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2014年9月 7日

スコットランド独立の住民投票が迫って

今月 18日に、スコットランドの独立を問う住民投票が実施されるのだそうだ。英国政府としては、元々この住民投票実施を認めたのは、当然にも独立反対票が上回るものと見込み、順当な結果が出れば、しばらくは独立派もおとなしくせざるを得ないだろうと見ていたかららしい。

しかし世論調査では、独立賛成派がじわじわと増加してきており、最新の調査では僅かながら独立派が上回っているという。英国政府としては、ちょっと想定外の状況になってきているわけだ。

ここまで「英国政府」と書いたが、本来の呼称は "Her Majesty's Government" というもので、直訳のしようがないが、まあ「女王陛下の政府」という意味合いである。つまり、スコットランドとしては「女王陛下の連合王国」から抜けたいということのようなのだ。

ほぼ単一民族で構成され、しかも明治以来、強固な中央集権体制を維持してきた日本からみると、西欧の「国」という概念は、かなりわかりづらい。日本では「イギリス」と呼ばれる国(私は「英国」 あるいは "UK" と呼ぶことにしているが) は、本来は "The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland"(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)という連合国家なのだ。

共通の元首、女王陛下を戴き、一つの「連合国家」を形成し、EU や国連には便宜上、連合王国として加盟しているとはいえ、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドは、あくまでも 4つの「国」なのだ。

だからご存じの通り、サッカーやラグビーのワールドカップでは、4つの「国」がそれぞれ代表チームを組んで参加している。サッカーではいつもイングランドしかヨーロッパ予選を勝ち残らないが、ラグビーではウェールズも結構いいところまで行く。

だいぶ前に、仕事上でつきあっていた英国人(イングランド人)に、「あなたたちはどうして、ワールドカップに『統一チーム』(United Kingdom team)として参加しないのか?」と聞いたことがある。「統一チームなら、サッカーではブラジルやドイツ、ラグビーではニュージーランドやオーストラリアと、いい勝負ができるだろうに」と。

彼は私の質問に、「何をまた、くだらんことを言うのか」といった顔をして、まともには答えなかった。彼にしてみれば、「ずっと別の国として予選を争ってきてるんだから、今さら統一チームなんか、できるわけないじゃないか」ということだったのだろう。

つまり、軍事的、外交的には、一応「連合王国」として対処しているが、それは極めて政治的な「便宜上」の話であって、正直な気持ちがもろに表れるスポーツでは、「やつらとは、別の国なんだよ」ってなことらしいのである。

で、「別の国」ではありながら「連合王国」を形成し、さらに他のヨーロッパ諸国と一緒に EU(欧州連合)まで形成する。英国は伝統的にポンドという独自通貨だが、他の EU 諸国は、通貨まで同じにしてしまっている。

この辺りが日本人にはわかりづらいところで、ヨーロッパでは歴史的にも地理的にも、「国」という単位はかなりとぐろを巻いていて、英国は 4つの国が今でも張り合っているし、スペインでもカタルーニャが独立したくてうずうずしている。そのくせ、EU なんかを形成して「ヨーロッパは一つ」なんてことも言っている。

今回、スコットランドが「独立」ということになってしまったら、カタルーニャはとんでもなく元気づくだろう。しかし例えカタルーニャが独立しても、サッカーの「リーガ・エスパニョーラ」は名前を変えてでも存続して、レアル・マドリードとバルサの「クラシコ」(伝統の一戦)は、ますます熱狂的に継続するだろう。

ロシアとしてみれば、「そら見ろ、スコットランドが英国じゃないように、クリミアだって、ウクライナの一部じゃないんだ」と言うだろう。しかしそれを言い過ぎると、今度はロシア内部の民族主義が台頭するだろうから、諸刃の剣である。なかなか大変な事情を抱えているものである。

つくづく、日本はシンプルで平和だなあと思ってしまうのであるよ。

 

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コメント

ラグビーではウェールズも強豪ですが、アイルランドもかなり強いです。現時点のランキングではイングランド→アイルランド→ウェールズ→スコットランドの順。アイルランドやウェールズはイングランドより上に行くこともありますね。

※なお、ラグビーでは「北アイルランド」という単位はなくて、「アイルランド」だけです(英領北アイルランド+アイルランド共和国=アイルランド島)。

四年に一度、ブリティッシュ&アイルランドの合同チーム(ライオンズ)が結成されるのですが、では個々のチームよりかなり強いかというと、それは疑問です。

このへんの区分と、アメリカ合衆国の「州」の区分と、どちらが強いのだろう……。

投稿: 山辺響 | 2014年9月 8日 10:04

山辺響 さん:

>現時点のランキングではイングランド→アイルランド→ウェールズ→スコットランドの順。

それは認識不足でした。アイルランドには失礼してしまいましたね。ごめんなさい (と、ここで言っても始まらないですが ^^;)

>なお、ラグビーでは「北アイルランド」という単位はなくて、「アイルランド」だけです(英領北アイルランド+アイルランド共和国=アイルランド島)。

それも知りませんでした。ラグビーの世界では、アイルランドは一つなんですね。(アイルランド、本当にごめんなさい ^^;)

>四年に一度、ブリティッシュ&アイルランドの合同チーム(ライオンズ)が結成されるのですが、では個々のチームよりかなり強いかというと、それは疑問です。

そういえば、そうですね。急ごしらえでは、戦術面の準備が行き届かないんでしょうかね。

投稿: tak | 2014年9月 8日 12:43

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