食事の意味
私は美味しいものを食べるのは大好きだが、いつもいつも美食ばかりしていたいとはまったく思わない。美味しいものが大好きという反面で、食べるのが面倒くさくてかなわないと思うこともしょっちゅうなのである。つまり、時々美味しいものさえ食べられれば、あとはさっと済ませたい。我ながら無精なことである。
そんな無精な人間向けのような食べ物の販売が開始されたという。"Soylent"(ソイレント)というもので、飲むだけで 1日に必要な栄養素を全てまかなえ、日々の食事から解放されるプロテインタイプの栄養食品という触れ込みだが、当面は米国だけでの展開のようだ。(参照)
そして世の中には極端なことを考える人がいるもので、販売開始前に自らの体を使って、ソイレントだけで 30日間を過ごすとどうなるかを人体実験した人がいる (参照)。いくら無精な私だって、ソイレントのようなものは、よっぽど忙しい時に、10日に 1度ぐらいは試してみてもいいかなと思っているぐらいなのに、30日間それだけで過ごすなんていうのは、相当な物好きである。
で、その物好きな人は、30日間の実験を終えて 「肉体的な問題を抱えることはありませんでした。もしソイレントが適切な臨床試験を通過したなら、もう一度食べてみるかもしれないね。ただ、今回の実験のおかげで、食べるという行為は幸せなことだと気づきました」と語ったという。そりゃそうだ。
食べるという行為の意味が、単に肉体が必要とする栄養を摂取するというだけだったとしたら、ソイレントのようなものだけを摂っていれば十分だろう。しかし、食事に限らず、ものごとというのは直接的な理屈の範囲に限って考えられる意味だけで成り立っているわけではない。もっと総合的なものである。なにしろ、すべては複雑系なのだ。
例えば、食べ物に含まれる食物繊維のようなものがないと、人間の消化器官はうまく働かないし、食べる際の「噛む」という行為は、消化を助けるというだけでなく、人間の体全体に一定の刺激を与えて活性化させるということだってある。
それに何より、「心のこもったおいしい食事」というのは、人間を幸せにするし、食べ物を「いただく」ということに心をフォーカスすると、森羅万象に感謝の思いすら湧いてくるのである。
今回の人体実験を行った男性も、30日もソイレントだけで生き続ける間に結構なストレスを抱えてしまい、ちょっとうつ気味にすらなったという。直接的な効果のみを意識した効率だけで考えたシステムというのは、おしなべてそんなところがある。
人間には、一見無駄と思えるようなことが必要なのだ。ものごとをとことんまでつきつめて考えたがる真面目すぎる人が、神経症になりやすいってことも、ある意味では道理である。とことん突き詰めて、直接的な理屈にかからない要素を排除するというのは、総合的な理屈という観点からすると、困ったことなのだ。
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コメント
tak-shonaiさん
おはようございます~
この記事って、好きですね~すごくわかるんです。
実は私も丸薬だけで生きてもいいなと思うタイプなんですよ。私の書くものからは、思い浮かばない、かけ離れているようなんですが、実はそうなんですよ。
そして、私は自分で知ってますが、こころの病をもっているような気がしています。
私のことをよく知っている人は、「うっそ~~!」と
言うと思うけれど、そうなんですよね。
何だかこの記事には納得しますね~無駄って大切なことなんですね~
投稿: tokiko6565 | 2014年4月28日 10:05
「ソイレント・グリーン」という昔の映画を連想しましたが、この名称、冗談ではないんですかね?
投稿: きっしー | 2014年4月28日 11:37
自分も「ソイレント・グリーンは人間だ!」というセリフを思い出しましたが、記事によると新商品のソイレントは「ヒューマン・フリー」なんですね・v・
記事を読んで、以前、点滴だけで過ごした入院生活を思い出しました。食事せずともカロリーが満たされると空腹を感じなくなるのは不思議な感覚で、不満といえば同室患者の食事中に多少のいら立ちを感じてしまう事くらい。
やっぱり無駄は必要と思うけど、数日ならまた点滴で過ごしてみるのも楽だなあと思ってます。
投稿: Clark | 2014年4月28日 14:36
俺は今サラリーマンですが、昼食が楽しみです!
ヽ(´▽`)/
投稿: ひろゆき | 2014年4月28日 23:37
アメちゃんはこういうのが好きでゲスよねぇ。しかし、どういうお方がこういうの、求めるんでゲスかねぇ。
うめぇ米で握った塩むすびとか蕎麦とか、サバの塩焼きでかっこむ飯とかの旨さを知らねぇからこういうのが出てくるんじゃねぇすかねぇ。
こら!ハンバーガーばっかし食ってんじゃねぇぞ!(おいおい)
投稿: 無芸大食下衆兵衛 | 2014年4月29日 11:03
tokiko さん:
いつもいつもでなくてもいいですが、手をかけたおいしい食事って、大切ですね。
一見無駄なところが、何かを生み出す 「あそび」 ですからね。
投稿: tak | 2014年4月29日 11:21
きっしー さん:
そういえば、そんな映画ありましたね。
私はなぜか見逃してしまいましたが、かなり話題になってましたね。
投稿: tak | 2014年4月29日 11:22
Clark さん:
「ヒューマンフリー」ってのは、きつい冗談ですね ^^;)
>やっぱり無駄は必要と思うけど、数日ならまた点滴で過ごしてみるのも楽だなあと思ってます。
体がまいっているときは、食事を摂る気になれないので、まともな食事をとれないことによるストレスも小さいんじゃないでしょうかね。
健康な状態では、楽かもしれませんが、きっとストレスたまりますよ ^^;)
投稿: tak | 2014年4月29日 11:27
ひろゆき さん:
昼食が楽しみなのは、健康な証拠です。
投稿: tak | 2014年4月29日 11:27
無芸大食下衆兵衛 さん:
英国人なんかは、食い物にあまり興味を示しませんね。味オンチだし。
彼らは 「日本人ってやつは、どうして食い物ごときの話であんなに盛り上がれるんだろう?』 と思っているようなフシがあります。
でも、食い物の話で盛り上がれるのは、幸せなことだと思います。
投稿: tak | 2014年4月29日 11:30