ガラケーはあと 20年滅びない
7年ぶりにガラケーの出荷が増加したのだそうだ。不思議でもなんでもない。世の中にはスマホなんて使わなくても全然不便を感じないで済む人がいくらでもいる。初めて iPhone を買った 6年前、私は次のように書いている (参照)。
iPhone ユーザーの先輩である I 氏は、「これ、電話としては、むしろ使いづらい」 と言っていた。単に通話とメールだけしか使わないなら、フツーのケータイの方がずっといいようなのだ。それ以外の総合的な機能を使うつもりでないと、iPhone ユーザーになる意味がないという。
これを書いた当時、まだ「ガラケー」という言葉は一般化していなかったようで、「フツーのケータイ」なんて言っている。
今でもネットの世界では、「ケータイで音声通話とメールしかしない人にとっては、ガラケーの方が使いやすい」という声が大きい。しかし、これはほんのちょっとだが違うと思う。本当のところは、ガラケーが使いやすいのは「完全に音声通話主体で、ほんの時々ショートメールを使う程度」という人にとってである。ガラケー・ユーザーは、いわゆるインターネット・メールとはほとんど縁がない。
私はガラケーを使っていた頃、メール機能はショートメールですら滅多に使わず、ほとんど音声通話オンリーだった。家族からショートメールが届くと、あの使いにくいテンキーでものすごいフラストレーションを感じながら返事を打っていたものである。メールは PC でするものだと思っていた。
PC のキーボードで快速入力する時の心地よさと、ケータイのテンキーでチマチマ入力する時の落差がありすぎて、到底積極的には使う気になれなかったのである。ところが iPhone を買ったとたんに、すっかりメールでもヘビーユーザーになった。文字入力にフラストレーションを感じないで済むからである。今では iPhone のない生活なんて考えられない。
ただ、中にはガラケーとタブレットの二刀流で、音声通話はガラケー、その他の機能はタブレットという人もいるらしい。これなどは、相変わらず「音声通話だけなら、ガラケーの方が使いやすい」ということを物語る材料になるかもしれない。
ケータイ・ユーザーは今、完全に二極化している。「音声通話もできるインターネット端末としての機能を享受するスマホ派と、「あくまで音声通話主体」のガラケー派だ。ガラケー派にとっては、ショートメールすら「貴重な機能」である。ほんのたまにしか使わないのだが。
ただ、ガラケー・ユーザーにしても時計とカレンダー機能ぐらいは意識している。といっても、アラーム機能やスケジュール管理機能まで深入りするわけではなく、あくまで単なる 「時計と暦」 である。朝起きる時には枕元の「目覚まし時計」を使い、スケジュール管理は手書きの手帳で行う。そして写真はデジカメで撮る。
多くのスマホ・ユーザーが、電話、カメラ、音声レコーダー、スケジュール管理、電卓、メモ帳、ラジオ、辞書、地図、ゲーム機、列車時刻表、インターネット端末、ブックリーダーなどの多機能をスマホ 1台で済ませているのとは、大違いである。
しかしかくいう私も、実は iPhone ユーザーになる 1年半ぐらい前には、「1台の多機能機より、複数の専用機」なんていう記事を書いていたのである。いや、私だけでなく、世の中全体が、多機能機 1台ではなく、専用機数台を持ち歩くのが主流という時代だった。
当時の調査では「スマートフォンのおかげで生産性が向上していると回答したのは43%のみ」で、「多くの携帯端末利用者は、現在使用している端末に新機能が追加されても、それは単なる『おまけ』のようなもので、ツールとしては役立たないと考え」ていた。カメラ付きケータイ所有者の 80%が日常的にデジタルカメラを携帯し、スマートフォン利用者の 75%は PDA を持ち歩き、マルチメディア携帯利用者の 50%が MP3プレーヤーを携帯していたのである。
わずか 8年ほど前の話だが、今とは隔世の感がある。この状況をがらりと変える契機になったのは、やはり iPhone の出現だったといって間違いなかろう。そしてこの 8年ほどの間に、スマホがない生活は考えられないというライフスタイルに転換した人と、しなかった人がいるというだけの話だ。
