私の苦手なカタカナ言葉
私はカタカナ言葉が得意と思われているフシがあるが、それは半分正しくて、半分誤解である。私がカタカナ言葉に抵抗がないように見えるのは、英語由来の言葉なら結構元の意味を知ってるので、カタカナ言葉として初めて聞いた時でも、戸惑わずにすむというだけのことだ。カタカナの背後に英語のスペルを見て理解するという感じなのだよね。
だから、英語以外のカタカナ言葉、とくにスイーツ系やフランス料理系の言葉は、はっきり言ってさっぱりわからない。「フォンデュ」とか「テリーヌ」とか 「カルパッチョ」(これはイタリア語?)とか言われても、恥ずかしながらイメージすら浮かばない。ロースト・ビーフとかサニーサイド・アップとか、英語の料理名なら全然問題ないのだけどね。
スイーツ系、フランス料理系に関しては、「プログラムをインストールするには、ブラウザーでダウンロード・ページにアクセスして、アカウントとパスワードをインプットしてください」なんて言われて、目を白黒させてしまうオッサンと、まるで変わりがない。
それから、カタカナの背後に英語スペルを見るクセが付いてしまったため、英語が日本語のカタカナ言葉になってしまった時の、微妙な意味の変化に違和感を覚えてしまうこともある。
前にも書いたことだが(参照)、「あの人は、とてもナイーブだから……」などと言うのを聞くと、「これって、誉めてるのか? けなしてるのか?」と余計なことを考えて、脳内メモリーが無駄に消費されてしまう。"Naive" は元々は、「子供っぽい」という意味で使われることが多いからだ。
これが日本のカタカナ言葉になると、「汚れを知らない素敵な人」という意味になってしまうのは、一昨日の記事の、"quality" という言葉の意味が、米、日、韓、中でそれぞれ違ってしまうのと似た構図である。ちなみに私には、「あの人は、ナイーブで素敵な人」よりも、「あんなナイーブな奴とは、付き合いきれない」という言い方の方がしっくりくる。
「パフォーマンス」 という言葉も、元々の意味と日本語のカタカナ言葉になった時の意味では、ちょっとズレが生じている。
私はこの言葉がカタカナ言葉として日本に定着する前から、ロック・ミュージック関係の本で、「彼は great performance(素晴らしい演奏)をした」 とかいう言い方に馴染んでいた。「いい演奏だった」という時なんか(これは、野球なんかでも同じだと思うが)、"nice play" なんていう褒め方をするのは聞いたことがない。
そんなわけで日本語の「パフォーマンス」が、「ことさらでわざとらしいウケ狙いの行為」といった意味に偏ってしまったことには、違和感ありありなのだ。「あいつのやることはパフォーマンスばかりだ」とか「俺はパフォーマンスは嫌いだ!」なんて、妙に堂々と言い切られると、どうもムズムズしてしまう。
まあ、ムズムズ感が生じる隙間もないほど、ほとんど日本語化してしまったような、英語由来のカタカナ言葉もあるにはあるけどね。「カンニング」とか「トランプ」とか「ノート」とか「ハンドル」とか。ただ、「クレーマー」とか「スマート」とか「ツー・ショット」とかは、私としてはまだちょっとビミョーだけど。
余談だが、「スマートフォン」が出始めた頃は、「薄型ケータイ」だと誤解する人が少なからずいたようだ。
あ、それから、焼肉関係のカタカナ言葉も、私は聞いてもほとんどわからない。ちょっと前に「ユッケ」が物議を醸すまでは、私はそれってどんなものだか、全然知らなかった。まさか焼き肉屋で生肉を食わせるとも、思ってなかったしね。
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コメント
私は「リーズナブル」がいやです。
「リーズナブルな価格」といえば、ボラれていない、物なりサービスなりの実質に見合った価格のはずなのに、ほとんど「激安」と同義語になっているのが、なんとも…例えば、倒産処分品の「投げ売り激安価格」は、しばしば本来その商品に対して「リーズナブル」な価格ではない。
などと言いつつ、フェアトレードが「リーズナブル」な価格で取引しようということだと知りながら、その値段ちょっと高くない?と思ってしまう自分が情けないfーー;
投稿: Jizi_t | 2014年1月27日 13:55
Jizi_t さん:
「激安価格」 に 「リーズナブル」 という言葉が使われる風潮は、知りませんでした。そっちの方の意味で定着してしまったら、本当のリーズナブル価格が気の毒ですね。
私は 「その価格なら許せるよね」 という感じの意味合いで、使ってきましたけどね。
最近は 「すすり泣き」 程度でも 「号泣」 と言っちゃう 「言葉のインフレ」(下記リンク参照) が目立ちますが、これは 「言葉のデフレ」 でしょうかね。
"「号泣」 という言葉がインフレを起こしてる"
https://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2010/03/post-48c0.html
フェアトレードに関しては、流通の整備がしにくいんでしょうね。「アンフェアトレード」 が幅を利かせてるんで。
それから、フェアトレードは、生産者・流通業者にとって、一定のリスクがあるらしいです。
アンフェアな方からの暴力的な手段を含めた妨害とか。
投稿: tak | 2014年1月27日 16:21