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2014年5月22日

『美味しんぼ』について、おずおずと書く

例の『美味しんぼ』の件について、おずおずと書く。

ただ、これから書くことは、この漫画の内容についての詮索ではない。ましてや、例の鼻血がどうの、福島には住めないという話がどうのとかいうことに関して、論評するつもりはない。そもそも私は 『美味しんぼ』 の読者ではない。大昔にほんのちょっとだけ読んだことがあるだけなので、書く資格がない。

ここでおずおずと書きたいのは、これだけ「情報化社会」と言われながら、肝心な情報を得るのは、本当に難しいということである。

この漫画では、「鼻血が出るのは被爆したから」というセリフがあるらしいのだが、これに関してネットで検索すると、「福島で鼻血が出る人が増えたなんていう報告はない」という反論があったり、反対に「実際に子供の鼻血が増えて、母親の間では周知の事実」という口コミがあったりするらしい。

それだけではなく、「そもそも、被爆で鼻血が出るなんていうことはない」と言われたりするかと思うと、「いや、チェルノブイリでも鼻血が出る症状はずいぶん見られた」なんていう報告もあったり、要するに、さっぱりわけがわからない。

これだけわけがわからない状況における最も誠実な対応は、「だったら、よく調べてみましょう」ということだと、私は思うのである。『美味しんぼ』をヒステリックに批判したり、逆に「隠そうとするのは、何かあるからに違いない」といきり立ったりする前に、客観的な目で調査してみればいい。

「事故後に鼻血が増えたという報告はない」というのは、この発言の当事者にとっては客観的事実であろう。しかし、ここで言えるのは「報告はない」ということだけなのである。実際には、時々鼻血が出ることはあっても、別に医者に行くほどでもないし、仲間内のうわさ話だけで済まされていて、オフィシャルな報告としてまでは上がっていないということなのかもしれない。

「鼻血が出る」という程度のことは、小さなうわさ話にはなっても、大げさなニュースにはなりにくいだろう。「幼稚園児に鼻血増える」なんて話は、地方新聞の見出しにだってなりにくい。しかしオフィシャルな報告はなくても、うわさ話だけはあるというなら、そのうわさ話が本当かどうかということだけでも、検証してみればいいではないか。

その上で、鼻血が増えたのが本当だったとしても、それが重大な健康被害であるのか、あるいは気にしなくてもいいぐらいのことなのか、そこまで調べてみればいい。

そうした「誠実な対応」をすっ飛ばして、それぞれが自分の立場でしか発言しない状況をみると、やっぱり「原発」は「立場主義」の弊害が集中的に現れている部分なのだなあと思うしかない。

そもそもこの問題に関して「福島鼻血調査委員会」なんてものが公式に発足するとも思えない。行政は、こんなもの発足させたら、すなわち認めてしまったということになると、確実に思っている。何しろ「立場主義」だから。

で、その「立場主義」こそが今の状況をもたらしたのだということは、『もう「東大話法」にはだまされない「立場主義」 エリートの欺瞞を見抜く』(安富 歩・著)という本に書いてある通りなのである。

私はこの本が「名著」とは決して思わないが、「あるよねえ」と思わせる事例満載だとは思うのだよね。

 

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コメント

大好きなマンガ…だったんですが…
フォアグラとアンキモでケンカしてたマンガが、
いったいどうしてこんなことに…。
。゜゜(´□`。)°゜。

投稿: ひろゆき | 2014年5月25日 22:51

ひろゆき さん:

フォアグラとアンキモでケンカしてたんですか。
それはちょっと見てみたかったかも。

いずれにしても、今回の騒動はかなり気持ちが悪いです。

投稿: tak | 2014年5月26日 10:23

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