従軍慰安婦問題の今後
朝日新聞のこれまでの従軍慰安婦問題に関する記事を虚偽と認めた特集に対して、韓国からの表立っての反応はまだほとんど紹介されていない。もしかしたら翻訳に手間取っているのかもしれないが。
どう対応していいか、戸惑っているのだろうが、いずれにしても完全シカトはあり得ないから、そのうちどっと出てくる。これまでの行きがかりからすれば、「朝日新聞までが安倍内閣からの圧力に屈して、歴史を歪める方向に舵を切った」というような論調になるのではないかと思う。
しかし、今回朝日が屈したのは、安倍内閣からの圧力というよりは、「世間の空気」というものを読んでしまったからだろうと、私はみている。朝日は日本国内に向けて日本語で書かれているのだから、読者の主力はあくまでも日本人なのだ。
朝日はその主力読者である日本人に、公然と「チョーニチ新聞」なんて揶揄され始めたのである。このままでは部数減少に歯止めがかからなくなる。朝日内部でも、そうした危機感が表面化しつつあるのではあるまいか。
ちょっと前まで、「日本の良心」は、先の大戦中の日本の「蛮行」を真摯に反省して、謝り続けることにあった。そうでないと、「周辺諸国」に申し訳がないというのである。それが知的でリベラルなインテリの、望ましい態度だった。
ところがふと気付けば、実は「周辺諸国」のほとんどが日本贔屓であり、「反日」は中韓の 2国しかない(北朝鮮は、この際、無視)ことがバレてしまった。さらに中韓の 2国はこう言っちゃなんだが、「周辺諸国」の間でも、どちらかと言えば歓迎されない役どころである。
というわけで、「日本の良心」が依って立つところのバランス関係の認識が、北朝鮮を「地上の楽園」なんて言っていた前世紀後半とは、がらりと変わってしまった。そうなってしまうと、朝日は結構「空気を読む」のである。
その一方で、朝日が国内向けの日本語媒体で少しばかり間違いを認めたところで、国際的な影響力は小さい。「従軍慰安婦問題はガセネタでした」と言っても、慰安婦像の建設を認めた米国のセンチメントがすぐに大きく変わるなんて期待できない。朝日の影響力なんて、その程度のものである。
朝日は自分でどう思ってるか知らないが、国際的には決してクォリティ・ペーパーと認められていない。前世紀のことだが、朝日のファッション担当編集委員だった某女史が、「日本政界のベストドレッサーは、土井たか子」とマジに力説するのを聞いて、「まあ、そういう新聞なのだから、しょうがない」と思ったものだ。
今回の朝日の特集は、右側からは「日韓関係をこじらせた張本人のくせに、ちっとも謝罪になっていない」と攻撃されているが、その「どっちつかず」加減が、現状では図らずもちょうどいい緩衝材となっていると考えることもできる。あまり真摯に突っ込みすぎると、韓国はヒステリックなまでのカウンター・キャンペーンに出るだろう。
嘘でも百回言えば本当らしいものになってしまうのが、世論というものである。ましてや国際世論となると、海の彼方の本当のことなんて、誰も知らないのだから、少なくとも短期的には、大声でしつこく言い続ける者が有利となる。
ところが大声で叫べば叫ぶほど、事実関係の理解が徐々に浸透するにつれて、韓国の立場は損なわれるだろう。そのあたりのことを、韓国が冷静にわきまえることができるかどうかが、今後の課題なんだろうと思う。
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コメント
この件、朝日新聞は購読していないので特集(相当な紙面を割いているようです)そのものを読んだわけではないのですが、ある特定の記事について虚偽であったことを認めただけで、従軍慰安婦問題自体についての認識は変わっていないようですよ。
投稿: 山辺響 | 2014年8月 7日 18:19
山辺響 さん:
>ある特定の記事について虚偽であったことを認めただけで、従軍慰安婦問題自体についての認識は変わっていないようですよ。
本文でも触れたように、その「どっちつかず」のところが、逆に幸いするように思っています。
着地点がどこだかわからないぐらいのところが、今の状況ではいい緩衝材になるだろうと。
投稿: tak | 2014年8月 7日 19:49