国、Country、State、Nation
今月 7日の「スコットランド独立の住民投票が迫って」という記事で、「ほぼ単一民族で構成され、しかも明治以来、強固な中央集権体制を維持してきた日本からみると、西欧の『国』という概念は、かなりわかりづらい」と書いた。
何しろ、英国という「国」の中に イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドという、紛れもない「国」が存在する。これらの 4つの国は、それぞれ "nation" なのだという。これは「共通した文化をもつ民族による国」という意味なんだそうだ。
日本語の「国」を表す英語として、上述の "nation" の他に "country" と "state" がある。"Country" は「国」を表す言葉として最も気楽に包括的に使える言葉だ。"State" は、米国の「州」であって、「国」じゃないだろうという人もいるだろうが、フツーは「国」である。
米国の "states" は、日本語でたまたま「州」と言っているだけで、”United States of America" は、直訳すれば「アメリカの連合国家」なのである。"State" というのは、「国」を表現する場合の、最も政治的な意味合いを前面に出した場合の言い方のようなのだ。
何しろ「国」なのだから、それぞれの "state" には、ちゃんと「政府」がある。それらが、軍事と外交と通貨を連邦政府に任せているだけなのだが、まあ、英国なんかよりは、ずっと「一つの国」だと、米国人は意識している。星条旗を掲げた時のまとまり方なんて、半端じゃない。
英国のケースに戻る。4つの nations が集まって作っているのが何かといえば、"United Nations" ではなく "United Kingdom"(連合王国)である。"United Nations" と言ったら、「国連」のことになってしまうから、ややこしい。あれって、第二次大戦の時の「連合国」が大きくなったものだと思えばいい。
"Kingdom" というのは「王国」なのだが、それが "nation" であるのかといえば、「共通した文化をもつ民族による国」という定義からすると、英国は 4つの異なった民族と文化の寄り集まりだから、ビミョーにいいづらいところがあると思われているフシがある。
日本では "nation" という言葉は「国家」と訳されているが、このあたりは、もう少し深く立ち入って考えてみる必要があるようなのだ。"The British nation"(単数形)と言ってしまうと、「英国民」という意味合いになる。ああ、ややこしい。もうちょっとすっきり割り切れるといいのだが、何しろ昔から使ってきた言葉だから、境界線が引きにくい。
強いて言えば、日本語の「お国なまり」という場合の「お国」が、"country" に近いと思う。そういえば、明治以前の日本の「律令制」や「幕藩体制」は、ある意味「連合国」に近いところがあったのかもしれない。現実に「武蔵国」とか「信濃国」とか言ってたしね。
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