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2015/01/24

「荷役」の読みは「にやく」が正しいらしいんだが

漢字の読みをめぐる冒険」という記事を書いたのは、もう 7年も前になる。この中で、「捏造」は「でつぞう」、「洗滌」は せんでき」と読むのが正しいなどという「意外な正しい読み方」を紹介した。「依存」が「いそん」で、「間髪を入れず」が「かんはつを〜」だったりするのは、まだ序の口である。

私は収入のかなりの部分が 「原稿料」 という名目で入ってくるので、言葉に関しては一応プロである。その私としたことが、最近初めて知った 「漢字の正しい読み方」というのがある。それは「荷役」という言葉で、正しい読みは「にやく」なんだそうだ。これまでずっと「荷役作業」を「にえきさぎょう」と読んでいたけど、間違いだったわけだ。

これに関して調べてみると、大修館書店の「漢字Q&A」というページに、次のような説明があった。ちょっと長めだが、引用する。

「やく」は呉音、「えき」は漢音というのが両者の違いで、中国語としての漢字にまでさかのぼった場合、意味的な違いではありません。しかし日本では、古くからこの2つの音読みを、意味によって使い分けてきました。

「えき」と読むのは、「働かせる」「戦争」などの意味の場合です。「使役」「戦役」などが、この例にあたります。これに対して「やく」と読むのは、「割り当て」「仕事」などの意味の場合で、「役割」「配役」「役人」などがこの例です。この使い分けは、日本独自のもので、漢字が本来持っていたものではありませんが、私たち日本人としては、これに従っておいた方がよいと思われます。

さて、そうしますと、「荷役」の「役」はどういう意味かを考えれば、その読み方が決められるということになります。この熟語は、主に船舶などで、荷物の上げ下ろしをする仕事のことを意味しています。この場合の「役」は、「働かされる」という意味だとも考えられますが、「仕事」という意味で捉えておく方が、素直ではないかと思います。「荷役」はやはり、「にやく」と読む方がよいようです。

ふぅむ、言われてみればもっともという気もするが、なんだかまだ腑に落ちない。例えば 「雑役」は『大辞林』 によれば 「種々雑多の仕事。雑用」とある。上述の原則によれば、「仕事」というのだから、「ざつやく」と読むべきなのだろうが、「ざつえき」と読まれている。「雑役夫」も「ざつえきふ」であって、「ざつやくふ」 ではない。

また「苦役」も「苦しい肉体労働」のことだから、「仕事」 に他ならない。それなのに、「くやく」ではなく「くえき」である。また、一般的な用語ではないが「力役」(りきえき)という言葉もあり、『大辞林』では「体力を使って仕事すること。力仕事」とある。これも上述の原則に従えば「りきやく」と読むべきなのだろうが、そうなってはいない。

こうした感覚は、現代的な理解では「やく」と読むのは「役割」的な意味合いであり、英語で言えば "role" というニュアンスの強い場合が多いことによるのだと思う。「取締役」「配役」「上役」「悪役」 などが、このニュアンスにぴったりだ。

一方、「えき」と読むのは「戦役」という意味合いを別とすれば、今ではむしろこちらの方が「仕事」というニュアンスが強い。英語でいえば "task" である。上述の「雑役」も「苦役」も「力役」も、「仕事 = task」である。

だから「荷役」も「にえき」と読む方がしっくりくるわけだ。しつこく例を挙げ続ければ、「現役」という言葉も、「現に働かせる」というよりは「現時点でその仕事に就いている」というニュアンスだから、「げんえき」でしっくりくる。

大修館書店の説明にあるとおり、「日本独自のもので、漢字が本来持っていたものではありません」というのだから、例外的というか、通り一遍では説明が付かない用例がうじゃうじゃあるのも当然である。

さらに漢和辞書を引いても、少なくとも私の手持ちの三省堂版『携帯新漢和中辞典』には「荷役」という言葉は見当たらない。ということは、元々の漢語ではなく、和製熟語である可能性が高い。そんなわけで、「荷役」が「にやく」というのも、後付けの理屈で無理矢理に当てた読みということのようで、それもしっくり来ない要因ではあるのだろうね。

