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2014年4月12日

安倍さんの 「一句」

恒例の「桜を見る会」で安倍首相が「俳句」を詠んだと報じられているが、あれはマスコミの見識として、誰が何と言おうと「俳句」ではなく 「川柳」と言うべきだったと思う。YouTube でチェックしたところ、安倍さん自身も「俳句」とは一言も言っていなくて、「そこで一句であります。『給料の上がりし春は八重桜』、おそまつでありました」と、おちゃらけている。

既にネット界隈では「春」と「八重桜」は季重なりだなどと揶揄されているが、俳句と思うからいけないので、せいぜい出来の悪い川柳と思えば、その辺のことはどうでもよくなる。まあ、首相の句を「どうでもいい」と片付けなければいけないというのも、ちょっと悲しいことだが。

「桜を見る会」というのは、ちょっと前までは 4月の下旬に開催されていたように思うが、何しろ温暖化で、八重桜でさえもその頃には散ってしまっていることが多いので、少し早められたようなのだ。それでこの会としては久しぶりで文字通り「満開の桜」が見られたので、安倍さんとしてもちょっと気分が良くなってしまったんだろう。その「いい気分」の結果が、この「一句」である。

安倍首相はスピーチライターを起用しているというもっぱらの噂なのだが、「俳句ライター」を起用するところまでは思いが至らなかったみたいなのだね。残念なことに。

本来、日本国の首相たるもの、このような会に出るならば、日本の伝統に則って少しはマシな短歌か俳句を用意しておいてもらいたいものだが、どうも近頃の政治家にはそんな素養を求めても無駄なようなのである。せいぜい 5年前に当時の麻生首相が「ふるさとにはや桜満つゆゑ問へば冬の寒さに耐へてこそあれ」という歌を披露している程度だ。

まあ、この歌にしても「地元・福岡県の桜が全国で最も早く開花したことを指摘した首相が不況脱出に向けた決意を示した」ものと報じられたが、意図はどうあれ、歌としては前もって誰かに添削してもらっておくべきだったなあと、私なんぞは思ってしまう。そこで、当時のブログに次のように書いている (参照)。

桜の花が既に満ちていることの 「ゆゑ問へば」 とあるのだから、その理由を述べる結句は「耐へてこそあれ」ではなく 「耐へてこそなれ」 と結ぶのが自然だろう。

こんな場合、もし私だったら

ふるさとの凍ゆる冬を耐へてこそはや咲き満つる桜なりけれ

なんて、当たり障りなくステロタイプに綺麗めな歌にして、煙に巻いてしまうところかなあと思ったりする。まったくおもしろみはないけれど。

ちなみに一般論として、素人が「俳句」というものを作ると、季重なりになってしまうことがやたらに多い。ある催しで、素人俳句の短冊が壁に貼り出してあったが、その 8割以上が季重なりで、暗澹としてしまったことがある。「うららかに吹く春風や散る桜」なんてまだ可愛い方で、「土手の上小春日和に桜満開」なんていうどうしようもないものまである。これじゃ、「季重なり」どころか、「季重なりもせず」である。

素人は「俳句は季語を入れなきゃいけないから難しいですよね」なんて言うが、「そんなこと考えなくても、嫌でも自然に入るもんです。下手に考えるから、二つも三つも入ってしまうんです!」と言いたくなってしまう。

 

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コメント

「近頃の政治家にはそんな素養を求めても無駄」で思い出したのですが、この正月に聞いた話で、従姉の息子が就職活動をしているのだが志望先の一つが皇宮警察であると。えらく競争率が高いらしいのですが、なんでも、和歌を詠む試験があるらしい。

皇宮の警護といえば「北面の武士」ですから、和歌の一首くらい即座に詠めなきゃダメなのかなぁと感心したものです。

件の従姉の息子は子どもの頃から剣道をやり、大学でも茶道部に入っている和風の育ちなので、似合いかとは思うのですが、さてどうなったことやら。

投稿: 山辺響 | 2014年4月14日 09:22

山辺響 さん:

その昔は、和歌や俳句ぐらいは、少なくとも武士階級まではごく普通の嗜みだったようです。

その伝統からすれば、当然のことでしょうね。

投稿: tak | 2014年4月14日 12:48

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