中国人の 「爆買い」 を巡る冒険
中国人の 「爆買い」 というのが、エラい話題になっている。とくに銀座のラオックスがものすごいらしく、今は旧正月(中国でいう「春節」)休みの時期なので、大型バスでどんどん乗り付け、電化製品をばかすか買いまくっているという。
中国内で買うのではなく、わざわざ日本に来て、あれだけ大量の商品を買いまくったら、帰りの飛行機で手荷物の量が半端なことではなくなって、エクストラ・チャージを払わなければならない (ANA の場合は手荷物超過 1個につき 2万円だという) 。それでもひたすら買いまくって持ち帰るというのだから、日本で買うというのは、よっぽどのメリットがあるのだろう。
まず考えられるのは、日本で買う方が中国内で買うよりずっと安いということだ。調べてみるとまさにその通りのようで、Serchina というサイトに "中国人観光客の「爆買い」は当然か・・・日本で買えば、こんなに安い!=中国メディア調査" という記事がある。
この記事によると、中国人観光客が日本で購入する 4大商品は 「魔法瓶、セラミック包丁、洗浄便座、電気炊飯器」 で、日本では中国国内の半額もしくは 3分の1の価格で購入できるというのである。
具体例として、タイガー魔法瓶の製品は日本で約 356元(約 6,770円)だが、中国のネット通販サイトでは 680元(約 12,940円)になり、東芝の洗浄便座は日本で 734元(約 13,970円)だが、中国では 2,769元(52,700円)もすると伝えている。なるほど、中国で買うと 2倍から 3倍ぐらいの値段になる。
どうしてこんなことになるのかというと、「価格はコストによって決まるものではなく、市場の競合製品の価格によって決まる」という中国の日系企業社員のコメントを紹介し、「中国人の消費能力からすれば、価格が日本より高くても売れる」と結論づけている。
ただしここでいわれる「中国人の消費能力」というのは、平均的中国人ではなく、「富裕層の中国人」ということだろう。中国人の金持ちは、日本の 2〜3倍の価格でも買えるということで、こうした商品を売る業者は、そもそも平均的中国人は相手にしていないのだろう。つまり、日本の商品は「贅沢品」という位置付けなのだね。
中国で平均よりちょっと上の収入を得ている層は、「ちょっとした贅沢」としてやたら高い値段の日本製品を買うこともあるのだろう。しかしそれよりもずっと金持ちの層は、そもそも中国内で買おうとなんかせず、日本に旅行して、金に糸目を付けずに「爆買い」するというわけだ。
ただ、1人で 3つも 4つも電気炊飯器を買いまくるらしいから、自分で使うだけでなく親類縁者に頼まれたりしているのだろうし、あるいはもしかしたら、ちょっと利鞘を稼ぐために、こっそり転売しちゃったりもするのだろう。
このあたりは、バブルの頃の日本人が、「ヨーロッパ買い物旅行」でヴィトンのバッグなんかを買いまくっていたのを彷彿とさせる。高級ブランドの商品は輸入代理店がマージンをとりまくるので、日本国内で買うとやたらと高くなるが、海外の免税店で買うとずいぶん安い。それで、親類縁者に頼まれてまで買いまくっていたようなのである。
中国人の「爆買い」は、多分これと同じ図式だね。ヴィトンのバッグが炊飯器に置き換わっているだけのことだ。ただ炊飯器なんて、日本のブランドでも実は "Made in China" が多いんじゃないかと思うのだが、中国で作られた家電製品でも、日本で買う方が安いというのは不思議というか、ちょっとあこぎな現象である。
日本的発想では、中国内でもリーズナブルな価格で売ればもっと売れて結局は儲かるということになるのだろうが、今の中国では炊飯器の値段が半額になっても、やはり買えない人は買えないのだろう。だったら、買える層に高く売りつける方がいいということだ。「爆買いツァー」の登場で多少は販売機会損失になることがあっても、今のところはそうした図式なのだろう。
もう何年かしたら、中国人の平均所得も上がり、炊飯器がリーズナブルな値段だったら買えるという層が出てくるだろうと思う。そうなれば中国内での価格対応もきちんとしてきてこなれた値段になり、日本で爆買いする意味なんてなくなるのだろう。
そうなったら今度はいよいよ、ヨーロッパでの「ブランド品爆買いツァー」の段階に突入するはずだ。ただし、それまで中国経済がもてばの話だが。
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コメント
こんばんは、黄緑狸です。
群れを成す中国プチ富裕人民もすさまじいのですが、彼らが飽きて去った後は東南アジア勢そしてインドの富裕層が控えているという事実が(笑)。
現に昨日有楽町のビッ○カメラで肌が黄金色の観光集団とすれ違いまして、世界における日本そして東京の位置付けをそこはかとなく知ってしまうのです(^_^;)
なんだか、やたらでっかい近場の都会みたいな考えかたというか。確かに金さえ出せば大抵のモノが手に入りますからね、東京では。
私もバブルがほしいです。ああ札束を綿がわりに布団や枕を作りたい…実はきっとどこかに落ちているはずなんですが、私のバブルちゃん、庄内さん見かけませんでしたか?たぬたぬ。
投稿: 黄緑狸 | 2015年2月24日 20:03
黄緑狸 さん:
東南アジアの富裕層は数が知れていて、中国ほどではないんじゃないですかね。それから、インドの富裕層はマハラジャが昔からいるわけですが、ちょっと趣味が違っているような気がします。
投稿: tak | 2015年2月25日 23:30
tak-shonaiさんごきげんよう~おはようございます~
あのね、私は最近はばっちり田舎に住んでいますから
バク買いのニュースはテレビでは観て知っていましたが
ここ地方には無縁だと思っておりましたけれど
昨日の朝!!初めて出遇いましたよ~~
私がたまにしか行かない大型イオンですが
朝の10時過ぎでした。いきなりあちらの方々と思える集団が入ってこられたのです。
へえ?と思いながら帰りに目にしたのが、大きなバス。
とまっておりました。
こんなところまで?びっくりいたしました~~
投稿: 朱鷺子 | 2015年2月27日 08:10
tokiko さん:
すごいですね。
今や、銀座と秋葉原だけじゃないんですね。
投稿: tak | 2015年2月27日 22:48