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2013年11月13日

「山崎」 の読み方と、天ぷらの醤油/ソース問題

9月 22日の「韓国語と東北弁のイメージが似ていることを巡る冒険」という記事で、「東北では地名でも第二音節以後が濁音、半濁音となることが多い」 と書いた。例えば山形県の地名では、「山形(やまがた)」「米沢(よねざわ)」「小国 (おぐに)」「寒河江 (さがえ)」「尾花沢(おばなざわ)」「新庄(しんじょう)」「遊佐(ゆざ)」など、みな訛る。

一方、九州では「宗像(むなかた)」「福津(ふくつ)」「日田(ひた)」「宇佐(うさ)」など、東日本生まれなら「むながた」「ふくづ」「ひだ」「うざ」などと訛りたくてたまらない地名でも、そうはならないのである。どうも東北と九州では、「発声音」に関するコンセプトが違うようなのだ。

今日になって、「そういえば、名前でもそうだよな」と気付いた。『釣りバカ日記』 で主人公の浜崎伝助(ハマちゃん)が東日本流に「はまざき」と呼ばれると、急に不機嫌な顔になって「チッチッ、『はまさき』っす」とダメだしするのは、お約束の場面である。そういえばハマちゃんの出身地は、宮崎県都城市だった。

古い記事で恐縮だが、日経新聞に「山崎ってどう読む ザ?サ? 名字の不思議」という記事があり、この中に「専門家によると、東日本では濁音が多く、西日本では清音が多くなるという不思議な法則があるそうだ」という件がある。

この記事によると、例えばお笑い芸人の山崎邦成(兵庫県出身)は「やまさき」だが、アンタッチャブルの山崎弘也(埼玉県出身)は 「やまざき」と濁る。冒頭で触れた「浜崎」も、さらに「中島」や 「中田」も同様らしい。そして第二音節以後が濁りやすいのは、どうやら東北だけではなく、東日本全域で共通しているらしい。

この区別は、大体フォッサマグナを境目としていて、面白いことに、天ぷらにかけるのは醤油かソースかということの境界線とかなり共通している(参照)。どうやら、天ぷらにソースをかける土地では、「山崎」は「やまさき」とさらっと発音するようなのだ。音感と味覚って、逆バリ的に出るのかしらん。

そういえば、「ジャパネットたかた」の高田明社長も、長崎県出身で「たかた」だ。なかなか面白い問題である。

 

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コメント

今日の一撃も実にお見事ですね。いいところに気づかれました。話のネタになりそーです。
ところで、私は生まれも育ちも京都で生粋の関西人です。息子の嫁さんの実家は岩手県の北上ですが、北上へ行ったとき「きたがみ」と言うたら「違う、きたかみです」と言われました。ものごとには何でも例外があるってことですネ(笑)

投稿: どんヤン | 2013年11月14日 03:50

谷(たに西・や東)というのも有るそうです。
鴬谷はどうなんだというのはありますが。

投稿: automo | 2013年11月14日 07:44

どんヤン さん:

「きたがみ」は、鼻濁音で言うと、明かなまちがいですが、モロに濁音になると、近隣の人たちの「訛り」 と思って見逃してくれるかも知れません (^o^)

投稿: tak | 2013年11月14日 16:43

automo さん:

なるほど、脇谷さんは、「わきたに」なのか「わきや」なのか迷いますね。

それから、「町」 を 「まち」 と読むか 「ちょう」 と読むかも東西で差があるようです;

投稿: tak | 2013年11月14日 16:48

他の方から出遅れましたが、
サントリーのウィスキー工場がある京都府の山崎は、
京都ですが、「やまざき」といいますね。
駅名も「やまざき」、町名も「おおやまざき」です。

また、滋賀県の米原は、市になる前は旧「まいはら」町
でしたが、市になる際に駅名が「まいばら」だったのに
合わせて、「まいばら市」になりましたね。

さらに、東北本線の上野の次の駅である尾久は、
駅名は「おく」ですが、町名は東「おぐ」、西「おぐ」ですね。
旧国鉄時代からの古い駅ですと、中央の役人が駅名を
付けて、関西の駅でも関東風になる?などと考えてみましたが、
それだと「おく」がちょっと外れそうですし。
う~ん、分かりません。

投稿: hokkaidense | 2013年11月14日 22:23

hokkaidense さん:

「山崎」 の読み方に関しては、詳細に見ると神戸以西あたりから 「やまさき」 が主流になるようですね。京都は 「やまざき」 圏内です。

「米原」 は 「まいはら」 だったんですね。
明治以後、東日本出身の役人と 「原」 を 「ばる」 と発音する九州人の間に挟まれて、駅名が 「まいばら」 になって、それに引きずられて市の名称まで 「まいばら」 になってしまったんでしょうかね。

「尾久」に関しては、元々 「おぐ」 だったのが、駅名を付ける時に 「おぐ」 が訛りだと思われて 「おく」 になったという説が有力のようです。

ウチの田舎の 「酒田」 が、地元の人はみんなフツーは 「さがだ」 と発音するのに、気取って言うと 「さかた」 になるのと少し共通したメンタリティだと思います。

投稿: tak | 2013年11月16日 18:32

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