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2014年6月 4日

工業製品の性能は上がったが

近頃、工業製品の性能がものすごく上がったと感じる。品質のばらつきということに関しては、何しろ中国製品が多くなったので、正直言って昔より目立つようになった気がするが、スペック的な面での向上はめざましい。

例えば自動車である。私が車の運転を始めた 30年以上前は、走行距離が 10万km を越えたら寿命と言われたものだが、今は 15〜16万km 以上平気で乗り回せる。装備にしても見事な進歩だし、「今どき、『チョーク』なんて知ってるのは、オッサンだよね」と笑い話になるほどだ。

身近な身の回りのもので言えば、靴がある。昔の靴は、よほど保革油をまめに塗り込んでやらないと、ちょっと雨に濡れると水がしみ込んできて足がびしょ濡れになってしまったものだが、今の靴は、よほど安物でないと水濡れの心配は減った。ファッション優先の婦人靴のことは知らないが、紳士靴に関しては、昔は高級品仕様だったグッドイヤー・ウェルトが当たり前になってきてためかもしれない。

それから、洗濯機の性能もものすごく上がった。我が家では、洗濯表示に「ドライクリーニング」と指定してあっても、ほとんどは平気で洗濯機で洗う。アパレル・メーカーは乱暴に水洗いした結果、型崩れや縮みが発生してクレームとなってはたまらないので、大事をとって多くの製品をドライクリーニング仕様としてるが、丁寧に洗えば大抵は大丈夫である。

はっきり言って、水で洗えないアパレル製品はほとんどない。あるとすれば、水に溶けてしまう素材を使っている場合だが、そんなもので服を作ったら、汗で溶けてしまうので、まずあり得ない。

昔は、ドライクリーニング仕様の品物は丁寧に手洗いしていたものだが、今は洗濯機の「ドライモード」にすれば、まず大丈夫だ。洗剤も「エマール」みたいなのがあるし。

よくアパレル・メーカーの消費者相談室に、「ドライクリーニングと指定してありますが、エマールで洗えば大丈夫ですよね」と電話で問い合わせてくる消費者がいるが、これは無駄な行為だ。アパレル・メーカーは「はい、表示はサバ読みですから大丈夫ですよ」なんて言うはずがない。

アパレル・メーカーの消費者相談室が「洗濯は表示通りの方法でお願いします」というのは、公式的なマニュアルに沿っているにすぎないので、そんなことに構わず、水洗いしても大丈夫である。30年以上アパレル業界でメシを食った私が言うのだから、信じてもらっていい。

水洗いが危険なのは、「フェルト化」してしまいやすいウール製品だ。ウールの表面のスケール(ウロコみたいなもの)が、一方向にのみぎゅぎゅっと圧縮されて、縮んでしまいやすいのである。これもゴシゴシ洗うからいけないのであって、丁寧に押し洗いすれば大丈夫だ。最近の洗濯機は、丁寧な押し洗い的な洗い方ができるようなのである。

こんなわけで、なんでもかんでも性能が飛躍的にアップしたのに、昔の常識による「サバ読み表示」が今でもまかり通っていて、道路の制限速度はその最たるものだと思う。車のブレーキ性能は昔と比べて格段に向上しているのだから、現行の制限速度はおよそ現実的じゃない。制限速度が 40km/h の道路を本当に 40km/h で走ったら、周り中の顰蹙を買う。パトカーだってプラス 10km/h で走っている。

しかし建前的な制度と実際の運用とは別物のようで、高速道路の最高速度を 100km/h から 120km/h にしようという気運が一時盛り上がりかけたことがあったが、いつの間にか立ち消えになった。一度決めた制度を変えるのは、なかなか難しいもののようなのである。誰だって、最悪のケースの責任は取りたくないからね。

 

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