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2014年5月 8日

中国とベトナムの対立は、今後の世界の予兆

南シナ海での中国とベトナムの対立が大きなニュースになった。中国が強引に開始した石油採掘に抗議するために現場に近付いたベトナム船に、「中国海警」と大きく記された船が、体当たりを食らわせている。中国人って案外短絡的に、棒でぶん殴ったり、船で体当たりしたがるという印象が大きくなってしまったよ。

ベトナム政府はこの模様を撮影したビデオをさっさと公開した。2010年に尖閣諸島付近で中国漁船(?)が日本の巡視船に体当たりしてきた事件で、時の民主党政府がビデオ公開をしぶりにしぶり、結局「流出」という Good job で日の目を浴びたのとは、エラい違いである。

中国は近年(に限ったことではないが)、周辺諸国との領土問題をエスカレートさせている。その要因はいろいろあるわけだが、最大のものは「資源」である。主に漁業資源と地下資源だ。

世界最大の人口を抱える中国は、経済発展によってこれまで以上に食料とエネルギーを必要とするようになった。

所得の増えた国民は、動物性タンパク質を摂りたがるが、牛や豚をそんなに急に増やすわけにもいかないので、漁獲高を増やさなければいけないのである。さらにエネルギー供給は深刻な問題で、これまで通り質の悪い石炭に頼っていては、大気汚染がますます深刻になる。どうしても石油と天然ガスが必要になる。

尖閣諸島周辺と南シナ海は、食料とエネルギー問題に悩む中国にとって、「喉から手が出る」ほどに欲しい海域なのだね。中国は今後ますます、なりふり構わぬ勢いで、これらの海域に進出を図るだろう。

中国は「東シナ海と南シナ海は、中国の海だ」なんて、本気で思っているフシがあるのだよね。何しろ英語で言ったら "East China Sea" と "South China Sea" なんだから。日本はそのあたりをぼかしたいのか、「シナ」という呼称はどうのこうのなんて言いながら、海の名前だけはしれっとして使い続けている。ご都合主義だよなあ。

韓国人が、「日本海(Japan Sea)」の名称に抵抗するのも、このメンタリティからしたら、少しはわからないではない。日本は「日本海は全部日本の領海だ」なんて野蛮なことは、決して言わないんだけどね。

ちなみに食料とエネルギー問題は、中国ばかりの問題ではない。おっつけ全世界的な問題になる、というか、既になっている。食糧供給は増加が止まり、地球温暖化による自然災害激化のせいで、減少の懸念すらある。

エネルギー供給でも「オイル・ピークは超えた」なんてことも囁かれているし、今後の世界は、食料とエネルギーの奪い合いになるのが確実なのだ。つまり、戦争の種は大きく膨らんでいるのである。つまり、中国とベトナムの対立は、今後の世界の予兆なのだ。

こんなにも戦争の種が膨らんでいる状態で、原発なんかを活発に稼働させたら、攻撃のターゲットになって、危なくてしょうがないではないか。それはもはや世界の常識で、原発 1基に的を絞って、ほんのちょっとでも穴をあけてしまったら、その国全体の大打撃になる。ものすごく効率のいい攻撃になるわけだ。

食料とエネルギーの奪い合いが戦争の原因になるのなら、戦争を避けるためには、その原因から遠ざかればいいのである。食糧自給率を高め、循環可能な自然エネルギー利用を推し進めるのが、最も確実な安全保障になる。

自然エネルギーは高くつくなんていう議論があるが、地下資源争奪(ウランだって有限な地下資源だし)で高い間接費用を使ったり、軍事費を増やしたり、最悪の場合、実際に戦争に巻き込まれたりする方が、コストは莫大なのだ。農業を大切にして太陽光や風力などによる発電を強力に推進するというのなら、もしかして憲法 9条だって改正しなくて済むかもしれない。

 

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コメント

最後の方のエネルギー関連についてのみのコメントですが、昨日読み終わった『再生可能エネルギーの真実』(山家公雄、エネルギーフォーラム)という本はなかなか面白かったです。タイトルだけ見ると、「いかに再生可能エネルギーなんて眉唾ものか」みたいな本かという印象を受けますが(笑)、実際には、風力、太陽光、潮汐、波力、地熱、バイオマス、中小水力など、ほぼすべての再生可能エネルギーの現状・展望を紹介した本です。なかなか勉強になりました。

投稿: 山辺響 | 2014年5月 9日 15:36

山辺響 さん:

「〜の真実」というタイトルの本は、大抵ネガティブな暴露本というイメージがありますが、これは「真実」という言葉に対してはなはだ残念な状況なのですね。

今、ちらっとアマゾンのコメントや書評をみたのですが、再生可能エネルギーの長期的視点でのベストミックスが展望されるという内容のようですね。

投稿: tak | 2014年5月 9日 20:22

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