関東の大雪で思ったこと
気象庁の発表によると、この冬(昨年12月~今年2月)の東日本太平洋側の積雪は、平年の 2.91倍で、統計を始めた1961年以降 2番目だったのだそうだ。それに対して日本海側の積雪は、一部の山間地を除いて平年に比べて少なかったという。これは上空の寒気が南下する日が少なかったためだ。
確かに、先日出張で出かけた福井県の越前市というところは、市街地では積雪が全然なかった。私の田舎の山形県庄内平野も、この冬はそれほどの大雪ではなかったらしい。
11月の声を聞いたら太陽を拝める日が急減し、毎日のように吹雪に見舞われる土地で生まれた私は、大学に入って東京で一人暮らしを始めた最初の年、冬が来たことにしばらくは気付かなかった。
何しろ、雪が降らないどころか、毎日抜けるような晴天だし、木枯らしといっても、田舎の猛烈な北西季節風に比べればたかが知れている。「冬なのに、どうしてこんなに天気がいいんだ?」とつぶやくと、「冬は天気がいいもんでしょ」と関東生まれの友人がこともなげに言ったのを今でも覚えている。
冬の間の関東と東北日本海側の天気は、まことにもって、裏表の関係なのだ。
初めて関東の明るい冬を体験した私は「こりゃ、やめられん」と思ったが、今ではあの鉛色の雲に覆われて地吹雪に耐える庄内平野の冬が懐かしくなることがある。そして関東で冬晴れが続くと「田舎は吹雪だろうなあ」と思いを馳せ、逆に冬に里帰りして妙に天気がいいと、帰り道が心配になったりする。
ところで、この冬の関東の雪は、統計を取り始めてから 2番目なのだという。それでは 最高の積雪はいつだったのかというと、昭和 59年(1984年) だった。
我が家は 昭和 57年の夏に、東京杉並区のアパート住まいから、このつくばの地に引っ越してきた。日曜日に引っ越して、翌週の日曜日の大雨で、周囲の道路が冠水した。我が家の周囲は、当時洪水地域だったのである。いやはや、そんなことは引っ越してきて暮らし始めるまで、ちっとも知らなかった。
そして、引っ越し 1年半後の冬は、確かに大雪だった。いわゆる「南岸低気圧が発達しながら関東沖を通過」というパターンが何度も出現して、毎日雪かきに追われたことを覚えている。
当時は通勤するのに、取手駅近くに借りた駐車場まで車で行っていたのだが、普段は 15分の道のりが、積雪のために 1時間以上かかる。とくに夜中に大雪が降った朝などは、道路が麻痺して駅までたどり着けず、会社を休むことも何度かあった。
結局この年の冬は、雪かきと長時間の通勤のための早起きで、夏バテならぬ「冬バテ」になってしまった。積雪による交通マヒを避けるために、毎朝夜明け前に家を出て、雪に覆われた田舎道を運転したのを思い出す。ちなみに当時はスタッドレスタイヤなんてなかったから、タイヤチェーンを巻いていた。
雪になれない近所の人は、大慌てでカーショップやホームセンターにタイヤチェーンを買いに走り、自分の車のタイヤサイズもわからずに見当はずれのサイズのものを買ってしまったりしていた。東北日本海側の生まれの者からすると、「いやはや、信じられん!」というお話である。
関東ではあれから 30年以上も、これほどの大雪はなかったから、中年のオッサンでもまともな雪道の運転経験をもつ人は少ない。今回の大雪は週末だったから、あまり大きな混乱にはならなかったが、ウィークデイだったら大変なことになるところだった。
ある意味、雪はコンスタントに経験する方が、人間の側の準備が行き届くので、結果としてはそんなに苦労しなくて済んだりする。
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