田舎暮らしの良さ
あの東日本大震災の年の前までは、都心にある事業所の仕事を請け負って、週に 3〜4日は、片道ほぼ 1時間半かけて神田まで通っていた。その仕事を切り上げて、オフィスを自宅の仕事場に集約し、月に何度かいろいろなところに出張して仕事をするというスタイルに切り替えて、まだ 4年も経っていない。
ところが、毎日都心に通っていた時代が、遙か昔に思われるのである。今では上野まで行くのが結構遠く感られる。ましてや新宿や渋谷なんてちょっとした旅行で、吉祥寺なんて、地の果てだ。
我が家はつくばの田園地帯の中にちょこちょこっと開発された宅地の外れにあり、2階に上る階段の踊り場から眺めると、今の季節は緑の田んぼが眺められる。なかなかのんびりした風情である。こんな土地に暮らしていると、都心に出るのがなんとも億劫でたまらなくなる。
若い頃は、文化の中心は都会だった。芸術でもファッションでも、新しい本でも音楽でも、都心に出かけなければ触れることができなかった。だから私は、高校を卒業すると当たり前のように東京の大学に入り、東京に住んだのである。
だが今は、東京に住む必要がない。田舎に住んでも東京の情報はいくらでも手に入るが、東京に済んだら田舎の情報はなかなか手に入らない。都会の情報は基本的にハイテクだから、バーチャル化しやすく、インターネットに向く。だが田舎の情報はハイタッチだから、田舎に住まなければ手に入らない。
つまり、田舎と都会の情報の両方を手に入れたいと思ったら、田舎に住むほかないのである。実際、やっぱり田舎は住みやすいし、自然の情報に満ちている。田舎暮らしの良さに気付いたら、都会には住めない。
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