『赤鼻のトナカイ』の名前は「ルドルフ」って知ってた?
今年の初め、"「トナカイ」と「オットセイ」 " という記事で触れたが、『赤鼻のトナカイ』の歌に出てくる主人公のトナカイの名前は、「ルドルフ」なのである。ところが、この歌がこんなにもスタンダードになってよく知られている日本で、「ルドルフ」の名を知る人はとても少ない。
「赤鼻のトナカイの名前、知ってる?」と聞いても、ほとんどの人は「そんなの知らない」と答えるばかりでなく、興味すらまったくなさそうで、「そんなこと知ってどうするの? 馬鹿馬鹿しい!」という顔をする。どうでもいい「超々トリビア」と思われているようなのだ。
ところが実は、トリビアでもなんでもない。馬鹿馬鹿しくもない。何しろこの歌の英語のタイトル、つまりオリジナルのタイトルは、そのものズバリ、"Rudolph the Red-Nosed Reindeer" (赤鼻のトナカイ、ルドルフ) なのである。歌詞にも 「ルドルフ、ルドルフ……」と繰り返される部分がある。米国人なら、知らぬ人とてないことなのだ。
しかも、このルドルフにはとても感動的なストーリーが隠されている。どんなお話か知りたい人は、「赤鼻のトナカイ・ルドルフの感動秘話」というページで読んで頂きたい。
私は英語版の 『赤鼻のトナカイ』 を知るずっと前から、つまり子供の頃から、このトナカイの名前がルドルフであることを、ごくごく自然の成り行きで知っていた。なぜかというと、NHK の『みんなのうた』で歌われていたからである。前にも書いたことだが、私は『みんなのうた』の大ファンだった。
『みんなのうた』 で歌われた 『赤鼻のトナカイ』 の訳詞は、現在主流になっている新田宣夫版ではなく、加藤省吾版だった。新田版の詞ではあろうことか、 「ルドルフ」 という名前はまったくシカトされてただの一度も出てこないが、加藤版では歌い出しの部分でちゃんと出てくるのである。確かこんな感じだった。
昔のことだよ
赤くて良く光る
鼻のトナカイ
その名はルドルフ
これで「ルドルフ」の名はしっかりと私の脳裏に刻み込まれたのである。オリジナルのタイトルでもあるのだもの、道義として訳詞としても触れないわけに行かないだろうよ。そんなわけで、私は「ルドルフ」という名が一度も出てこない新田版の訳詞は、全然評価していない。
この件に関して、Wikipedia の「ビデオギャラリー」という項目(NHK の過去のテレビ番組を、脚本家の市川森一と女優の石井めぐみの進行で回想した番組についての項目)に、次のような記述がある。(参照)
『みんなのうた』で放送された 「赤鼻のトナカイ」だが、実はこのトナカイには "ルドルフ" という名前が付いている。ペギー葉山が歌った『みんなのうた』バージョンは今日広く知られているものとは全く違った日本語の歌詞(原曲に忠実な訳詞)であったが、石井はこのバージョンをよく覚えていて、放送当時学校の友達にそのことを話してもなかなか信じてもらえなかったという思い出を語った。
おお、石井めぐみさんという人は、恐縮ながら実はよく知らないのだが、私と同じもどかしさを味わっておられるのだな。それに、ちょっとググってみたら、なんと大学の後輩ではないか。
NHK のサイトで見ると、この歌が「みんなのうた」で歌われたのは、「1961年12月-1962年01月」ということになっている(参照)。東京オリンピックの 2年半も前、私が小学校 4年生の頃だ。ということは、我が家に白黒テレビというものが登場して間もないころである。
ということは、石井めぐみさんは私より 6歳も年下なのに、つまり、この歌の放送当時は小学校にも入っていなかったはずなのに、よくぞ「ルドルフ」を覚えていたものだ。何だかうれしくなってしまった。
NHK のサイトを見ると、「この曲の映像・音声を探しています。ご存じの方はこちらからお知らせ下さい」とある(参照)。なんと、あの NHK が、名番組である「みんなのうた」の初期の映像を保存していないのだ。「ひょっこりひょうたん島」もビデオ保存されていないという。いくらビデオテープが高かった頃とはいえ、まことにいたわしいことである。
ああ、『みんなのうた』 版の映像・音声が見つかるといいなあ! 見つからなかったら、ペギー葉山さんに改めてレコーディングしてもらいたいぐらいのものだ。
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コメント
私の年代では
ルドルフは、常識でしたが
投稿: alex99 | 2013年12月 4日 13:37
中学の英語の授業で覚えました。
当時はまだ日本語の(新田宣夫版の)歌詞しか知らず、初めて原曲を聴き、オリジナルの歌詞を読んだときは「へぇ、Rudolphって名前があるんだ」と感心したものです。
今考えると、新田版の訳詞は小さな子供向けに脚色した、という感じが強いですね。Rudolphを単に「トナカイさん」と称しているところからしても。
投稿: 綾川ほとり | 2013年12月 4日 19:31
alex さん:
「みんなの歌」効果でしょうかね?
