無法自転車について、さらに論じてみる
昨日の「自転車のマナー」という記事が、思いの外に関心を呼んでしまったようで、あっという間に 5件もコメントがついた。みなさん、自転車のお行儀の悪さには腹に据えかねておいでの様子である。山辺響さんのおっしゃるように、これは「マナーの悪さ」というより 「議論の余地のない法律違反」というべき問題である。
ところで、コメント欄にも書いたことだが、私は自転車で右側通行をしている連中も、「自転車は左側通行」という基本中の基本のルールを知らないはずがないだろうと思っていた。学校でも自治体でもこれだけ啓蒙に力をいれているんだから、知っていて平気でルール違反してるんだろうと思っていた。しかしどうやら、その考えは甘かったようなのだ。
「自転車は左側通行」というルールを、本当に知らない人が多いようなのである。というか、「なんだかややこしいルールを聞いたことがあるような気がするけど、人は右側だし、自転車は『車』ってわけじゃないし(実は 『軽車両』 なのだが)、まあ、どっちでもいいんじゃないの?」 ぐらいに思っている人が多いみたいなのだ。
私は「国民の大多数に正しい情報がきちんと行きわたるなんて、期待しちゃいけない」と思っている。テレビでもラジオでも、地方自治体の広報紙でも、これだけ「振り込め詐欺に注意」と情報発信しているのに、引っかかる人が後を絶たないのだから、それは明白である。
だから、3年前にテレビが地デジに切り替わった時、「突然テレビが映らなくなった」という問い合わせが集中したのだ。血相変えてそんな問い合わせをするぐらいだから、テレビへの依存度は高い人なのだろう。そんな人たちが、何年も前からあれだけ「アナログ放送の終了」を告知されても、「なんか、あるらしいな」ぐらいにしか思っていなかったのである。
「人は右、車は、自転車も含めて左」というごくごく当たり前の情報でも、実はその辺のじいさんばあさん、オトンオカン、ガキンチョまでには、きちんと届いていないのである。少なからぬ人たちが、この辺りのことに関しては、まったく「無意識」なのだ。
そしてそれは、学校や自治体が啓蒙活動に努力すれば届くのかといえば、そういうわけでもない。情報を受け取らない人というのは、何がどうあっても、金輪際受け取らないのである。
それは「拒否」しているというわけじゃなく、「無意識だから届かない」のだ。無意識だから、当然受け取るべき情報を自分はきちんと受け取っていないということに、気付いていない。だから、「あ、こりゃいかん」と反省することもできない。そしてその無意識さ加減は、命に関わる情報でも変わらないのである。
だから「夜間に自転車のライトを点けるのは、車から認識してもらうためで、点けなきゃいきなりぶつけられてしまう可能性が高まるんだよ。命が惜しけりゃ、無灯火運転しない方がいいんだよ」と、いくら口を酸っぱくして言っても、ライトを点けない人は、闇夜だろうがなんだろうが、金輪際点けないのである。
リスクに関する一般的原則から、彼らの意識はかけ離れている。いつの場合でも「自分は別」なのだ。「正常化の偏見 (normalcy bias)」が、無意識に強すぎるので、自分はいかにぼうっとしていても、まず大丈夫と思っている。結果的には、周り中に「ヒヤリハッと」させまくり、迷惑かけまくりの上での「大丈夫」なのだが。
釈尊が「知って犯す罪より、知らずに犯す罪の方が重い」と言われたのも当然の話なのだ。それについては、2年半前に "「無明」と「罪」" というタイトルで論じているので、ご参照いただきたい。
で、私としては、世の中そういうもので直りようがない、不治の病みたいなものだからしょうがないと、諦めている。気付いてしまった者が気をつけるしかないのである。鈍感な者よりも敏感な者が気を利かせるしかないというのは、悲しいお話だが、自分が鈍感な方じゃなくてよかったとせめて喜ぶ方が、精神衛生にはいいだろう。
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コメント
まさに。
そう言う人に限ってtakさんのよく言われる「知らなかったから悪くない」という論理を持ちだすのですな。
投稿: taro | 2014年7月22日 09:51
taro さん:
そうなんです。「仕方ないじゃない、知らなかったんだから」 では澄まないのです。
何かをするにあたって、当然知っているべきことを知らずにやってしまったんだから、全然仕方なくないんです。
投稿: tak | 2014年7月22日 10:47
自転車を歩道に上げてしまった時点で、「自転車もクルマの仲間」という認識は一般市民からなくなってしまったのでしょうな。
そして学校の先生も、「自転車は歩行者と同じなんだから、右側を走りなさい」と教えるそうです。
この国では、何も考えず、他人と同じ行動をしていたほうが楽だし、安全なので、そうする。
困ったものです。本当に。
投稿: 池波ゲス太郎 | 2014年7月22日 23:26
池波ゲス太郎 さん:
レスがやたら遅れてしまい、申し訳ありません。
>自転車を歩道に上げてしまった時点で、「自転車もクルマの仲間」という認識は一般市民からなくなってしまったのでしょうな。
「元々なかったから、歩道に上げるしかなかった」 とも言えるんじゃないでしょうか。どうせきちんと教育しきれないんだからと、ナアナアで済ませる方を選んだんですね。「自己責任なんだから、でたらめの結果、死ぬのも覚悟しろよ」 と言えずに。
>そして学校の先生も、「自転車は歩行者と同じなんだから、右側を走りなさい」と教えるそうです。
それは酷すぎますね。恐ろしいわ。
投稿: tak | 2015年3月 2日 16:48