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2014年3月19日

LGBT ということ

昨夜の TBS ラジオ 「荻上チキ・Session-22」 という番組で、「世界の LGBT 事情最新リポート!」 というのをやっていた (Podcast はこちら)。LGBT とは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字を並べたもので、要するにセクシャル・マイノリティの総称のようである。

最近はこれが国際問題にもなっているようなのだ。ロシアではいわゆる「ゲイ・プロパガンダ禁止法」なんていう妙な法律が成立していて、下手すると「自分はゲイです」とカムアウトするだけで罪になりかねないことになっている。一方、同性婚支持を表明している米国のオバマ大統領は、当然ながらそれを批判している。

この番組にゲストとして出演した北丸雄二氏は、黒人解放運動、女性解放運動を経験した米国においては、黒人を、女性を解放することによって、白人(農園主のひどい連中)、男性がまっとうに解放されたのだと主張する。ということは、同性愛者を解放することは、異性愛者の解放でもある。

わが日本の場合は、この問題が結構複雑だ。一般的にいえば、日本は同性愛者に寛容な文化を持っている。江戸時代までは同性愛がかなりフツーのことだった。明治以後には抑圧的になったが、養われた感覚というのはそんなに急に変わるものではなく、テレビにこんなにフツーにゲイのタレントが登場する国は珍しい。

日本では男性の歌手が女性の立場で、例えば、酒場の女になりきって切々と悲しい恋心を歌ったりするというような「クロスジェンダー・パフォーマンス」というのがいくらでもあって、キワモノでもジョークでもなんでもなく、マジに CD になったりしているが、これは、世界的にはかなり珍しい。

その代わり、あんまりフツーなので西洋みたいにまともに LGBT に向き合った経験がないため、制度としての同性婚が真剣に議論されるなんて状態には全然至っていない。ずっと自然と一体の感覚が当たり前として生きてきたため、日本語には "nature" に相当する単語がなかったようなものである。「自然」が "nature" の訳語として定着したのは、近代以降のことだ。

同性愛が宗教的なレベルで否定され、それによって社会的な差別が当たり前だった西欧社会では、現代になってその反省の上に 同性婚が認められるなど、法制度が整備されつつある。しかし同性愛がそれほど強烈なタブーではなかった日本では、逆にそれによる差別を表立って禁止するような制度は確立していない。そのため例えば、就職活動で自分がゲイであるなどとは、口が裂けても言えないということになる。

私自身はセクシャル・マイノリティに関してはものすごく寛容で、同性婚だっていいじゃないかと思っている。同性婚を認めたら異性婚を基本とする社会が崩壊するみたいなことを言う人がいるが、「何を極端なことを」と言うほかない。

とはいえ、寛容ではあるが、彼らの事情をとてもよく理解しているというわけでもないので、恐縮ながら実際に彼らが社会的な地位向上のために動くにあたって、役に立っているというわけではない。ただ、彼らに対してどうでもいい偏見をもたず、分け隔てなく付き合えるので、邪魔にはなっていないだろうというだけのことだ。

具体的にいえば、例えば常識あるゲイとはフツーに気持ちよく付き合えるが、ギトギトに女好きのスケベなオッサンと付き合うのは、ものすごく不愉快だ。ギトギトなスケベが異性愛者というだけの理由で、常識あるゲイよりも「まとも」と受け取られるのは、全然納得できない。

LGBT の問題を解決するのは、彼らをごくフツーに当たり前と思う感性が大切なのか、あるいはごくフツーに思わない勢力に対して果敢に闘争を挑むことの方が重要なのか、この辺のことはよくわからないでいる。

最後に、どうでもいいことを 2つだけ書いておく。1つめは、セクシャル・マイノリティには寛容な私だが、男の歌手が女の立場になって歌うスタイル、とくにムード歌謡のクロスジェンダー・パフォーマンスは、かなり苦手というか、聞いていてものすごく居心地悪い。ただこれは、クロスジェンダーということより、あの「お水っぽさ」が性に合わないんだと思う。

それから、冒頭で触れた「荻上チキ・Session-22」という番組の、荻上チキさんだが、私はずっと「荻上いちき」という風に聞き違えていたので、この記事を書くために確認してみて、ちょっと驚いてしまった。でも、知って聞いても「荻上いちき」と聞こえてしまうがなあ。

 

 

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コメント

「具体的にいえば、……」の段落にまったく同感。

そういえば、女性蔑視の強い人と同性愛に対して差別的な人ってのも重なる気がするなぁ。単に「他者」への許容度が低いというだけかもしれないけど……。

投稿: 山辺響 | 2014年3月20日 09:33

山辺響 さん:

>そういえば、女性蔑視の強い人と同性愛に対して差別的な人ってのも重なる気がするなぁ。

重なりますね。確かに。

もろに重なっちゃうタイプの人は 「だって、俺は男から言い寄られたくなんかないよ」 なんて言うんですが、そういう連中には「あんたはそんな心配しなくていいよ。彼らにも選ぶ権利があるから」 と言ってあげることにしています。

投稿: tak | 2014年3月20日 19:08

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