米国の牛肉離れは、相当に進んでいるらしい
時事通信が「米国民の牛肉離れが止まらない」と伝えている。米国人といえば、分厚いわらじみたいなステーキをわしわし食いまくっているという印象が強いが、実は健康志向のため、牛肉の消費はかなり長期的に減少を続けているらしい。
今年 1月 4日付の「米、止まらぬ牛肉離れ = 健康志向で鶏肉にシフト」という記事によると、2014年の米国民 1人当たりの牛肉消費量は前年比 3.7%減の 24.6キロと推定され、ピークだった 1976年の 42.8キロと比較すると、40%以上の減少となっている。
その代わり、チキンがとっくの昔に牛肉の消費量を上回っている。チキンの消費量が牛肉を逆転したのは 90年代前半で、14年は 37.8キロと、牛肉の 1.5倍以上となっている。
まあ、いくらビーフを抑えても、米国人のあの大食らいぶりと、食後にさらに甘々のケーキにむしゃぶりつく様を見ていれば、肥満体ばっかりというのも納得されるが、あれだけ肥満体ばっかりだからこそ、少しは気をつけてビーフを抑えようとはしているのかもしれない。
ただ、この米国人のビーフ離れで困っているのは、国内の牛を飼育する畜産農家らしく、当然ながら新たな消費地を求めている。その一番大きなターゲットが、他ならぬ日本らしいのだ。TPP が本格的に効力を発揮したら、米なんかより牛肉が大きな焦点になるとみられている。
このニュースを聞いて、私なんかはタバコのことを思い出してしまう。その昔、米国で喫煙率が劇的に下がった結果、米国のタバコ会社は新たな消費地として日本に狙いを定めた。日本に輸出攻勢をかけただけでなく、さらにタバコ産業に未来はないと見て取るや、日本のタバコ会社にブランドを売りつけたのである。
日本タバコ産業(JT)は、ウィンストンやマールボロなどの米国のタバコブランドを、ありがたがって買い取ったのだが、米国にしてみればちょうどいい厄介払いだった。そして今、JT が日本のタバコ離れのために、東南アジアなどに売り込もうとしている。悪い歴史ほど繰り返すものである。
日本ではまだ「黒毛和牛」なんかのブランドがありがたがられているが、いずれ米国と同じように牛肉離れの時期が来ると、私はみている。長期的にみれば、牛肉の業界に明るい未来はない。それは世界の食糧供給事情という視点からみても、当然の帰結である。
このことは、牛肉 1kg の生産に要する穀物飼料は 7kg になるため、肉を多く食うのは人間の口に入るべき穀物の無駄遣いであり、飢餓救済から遠ざかる生活習慣と指摘されるなど、単なる好き嫌いの問題ではなく、ちょっとした倫理的なマターとまで捉えられ始めていることとも関連している。
ヘビースモーカーだった私がタバコを止めて、37年になる。何度か書いたことだが、私がタバコを止めた理由は、自分の健康に悪いからというよりも、周囲に害毒を及ぼすのはカッコ悪いことと認識したからだ。それに気付くのが、自慢じゃないが他の大多数の日本人より早かった。
さらに、牛肉も絶対に食わないというわけではないが、少なくとも牛肉料理と言われるメニューを食すことはほとんどなくなった。これも、日本人の中では平均よりは少し早いと自負している。
私はそれほど肥満ってわけじゃないし、血圧やコレステロールが高いってわけでもないから、健康的には牛肉を止める理由はない。ただ、牛肉をわしわし食うのはカッコ悪いと思うようになったから、あえて食わないのである。
なんだかんだと言いながらも、米国の大きなトレンドは時間をおいて日本でもトレンドになることが多い。だったら、今のうちから牛肉離れしておく方が、本当にそうなってから宗旨替えするより精神的に楽というものだ。
しかも、米国の牛肉離れは自らのあまりの肥満体に危機感を覚えてのことという、セルフィッシュな側面が大きいが、日本人はそんなことより、モラル的な問題で牛肉忌避するというなら、その方がずっとカッコいいではないか。
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