iPhone 6 を買うための行列
iPhone 6 の発売開始の今日、表参道の Apple Store には 1000人以上の行列ができて、隣の外苑前の駅までつながったと伝えられ、銀座店にも 1000人近い行列ができたと報じられた。世の中には、新製品は夜通し並んででも他人に先駆けて入手したいという人が、一定数いるようなのである。
私は一昨年 5月、東京スカイツリー開業の直前に 「行列に並んでもホットスポットに行きたいか?」 という記事を書いた。TBS ラジオがこのテーマで聴取者対象のアンケートをとったら、「並んででも行きたい」 派は、僅か 15%だったというのである。圧倒的多数は、「並んでまで行きたくない」 派だった。
時事通信はスコットランド独立を問う住民投票の結果を、「予想外の大差」 と報じている (参照) が、55:45 がどうして 「大差」 なのかよくわからない。本当の 「大差」 というのは、この 「並んででも行きたいか」 アンケートの結果ぐらいの、圧倒的なものでなければならないと思うがなあ。
話を元に戻そう。話題のスポットに行列してでも行きたいという人と、iPhone 6 を行列してでも入手したいという人とは、多分それほどカブらないとは思うが、メンタリティとしてはかなり共通するものがあると思う。「ホットな話題の渦中に、最初に加わることに意味がある」 と考えているらしいということだ。
同じメンタリティの、発揮される分野が違うというだけのことだ。ターゲットが、東京スカイツリーだったり、ゲームソフトだったり、iPhone だったり、人気のアイドルだったり、評判のラーメン店だったりする。
ただ、こうした行列情報は、ちょっと眉に唾を付けて受け取らなければならない。世の中には、アルバイトで行列に並ぶという仕事が存在するからである。行列要員の求人は表立って行われることがないため、世間ではあまり知られていないが、そこはそれ、蛇の道は何とやらいうもので、専門の業者に登録しておけば、求人が発生する度にメールで知らせてくれるらしい。
企業がバイトを雇ってまで長い行列を演出したがるのは、それが大変な宣伝になるからだ。とにかく長い行列ができれば、テレビや新聞がこぞってニュースにしてくれる。広告料に換算したら、何億円の効果があるか知れない。それに要するバイト料なんて安いものである。
IT 技術というのは、小さなハードウェアの入手のために前夜から行列に並ぶなんてことをしなくて済むようにあるはずなのだが、Apple みたいな会社が行列のできることが必至の売り方を続けるのは (私は今回の行列のほとんどがバイトだなんて、言ってないからね)、それがものすごくいい宣伝になるからなんだろうね。
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