スマホがなくても全然不便じゃないというライフスタイルは、その人の年齢とほぼ同じだけの長い間続いてきたのである。もし 60年間そうしたライフスタイルが続いたのであれば、残りの人生の 20年ぐらい、ガラケー 1台あれば十分すぎる。そうした人に無理矢理スマホを持たせても、それは単に気の毒というものだ。
だから、ガラケーは少なくとも 20年は滅びないと思っている。
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コメント
私は、逆に音声通話をほとんど使わないので、音声をほぼゼロ円で維持できるガラケーで、その他は格安SIMを使ってiPhoneでという風にしました。2台持ちは不便な面もありますが、月額合計1,000円くらいで済んでしまいます。
数年前と今の大きな違いは、格安SIMと呼ばれるMVNOの780円とか980円のプランが通信速度的にもLTEで、データ量的にも2-3GBと、普通に使う分には全く問題のないレベルになっていることだと思います。
これに500円ほど足せば音声通話もできるSIMもありますが、なにしろ月々のサポート金額と基本使用料が相殺してほぼゼロ円で維持できてしまうガラケーがあるので(本当の理由は、昔から使っている電場番号が気に入っているのでそれを維持するためなんですが)別端末にしてます。2台持っていて面倒なのは、持ち歩くことよりも充電ですね。ガラケーは数日に一度でいいんですけど。
投稿: きっしー | 2015年2月10日 20:48
きっしー さん:
月額 1000円は魅力ですね。
ただ、我が家は家族割だのナンだの都合で、変更は面倒かなあ。
投稿: tak | 2015年2月11日 20:55
私はガラケーとWiFiのみのタブレットを使っていますが、日本に戻ったらそういうわけには行かないだろうとずっと思っていました。ところが最近はオリンピック効果でWiFiの普及が加速しているようですし、さらにガラケーが滅びないとなれば、ひょっとしたらこのままで行けるのかも?と思い始めています。
投稿: emi | 2015年2月12日 07:19
emi さん:
最近は、電車に乗ってもコーヒーショップに入ってもホテルに泊まっても、フリーで Wifi できるところが多くなりました。ただ、最初のログイン時に必ず何らかの手続きが必要になり、それが結構面倒です。
JR のフリー Wifi は、最後にログインしてから一定期間が経過するとアカウントが消滅するみたいで、また新たに手続きしてログインしなければなりません。
このバリアーの高さは無意味に思われます。どうせフリーなんですから、アカウントなしでするっとログインさせてくれればいいのに。
あるいは、あまり大勢でつながれすぎるとパンクする程度のものなのかもしれません。
また確かに Wifi につながってはいても、メールの受発信やブログのアップロードができなかったりすることもあり、全面的には信頼できません。
投稿: tak | 2015年2月12日 19:33
そうですか…まだまだですね。
数年前、日本の有名大学で研究データを採らせていただいたとき、WiFiの公共利用などについて進歩を阻んでいるのは技術的なことではなく、世界的に見るとかなり遅れているという認識の欠如と、心配性による「何か起きたら困るからやめとこう」体質だなと感じました。今もそういうところがありそうですね。
ま、でも変わるとなったらゴロッと変わるだろうと期待しています。
投稿: emi | 2015年2月13日 05:40
emi さん:
日本のエラい人たちって、基本的にはインターネットが嫌いなんだろうなあと思っています。
「何か起きた時」に頭下げまくらなければならないのがイヤという 「心配性」 故なんでしょうね。
「何か起きた時」はしょうがないと割り切ってくれる方が、無駄に頭下げまくられるよりずっとありがたいんですが。
投稿: tak | 2015年2月13日 11:22