投稿: tak | 2013年12月 4日 20:06
綾川ほとり さん:
それにしても、「ルドルフ」というれっきとした名前を無視するというのは、私にはマナー違反みたいにさえ思えるんですよね ^^;)
投稿: tak | 2013年12月 4日 20:08
昔のことだった 赤くてよく光る
お鼻のトナカイ その名はルドルフ
仲間のトナカイ みんなが寄って
「あいつは赤鼻だ」 ワハハと笑う
今夜はクリスマスイブ 楽しく
トナカイたちは 橇(そり)を引いて走る
ルドルフは赤鼻を 光らせながら
一人寂しく 仲間を見てる
こんな歌詞だったようですね。
今年もクリスマスイブが迫ってきました。
投稿: るんるん | 2017年12月14日 12:13
るんるん さん:
実は遺憾ながら、私も加藤省吾訳の全貌はよく覚えていないんですよ。どこかに載ってないかなあ。
投稿: tak | 2017年12月14日 19:04
この加藤省吾訳詞版は、1954年に中村メイコがレコードで発売しているようです。
投稿: 割也 | 2023年2月17日 10:19
割也 さん:
情報、ありがとうございます。
ただ、1954年版ということでは、入手するのは大変でしょうね。
投稿: tak | 2023年2月17日 19:04
ちょっと話がずれますが、こちら https://chikawatanabe.com/2007/12/16/post-10-3/ に 日本語と英語の情報量の差といった視点で ルドルフの話があります。 なんとなく私は日本語の方が単位時間の情報量は多いような気がしていたのですが、まぁ現地在住の人がいうことなのでそうなんでしょうね。
ビデオに関しては WIKIPEDIA https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%87%E3%82%AA%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%80 にあるように 1956年のAMPEXは50000ドル 2インチ幅オープンテープということなので もしNHKが当時所持していたとしても今では再生できないでしょう。(私が見たことがあるビデオテープは Uマチック(1971年)以降で、一世を風靡したVHSは1976年だそうです) なので ひょうたん島が残っている可能性は 家庭で撮影された 8mmフィルム位ではないでしょうか。
そういえば 大相撲中継では「分解写真」が使われていましたね。
投稿: Sam.Y | 2023年2月19日 23:02
Sam.Y さん:
日本語と英語の単位時間当たりの情報量の差は、昔から気付いていました。英語の歌を日本語に訳すと、どうしても切り捨てなければならない要素が多すぎるのです。
先に日本語訳の歌詞を知っていて、その後に英語のオリジナル・バージョンを知ると、「こんなにも沢山のことが歌われていたのか!」と愕然とすることが多いです。
例えば、有名な「ドナ・ドナ」の歌い出し。
On a wagon bound for market
There's a calf with a mournful eye
High above him there's swallow
Soaring gaily through the sky
直訳すると
市場に向かう荷車の上に
悲しそうな目をした子牛がいる
そのはるか上にはツバメがいて
空を陽気に舞い上がっている
しかし、よく知られた訳詞は
ある晴れた昼下がり
市場へ向かう道
荷馬車がゴトゴト
子牛を乗せていた
ということになり、原詩にない「ある晴れた昼下がり」でちょっと雰囲気を見せてはいるものの、ツバメのことまでは到底言及できていません。
情報量としては圧倒的な差です。
その代わり、日本語にするとちょっと象徴的な言い方で雰囲気を出すことができます。英語はかなり具体的なんですけどね。これは両言語の本質的な特徴なんだと思います。
ビデオに関しては、その昔は、録画の機材、媒体が高価すぎて、使い回しするほかなく、NHK としても昔の番組の録画は持っていないと聴いています。
「分解写真」、懐かしいですね (^o^)
投稿: tak | 2023年2月20日 01:03