 

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言葉」カテゴリの記事

コメント

tak-shonaiさんごきげんよう~
明けましておめでとうございます。
やっと私も目を少し覚まして出ていますが、
tak-shonaiさんのブログは毎日のぞいていましたよ。
ときどきコメントつけたいと思っていたのですが、
いろいろあって、なかなか書けませんでした。

荷役という言葉からくるニュアンスは、やはり、《つらい仕事をやらされている》という感覚ですから、役割とは違うはずですよね~?と、私も思いますが・・・


投稿: tokiko6565 | 2015/01/25 07:34

ふうむ、こりゃ興味深いですな。
あっしゃ、以前も申しましたが、瓦版やらに誤字脱字その他がないか調べる仕事をしてやす。ま、時々(しょっちゅう)、冷や汗をかくこともありやすがね。
あっしが思うに、「荷役」の仕事に、フォークリフトやらが使われて、「力仕事」の比率が減り、機械の比率が多くなったので、読みが「にえき」から「にやく」に変わっていった、というのもあるんじゃないかと。
あ、それから、「依存」の読みなんですが、NHKでは現在、「いぞん(濁音あり)」のほうを優先しているそうです(「NHK放送文化研究所」サイトより)。
言葉も変わっていくもんなんですなぁ。
さて、あっしゃ、これから自転車で「荒川の見回り」に行ってきやす!

投稿: 萩原下衆兵衛 | 2015/01/25 09:39

tokiko さん:

旧暦ではまだ、師走六日ですから、十分間に合ってますよ (^o^)

それにしても、「にやく」は違和感ですよね。

投稿: tak | 2015/01/25 23:08

萩原下衆兵衛 さん:

>あっしが思うに、「荷役」の仕事に、フォークリフトやらが使われて、「力仕事」の比率が減り、機械の比率が多くなったので、読みが「にえき」から「にやく」に変わっていった、というのもあるんじゃないかと。

わはは (^o^)
ただこれは、昔から 「にやく」 だったらしく、「にえき」 は慣用読みとされていたようです。
違和感ですがね〜。

>あ、それから、「依存」の読みなんですが、NHKでは現在、「いぞん(濁音あり)」のほうを優先しているそうです(「NHK放送文化研究所」サイトより)。
言葉も変わっていくもんなんですなぁ。

へえ、そうですか。
逆に、民放のアナウンサーがこれ見よがし(これ聞こえがしかな?)に 「いそん」 と言ったりしてますね。

まあ、言葉が変わっていくのは宿命ですがね。

投稿: tak | 2015/01/25 23:12

yaku=role
eki=task

という分類に納得です。

雑役は「ぞうえき」かと思っていました……これでは変換できないか。


投稿: 山辺響 | 2015/01/26 15:29

山辺響 さん:

>yaku=role
>eki=task

少なくとも、今の言葉感覚ではこれですよね。

投稿: tak | 2015/01/26 21:03

通りすがりのものです。

私も「にえき」だと思っていました。
同じように当該ページを読んで「にやく」と読むことを知りましたが、未だにもやもやしています。

やはり説明の後づけ感が大きいからでしょうか。

偶然ですが、私も南庄内出身者で未だにネイティブスピーカーです(^^)

投稿: ニック | 2018/03/05 19:24

ニック さん:


私も、未だにモヤモヤ感がぬぐえません。

ちなみに南庄内ですと、鶴岡ですかね。酒田より上品なイメージがあります。

投稿: tak | 2018/03/05 21:02

さてそうすると、、、という下りの元サイトを見てもやもやして、ここに来てスッキリできました。
同じ感覚の人がいて嬉しい😄

投稿: 9 | 2020/03/07 15:42

9 さん:

やっぱり「荷役」は「にえき」と読みたい感覚がありますよね。

でもまあ、「それはそれ、これはこれ」という感じで、割り切っちゃいましょうか。

投稿: tak | 2020/03/07 15:54

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