選挙で買収なんて、まだやってたのね
徳州会の組織がらみの選挙違反が、明るみに出ている。昨年 12月の衆院選で、約 5000万円の裏金が票の取りまとめ役に渡って、投票買収や飲み食いに使われた部分もあるとみられる。おやおや、そういうのはこの国では前世紀のお話かと思っていたのだがね。
私は東京杉並区から茨城県つくばの地に移転して 30年を越したが、引っ越してきて最初の県会議員選挙告示前の日曜日、ある立候補予定者の家庭訪問を受けた。ドアのピンポンが鳴ったので出てみると、オッサンが 3人立っている。
そのうちの 1人は知った顔である。この家を造った地元の建設会社の重役だ。何でも社長の親戚か何からしく、やたらともっさりとしたオッサンだが、村会議員に名を連ねている(当時、ここはまだ「村」だったのだよ)。
この家を購入する時に挨拶して、ちょっと話をしたことがあったが、何だか茨城弁でボソボソ呟くばかりで、何を言ってるのかよくわからない。田舎の建設会社の重役とか村会議員って、こんなもっさりしたオッサンでも勤まるのかと、驚いたほどだ。
何の用かと思っていると、そのもっさりした重役兼村会議員が切り出した。
「この○○さんが、今度の選挙に出ることになりましたので、ヒトツ、よろしく」
「はぁ?」
「とても立派な方ですので、どうか、ヒトツ……」
「ヒトツ、よろしく」なんて、ぼかした言い方をしてはいるが、これって要するに、告示前のいわゆるヒトツの投票依頼だから、選挙違反である。何が「立派な方ですので」だよ、まったく。それとも、いつもの何を言ってるのかわからないスタイルが功を奏して、直接的に「投票してくれ」とは言ってないから、ギリギリセーフなのかな?
ちょっとむっと来て返事もせずにいると、もう一人のオッサンが内ポケットから何やら封筒を取り出して、無言で手渡そうとする。折りたたんだパンフレットなどでは、こんなに薄っぺらにはならない。どう見ても中身は現金だ。これで決定的に怒りに火がつき、ただ一言、「お帰りください」と言って、バタンとドアを閉めた。
その立候補予定者は全然知らないオッサンで、せっかく「白紙状態」だったのに、こんな余計なことをするから、「汚い選挙をする人」というか、「この俺を買収に応じるような男と見損なった、とんでもない野郎」という、決定的なマイナス情報がしっかりインプットされた。そんなヤツには、プライドにかけても絶対に投票しない。
家の中から妻が、「何だったの?」と聞くので、「選挙違反だよ!」と、わざと外に聞こえる大声で言った。以後、選挙があっても我が家には候補者が誰も戸別訪問してこなくなった。「あの家は、頭が固いから行ってもムダ」ということになったのだろう。
その年の町内会の集まりで聞いたところ、この辺りは選挙のたびに5,000円札の入った封筒が配られるのだそうだ。古くからいる人の中には、「そういうのが何人か来るから、全部もらっとけばいいんだよ」なんて言うのまでいて、私は呆れた。そういう土地に引っ越して来てしまったのか!
近頃ではこの辺りも、都市部から移転してきた「新住民」の比率が圧倒的になり、さすがに「実弾配り」という手法が話題にのぼることはなくなった。そんなのはもう過去の遺物になったのかと思っていたが、もしかしたら、裏に回ればまだ残っているのかもしれない。
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