平和記念式典での首相のコピペ挨拶を巡る冒険
6日に広島市で行われた平和記念式典での安倍首相の挨拶が、ほとんど昨年のコピペだとして一部からの批判を呼んでいる。
Huffington Post の「検証記事」によると、なるほど、昨年の挨拶とほとんど同じだ。前半は、昨年の「68年前の朝」が「69年前の朝」に変わっただけでまったく同じ。まあ、この挨拶文を作成した官僚にしてみれば、冒頭ではこの部分さえ変えれば、あとは儀礼的な挨拶だし、OK と思ったのだろう。
ちなみに「儀礼的」では済まない後半部分では、最近の安倍内閣の実績をアピールしており、完全コピペというわけではない。そして結びの部分はやはり儀礼的に、昨年とほとんど同じ文章で締めてある。
この問題を最初に Twitter に投稿したのは、上川あやさんという世田谷区会議員で、「安倍首相の平和祈念式典スピーチが去年と同じ!? ありえん!という話題」と書いている。この上川さんというのは、性同一性障害であることを公表した上で立候補され、上位当選しているという、なかなかおもしろそうな人である。
ただ、「ありえん!」と言っていいかというと、決してそういうわけじゃない。平和記念式典に限らず、恒例儀式でのエラい政治家の挨拶なんて、大抵は官僚が前の年の原稿を元に、チョイチョイっと編集して作文するものだ。だから大抵はこんなものである。
儀式の挨拶の文章を自分で作りたがるのは、私の知る範囲では、市立や区立の小中学校の卒業式に来賓として出席するヒラの市会議員とか区会議員とかである。ただ、そういう人たちの挨拶は往々にして、ちょっと説明不足で意味不明の部分があったり、逆に思い余ってクドくなりすぎたりする。
上川さんは多分「自分で文章を作る派」で、Twitter などで書き慣れていて、まともな挨拶ができる方なんだろうが、フツーはそういう作業に慣れた役人に作文させる方が無難だと考えられている。下手に議員先生に任せると、つい失言なんかしかねないしね。
今回の安倍首相の挨拶でも、「蝉時雨が今もしじまを破る」という修辞的な部分が、当日は本降りの雨だったためきちんと削除されていて、我が国の官僚はそつなく天気予報まで意識していることがうかがわれる。
まあ、決して誉められたことではないが、平和記念式典に限らず、大抵の儀礼的な挨拶文というのはそんなようなものだということである。それがいかんということになると、もう才能あるスピーチ・ライターを雇うしかない。
私個人としては、スピーチ・ライターの起用に大賛成なのだが、この国では儀礼的な挨拶は決まり文句で済ませればいいと思われているフシがあって、クリエイティブな挨拶なんて求められていない。ところが、たまに上川さんのようなユニークな人がそれを求めると、急に尻馬に乗る人が現れる。
このコピペ挨拶に関して、広島県原爆被害者団体協議会の某事務局長は、「被爆者や国民を冒涜している」と批判したというのである(参照)。だが、作文した官僚が「軽く見すぎちゃった」というのは明らかだけれど、「冒涜」とまでは言い過ぎなんじゃなかろうかと、私なんか思ってしまう。
団体事務局たるもの、関係者が死ぬ度に、 NTT の用意した既成の文例(例の 4桁数字で済むやつ)を使って、ほとんど同じ文面の弔電を、理事長名で打ったことがないはずはないと思うのだが、それを「冒涜」と言われちゃ、かなわないよね。まあ、お互い様である。
| 固定リンク
「ニュース」カテゴリの記事
- 「チャーハン症候群」というのがあるらしい(2023.11.18)
- 「大麻グミ」のセールス・プロモーション、失敗?(2023.11.16)
- 「ど根性スイカ」とやらを珍重したがる都会人の意識(2023.10.17)
- 「大阪万博」を巡る冒険(2023.10.08)
- クマの「駆除」への抗議電話ということ(2023.10.07)
コメント
今年の流行語大賞は、コピペで決まり!
それはさておき、毎年、違うスピーチしろ、と言われたら、これは難しい。
張り切って、クリエイティブな内容にしようと、某劇作家に首相就任演説を依頼すると、“命、命、命、・・・” になってしまい聴いてる人をズッコケさせる。
無難にコトを済まそうとすれば、ほぼ同じ内容になるのは仕方がないですね。それを“冒涜”として怒りを顕にするのはちょっと大人げない。
せめて “総理の生の声が聞きたかった“ と皮肉るくらいが丁度いいところでしょう。
連投失礼しました。
投稿: ハマッコー | 2014年8月10日 01:46
tak-shonaiさんごきげんよう~
おはようございます~
何事にも文句をつけたがる人々がおられるんですね~
あっははは
私はツイッターが始まった頃にちょっと登録したことがありましたが、すぐにそういった物から撤退しました。
「あなたの友人ではありませんか?」というお知らせがついたのです。そうして、友人だという人々があまりにもリアルの知り合いで、しかもすごく大勢だったのです。びっくりしました。どうやったらそれが解るのか?
私はネットでは知らない人々と遊びたいと思っていますので、怖かったです。くわばらくわばら・・・
tak-shonaiさん記事と関係ないことを書いて、ごめんなさいね。
投稿: tokiko6565 | 2014年8月10日 06:04
ハマッコー さん:
>それはさておき、毎年、違うスピーチしろ、と言われたら、これは難しい。
まさに、その通りです。
スピーチする身にもなってみろってことですね。
私なんかも、毎年恒例のスピーチをすることがありますが、基本的構成は完璧にコピペです。
その中にアドリブを加えてウケてます (^o^)
>張り切って、クリエイティブな内容にしようと、某劇作家に首相就任演説を依頼すると、“命、命、命、・・・” になってしまい聴いてる人をズッコケさせる。
鳩山さんの場合は、元々具体的な訴求内容を持ってない人ですからねえ。それに、スピーチライターの方も、なんとなく勘違いがあったようですし ^^;)
>無難にコトを済まそうとすれば、ほぼ同じ内容になるのは仕方がないですね。それを“冒涜”として怒りを顕にするのはちょっと大人げない。
本文でもちらっと書きましたが、コピペ挨拶を 「冒涜」 というなら、弔電も、死んだ人ごとに内容を変えて、ちゃんとオリジナルの電文を考えて打てということで、それができないのなら、今回のことで 「冒涜」 よばわりはいかがなものかと (^o^)
投稿: tak | 2014年8月10日 22:08
tokiko さん:
>あなたの友人ではありませんか?」というお知らせがついたのです。そうして、友人だという人々があまりにもリアルの知り合いで、しかもすごく大勢だったのです。びっくりしました。どうやったらそれが解るのか?
単に機械的に類推してるだけですよ。シカトしてればいいんです。
それにしてもすごいですね。リアルの知り合いが、そんなに Twitter してるんですか?
私のリアルの知り合いなんて、ほとんどやってないですよ ^^;)
投稿: tak | 2014年8月10日 22:15