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2014年6月 5日

ビールの飲み方の比較文化学

"Pouch[ポーチ] / Be Wise Be Happy" に、"ビールは「土の中で冷やす」のが1番!? 電力要らずで超エコ、地中に埋め込んで使用する斬新なビールクーラーを見つけたよ!" という記事を見つけた。デンマーク在住の 4人の男性が開発した "eCool" という名のビールクーラーの話である。

簡単にいえば、土の中に埋め込んでビールを冷やすというもので、キャパは缶ビール 24本というから、まあ、ちょっとしたホームパーティぐらいなら大丈夫だろう。何しろ、電気を使わないから超エコである。

ただ、ドイツやデンマーク辺りの人というのは、キンキンに冷やしたビールを飲むってことがあまりないんじゃないかと思う。だから、土中で冷やすぐらいで十分なのだが、日本人や米国人にはどうかなあという気はする。どうも、日本と米国のビール温度というのは、国際スタンダードからみると「冷やしすぎ」なんじゃないかと思うのだ。

ただ、米国人のビールの飲み方を見ていると、あまり一気飲みしないで、案外ちびちび飲むのが一般的なようで、つまり飲んでいるうちにだんだん温くなる。ということは、キンキンに冷えたやつを一気呵成にグビグビ飲むのは、案外日本人の得意技なのかもしれない。

私が初めて行った外国は、ドイツである。そして仕事の関係で、30歳を過ぎるまでほぼ毎年、フランクフルトに出張していた。

ドイツのバーでビールを注文すると、サーバーからジョッキに注ぐのに結構な時間をかける。最初にドバーッと注いで、全体の 3分の 2以上を泡にしてしまい、それをしばらく放置して泡が減ってくると、またしてもドバーッと注ぐ。これを 3度ぐらい繰り返すと、きめ細かいクリーミーな泡が、全体の 3分の 1弱ぐらいになって、見るからにおいしそうになる。

私は初め、これが待ちきれなくて、「そんなに時間をかけないでいいから、さっさと出してよ。日本人とアメリカ人は、ウォーム・ビアーはダメなんだから」と言っていたが、ドイツ人のバーテンダーは誇りにかけても、そんな無粋な注文には応じない。

人差し指を出してチッチッチと左右に振り、”Cold beer, no good." と、下手くそな英語で講釈を垂れるのだった。私もついに降参して、時間の経った生ぬるいビールに親しむようになった。

それと対照的に、英国の「エール」ってやつは、ジョッキの縁まですっかりビールにしないといけないんだそうだ。泡でごまかすなんてのは、許せないらしい。味音痴の英国人らしい話である。ただ、泡が消えるのを待つために、やはり時間がかかり、生ぬるくなる。

日本のビールの CM をみると、ジョッキで豪快にグビグビやって、感極まったような表情を浮かべて「プハーッ!」とやるのが、なかばお約束みたいになっている。しかしあれは、実は高温多湿の気候風土で醸成された独特の「日本文化」なのかもしれない。

 

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コメント

1990年代の頭ごろ、英国でテレビの国会中継を見ていたら、与野党の代表がまさに口角泡を飛ばし討論していた法案がパブで使用されるグラスに関するものでした。1パイントのグラスは1パイント+泡の分の容量にすべしという法案です。
業者の立場としては、グラスの大量入れ替えが必要になるのでそれなりに大ごとではあろうとは思いましたが、大真面目に討論されていました。

投稿: きっしー | 2014年6月 6日 10:19

きっしー さん:

そういえば、そんなことがありましたね。
英国人、すげぇみみっちいなと思ったものです。

投稿: tak | 2014年6月 6日 22:05

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