だまされて感動したような気分にさせられた人が気の毒
世の中は、佐村河内守という人がゴーストライター(ゴーストコンポーザー?)を使って曲を書いていたというニュースでもちきりだ。ゴーストライターというのは書籍の世界ではいくらでもあることのようで、法律的に取り締まる対象にはならないんじゃないかと思っていたが、調べるとどうやらそうじゃないらしい。
Wikipedia にあたってみたところ、「著作者名詐称罪」(著作権法第121条)というのがあって、「著作者や原作者を詐称することは罪となり、1年以下の懲役刑若しくは100万円以下の罰金刑」というのだ。しかも親告罪ではないから、警察がその気になれば、いきなり逮捕しちゃうことだってできるのである。
世の中にいくらでもある(とされる)ゴーストライターによる著作は、本当はヤバいもののようなのだ。この法律は著名人の著作と思って購入したのに、本当はそうじゃなかったというような場合の、社会的法益の保護が目的なんだそうで、要するに「偽ブランド」を作ったら罪になるというような意味合いなのね。
今回のケースに限って言えば、本家本元が OEM で「偽ブランド」を下請け生産させていたというような、摩訶不思議なことになるのかしらん。しかも、「本家本元」とされる人物は、そもそも「本物」を作ったことなんてなかったというのだから、始末が悪い。
不幸なことに(?)その「本物を作ったことのない本家本元」公認の偽ブランド作品が、クラシックの世界では破格というほどの売り上げを記録してしまい、しかもその売り上げを作ったのが、「作曲者は耳が不自由で『現代のベートーベン』と呼ばれる人」というサイドストーリーだったというのだから、かなりあざとい商法である。
しかも「本当は聞こえていた」という疑惑もあるようで、そうだとしたら「あざとい」の二乗ぐらいのお話だ。これまでころりとだまされて、彼の曲で感動したような気分にさせられていた人は、自分の感性を信じられなくなってしまっているだろう。こりゃ、法的な意味以上に「罪つくり」である。
つまり、今回のケースの本質的な「罪つくり」部分は、ゴーストライター云々というよりは、目立ちたがりの男が「チョーあざとい売り方」をしてしまったということに尽きるのだろう。
で、「彼の」曲が実際どの程度のものなのかと思って YouTube で検索してみると、出てくるわ、出てくるわ、佐村河内守という人は、これまで私が知らなかっただけで、その世界では結構な有名人だったようなのである。
とりあえず『交響曲第一番 "HIROSHIMA"』というのを聞いてみたが、少なくとも「とくに感動的」とは思わなかった。今回の事情を知らないで聞いたとしても、その印象は変わらなかったと思う。どこかで聞いたことのある曲想の寄せ集めだが、印象的な要素というのはあまりない。
実際の作曲をしたという新垣隆さんという人は、そこそこの力量ではあるのだろうが、「いい作曲者」というよりは「器用な作曲者」なのだろう。楽譜を書くこともできないことがバレてしまった佐村河内氏のつたない曲想に、それなりのカタチを与え、錯覚とはいえ、まがりなりにも人を感動させもしたのだから、「かなり器用な作曲家」と言ってもいいかもしれない。
それにしても、世の中にはあざといやり口で世間の注目を集めたいというビョーキの人が、けっこういるものなのである。ちょっと思い出すだけでも、旧石器捏造事件の藤村新一という人とか、iPS 細胞の臨床適用したというでたらめを吹聴した森口尚史という人とか。
やらなくてもいいことをやって、一時は注目されもするが、結局あたら人生を棒に振るというパターンである。
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コメント
でもなんていうか、ホントにその曲なりがすきだった人は、
別にそれでいいと思うんですけれどね。
誰が作ったかとかは、音楽的にはあんまり関係ないような気がします。
(´・ω・`)
投稿: ひろゆき | 2014年2月 7日 23:24
ひろゆき さん:
確かにその通りなんですが、人というのはえてして、サイドストーリーにだまされてしまうんですよ。
本物だと思っていたのに、偽ブランドと判明したなんていうケースでも、持ち主はがっかりすることが多いです。「じゃあ、それまで喜んで使っていたのは、一体どういうことなんだ」と言いたくもなるわけですがね。
純粋にその曲が好きだというなら、問題ありません。オリンピックでフィギュアスケートで高橋選手が、佐村河内氏の作曲とされていた曲を使うそうですが、審査にあたっては、純粋に 「フツーの曲」 として考えてもらいたいものです。
投稿: tak | 2014年2月 8日 00:31
(*´・ω・)(・ω・`*)ネー
投稿: ひろゆき | 2014年2月 8日 19:24