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2013年12月12日

刑法犯罪は確かに減少しているが

世の中どんどん物騒になるとか、凶悪犯罪が増加しているとか言う人がいるが、統計的にみれば、刑法犯罪は近年ずっと減少傾向にある。今年も前年比で減少となるのは確実で、これで 11年連続で減少ということになるのだという(参照)。ありがたいことである。

ただ、こんなに長期間にわたって連続して刑法犯罪が減少しているというのに、世の中がちっとも良くなったように見えないのは、振り込め詐欺などの新たな犯罪と、いじめに関連する痛ましい問題が増加していて、それが結構目立ってしまうからだ。

振り込め詐欺は昨年に比べて 1.5倍に増加していて、最近は息子を装って助けを求める手口が陳腐化してしまったためか、 「還付金が振り込まれます」 と言ってだます「還付金詐欺」 というのが増えているのだという。

「振り込まれます」と言って、どうして逆に大金を振り込ませたりなんかできるのか、チンプンカンプンだったが、調べてみると、ATM の取り扱いに疎い年寄りに、受け取りのための操作をケータイでリアルタイムで教えてやると称して、実は振り込み操作をさせてしまうのだそうだ。これでは、だまされる方もずいぶんボンヤリ過ぎる話である。

こんな犯罪が多発するのも、世の中に年寄りが増えたからである。小金持ちで、近所の銀行までぐらいは難なく自分で歩けて、まだ多少の欲があって、自分のケータイを持っていて、そのくせ ATM の扱いには極めて不慣れという、条件設定としてはかなり厳しいフィルターを楽々通ってしまう年寄りが、今はうじゃうじゃいるのだ。

刑法犯は全体として減っているのに、高齢者の万引き件数が増えているのだという。これにしても、高齢者の手癖が急に悪くなってしまったというわけじゃなく、人口ピラミッドで高齢者人口が増えてしまったから、そうした数字となって現われるだけである。前世紀末には 「中年」 だった「団塊の世代」が、今は「高齢者」になったのだから、しょうがない。

「いじめ」に関しては、それが原因となっての自殺が立て続けにニュースで取り上げられたせいで、近年になって急に増えたように錯覚するが、元々多かったことが、最近になってようやく、きちんとニュースで取り上げられるようになったのだ。

ちょっと前までは「いじめ」の問題があっても、学校側が責任を取りたくないのでまともに対応してこなかっただけだ。学校側が対応せず、警察も動かないから、数字として現われなかったのである。最近はまともに取り上げられるようになっただけ、マシといえるかもしれない。

というわけで、刑法犯罪はただでさえ少なかったのに、総数としては近年ますます減少して、なかなかいいことのように見える。しかしこんな感じで世の中がどんどん「漂白」されるうちに、申し訳ないみたいな言い方だが、「おもしろみ」というものもどんどん失われているように思える。

7年後の東京オリンピックに向かい、ますますそんな傾向が強まるだろう。漂白され、機能化されすぎた社会に適応できない人間は、どうやって生きていったらいいのか、そこまでのケアを考えないと、アンダーグランドでの極端に嫌な現象となって出てきそうで、ちょっと心配だ。

 

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