそもホテルや飲食店の業界では、こうした表示にものすごく無頓着で、ブラックタイガーを車海老として扱うなどの「代用魚」という慣行以外でも、例えば「地場産」とか「手作り」なんていう表示でも、単なる「雰囲気のモノ」ぐらいに思ってきたフシがある。「こう言っとけば、何となくいい感じだよね」ってな軽い気持ちで、テキトーな表示をしちゃう。
そもそもコンプライアンスなんてことはあまり意識したこともない。たまたま一度「手作りパン」なんていう手書きの POP を作って飾ると、それがいつの間にか印刷されて、手作りでなくてもずっと使い続けられてしまったりする。雰囲気だけはいいけどビミョーな名称のメニューを作り、それを「ロマン溢れるオリジナリティ」なんて思い違いをする。
そんなようなことが、現場ではなんとなく見過ごされ、客の方も、その「雰囲気」に安易に乗っかって、「やっぱり、ホテルの『手作りパン』はおいしいよねえ」なんて、いい気持ちになる。普段「手作りパン」なんて食ったことがないから、違いなんて実はさっぱりわからない。(* 注)
雰囲気でころりとだまされていい気持ちになっていたのに、後になってスペック的に明らかに「表示と違う」ことがわかると、急にいきり立つ。これって、「なんだかなあ」と思ってしまうのである。
いや、あるいは、客の方も決して「いい気持ち」になんてなっておらず、高い金を払っているのだからと、なんだかわからないが「おいしい」ということにして、無理矢理納得していただけなのかもしれない。さらにもう少し突っ込むと、あまり「無理矢理」でもなかったりするから、話はますますややこしくなる。
昨年 6月の「高いワインは、本当においしいのか?」という記事でも書いたように、ワインなんかその道の専門家でも、「これは高いワインですよ」と言われ、信じて飲めばおいしく感じてしまったりするという実験結果が出ている。だから高い金さえ払えば、それだけでおいしいと自然に納得してしまうこともあるようなのだ。
無理矢理納得したという自覚があるなら、「信じた私がバカだった」で済むかも知れないが、自然に納得してしまったんだとすると、「騙された」といきり立つのも、少しはわかるような気もする。
私なんかへそ曲がりだから、高い料理ほど「この値段でこの程度か?」と思うことの方が多いぐらいで、逆にリーズナブルな値段で本当においしい料理を発見することの方に、食の喜びを感じる。リーズナブルな値段の理由が、車海老でなくてブラックタイガーだったとしても、「まあ、おいしきゃいいか」なんて思っちゃったりするから、困ったものだが。
「日本人は舌が肥えている」なんていうのは、実は都市伝説レベルのお話だと、私は思っている。だって仕事上で会食なんかすると、大したことのない料理を「おいしいねぇ!」なんていう、自称グルメのオッサンがやたら多いのだもの。
それで、昔の歌の文句に「どうせ私をだますなら だまし続けてほしかった」というのがあったのを、急に思い出してしまった。
【注】
「手作りパン」 についていえば、私は 30年近く天然酵母のパンを自分でこねて手作りしているベテランなので、大見得を切って言わせてもらう。(参照 1、2)
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コメント
「伊勢えびのテルミドール」にロブスターが使用されていたので謝罪とか、すごいことになってますね。
http://www.asahi.com/articles/NGY201311010001.html?ref=com_top6
ロブスターの方が旨そうな気がするんですけど、個人的には。ハサミもあるし。っていうか、そもそも伊勢えびの方が代用品だったんじゃないでしょうかね、この料理の場合。わはは。
どうでもいいとは思わないのですが、あんまり騒がなくてもフツーに是正すれば良いんじゃないでしょうかね。
メニューを飾り立てようとするあまり、あんまり細かく食材の名前を前面に出すからややこしいことになるケースも多いようですね。エビチリではセクシーさが足りないので芝エビにしちゃったりとか。
その点、外国の中華料理屋に行くと、特に英語のメニューの場合、あまりにも大雑把な名前でどんな料理だか全くわからないものが多く、これも困ったものです。漢字を見るとなんとなくわかることもあるので、日本人はちょっと得ですが。
投稿: きっしー | 2013年11月 1日 12:03
きっしー さん:
ここまで来ると、早めに公表して謝っておいた方がいいという判断も働いているのでしょうね。知らんぷりしていて、バレた時の方が恐いということで。
>そもそも伊勢えびの方が代用品だったんじゃないでしょうかね、この料理の場合。
確かに、そうとも言える (^o^)
>どうでもいいとは思わないのですが、あんまり騒がなくてもフツーに是正すれば良いんじゃないでしょうかね。
私もそう思います。ただ、騒ぐとしても、大から小に至るまで、日本国中で騒がなきゃいけないので、そのうち疲れます。
>メニューを飾り立てようとするあまり、あんまり細かく食材の名前を前面に出すからややこしいことになるケースも多いようですね。
何というか、食材ではなく、メニューの方を 「盛りすぎ」 ですね。今後は、「伊勢エビの何とか」 「車海老のかんとか」 とかじゃなく、シンプルに 「海老のほにゃらら」 というメニューが増えるかもしれませんね。
いや、それだと色気がないから、「ロブスターのほにゃらら」 ということになって、英語のメニューの素っ気なさに近づくことになるかも。
>その点、外国の中華料理屋に行くと、特に英語のメニューの場合、あまりにも大雑把な名前でどんな料理だか全くわからないものが多く、これも困ったものです。
中華料理の 「○○炒め」 とかは、翻訳に困るってこともあるんじゃないでしょうかね。"Fried ***" だと、臨場感に欠けるというか。
私の友人のユダヤ人は、”Sizzled ***" がいいと言ってました。確かに "Fried ***" よりは気分が出そうです。
>漢字を見るとなんとなくわかることもあるので、日本人はちょっと得ですが。
「猪」 を 「豚」 に置き換えさえすれば、かなりわかりますね。
投稿: tak | 2013年11月 1日 19:07