定年について考える
一昨年に還暦になってしまった私だが、定年制とは無縁の独立事業主なので、多分死ぬまで働き続けなければいけないと思っている。ただ、今さら仕事を拡大しようとは思っておらず、なんとか生きて行ければいいぐらいに考えている。
勤め人だった同級生もほとんどが定年を迎えたが、最近は当人が希望すれば 65歳までは雇用を延長してもらえる制度があるらしく、実際にリタイアしたというのは少ない。大抵は嘱託か何かの肩書きで、それまでの会社に勤めているようだ。
22歳で大学を出て、新卒採用のまま 65歳まで 43年も同じ会社にいるなんていうのも、別に珍しいことではないらしい。同じ会社や団体から 10年続けて給料をもらったことのない私からすると、まるで天然記念物のように思われてしまうのだが。
60歳を過ぎても同じ会社で働き続けている連中の話を聞くと、60歳前の給料を維持できているのは極々わずかな例外で、ほとんどはガクンと下がっている。それまで管理職に就いていた者ほど、下がり方が激しくて、下手すると 4割程度になっているという。
「だったら、週に 3〜4回出勤すればいいとか、そんなことなの?」と聞くと、「とんでもない、名目上は管理職でなくなっただけで、仕事の中身はそれほど変わらない」というので驚いた。それだと企業にしてみれば、即戦力以上の人材を新入社員以下の給料で雇えるわけだから、こんなにいいことはなかろう。ある意味、公然たるブラック企業である。
それまでのハードな仕事を続けながら、給料は半分以下というのでは、モチベーションは下がる。いくら金のために働いてるんじゃないとかいうプライドをもってしても、給与明細を元に電卓を弾いてみたら、「なんだ、俺の時給は、コンビニのアルバイト並かよ!」ってなことになっては、そこはやっぱり、身が入りにくくなるのも人情というものだ。
今後ますます勤労者人口は減り続け、高齢者人口は増え続ける。やはり定年を 65歳に引き上げるというのは、日本社会の既定方針なのだろうと思われる。ただ、急に 65歳まで引き上げると決めてしまっては、企業としては 60歳以上の社員にブラック企業並の給料しかあげないというメリット(?)が消滅するから、やはり「段階的に」ということになるのだろう。
ここで個人的な思いを書かせていただくが、私としては 60歳を過ぎてまで 1つの企業に縛られていたくはない。少なくとも、還暦を過ぎたら自由な時間を多く持ちたいと思うのである。
今後65歳定年が一般的になったとしても、60歳を過ぎたらオプションとして、「給料はそれまでの半分程度でいいから、嘱託として週に 3〜4日出勤してアシスタント的な実務を行い、業績に関する責任は負わない」みたいな契約を結ぶことができるようにしてもらいたいものである。
こうした契約だと、ちゃんと実務がこなせることが前提となり、おべっかと接待だけで生き延びてきたような、無能な中間管理職には向かない。しかし、逆から見ると、こうした無能な中間管理職のセーフティ・ネットとして機能することもある。
ただでさえ化石扱いされているようなのが、そのまま正社員として居座り続けたら、会社の重荷になってしまうから、下手するとクビになってしまう。そうなる前に、給料は半分でいいから、65歳までは楽に雇ってもらえる保証を取り付ける方が、実は安全だったりするだろう。
米国などでは、定年制というのは全然一般的じゃないらしい。別に定年なんか設定しなくても、年を取ってまで働き続けたいなんて少数派で、大抵は適当なところでリタイアするし、どうしても必要な人材ならいくつになっても会社の方で離してくれない。逆に必要じゃなかったら、簡単にクビになる。
こうした発想からすると、能力とはほとんど無関係に一定の年齢で会社を去る「定年制」というのも、日本の横並び主義の産物なのかもしれない。
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コメント
ガクンと減る前の所得の方が働きに対して過分であったというのが一般的な姿ではないんですかね。終身雇用の弊害というやつです。
終身雇用末期の報酬に値する有用なスキルを持った老人はごく一部でしょうし、そういう人ですら成功体験が逆に仇になるというのも、今の世の中よくある話です。
「業績に責任を負わない」ジイさんたちが週に3回やって来るというのは、事態をややこしくするだけで、若い人たちにとってはかなり迷惑なんじゃないでしょうか。
もちろん、高齢になっても、いち技術者、労働者、経営者として堂々と市場に参入するという人が大勢いるのは非常に結構なことです。そうではなくて、企業が制度として高齢者を必要以上に優遇するのは、企業の活性化や競争力、若い人たちのモチベーションという観点からよろしくないということです。
投稿: きっしー | 2014年6月16日 10:55
きっしー さん:
うぅむ、この記事は、企業の定年が 65歳に伸びるという前提で書いたんですよね。
で、第一に、65歳まで会社に縛られたくない人のため、第二に、無能な人が正社員として 65歳までいなくて済むようにするためという、二点を視野に入れています。
まあ、無能な人がいつまでも高級取りとして居残らないためには、いっそクビにしてしまえばいいというのが、ストロングスタイルではあるわけですがね。
投稿: tak | 2014年6月16日 23:13