公共交通機関の利用を増やすには
Wired に「公共交通を無料にしたら、という社会実験の結果」という記事がある。都市生活者が移動するのに自分の自動車やバイクを使いまくったら、排出される二酸化炭素が増大して大気汚染を引き起こし、渋滞による交通マヒの原因となり、さらに交通事故の増加にもつながる。だったら、公共交通を無料にしたらどうなるのか。
記事によると、1970年代から始まった公共交通機関無料化の取り組みの多くは、大きな成果を収められなかったとしている。自動車で通勤していた人たちは自分たちのスタイルを変えず、無料化になったバスに乗ったのは、それまで徒歩で通勤していた人たちや、暇人と子供たちだけで、大きな変化は認められなかった。
2002年のある研究は、「『無料』という言葉が引き寄せるのは、車に乗る人がより多い裕福な人々ではなく、野蛮で疎外された若者たちの大群である」と説明したという。つまり、公共交通の無料化は、本来の目的を達成することができなかったのだ。
ところがそれから、状況はかなり変わってきているらしい。記事は次のように述べる。
しかし、2012年、米国のもうひとつの分析が、全米 40の小都市や世界の他の数多くの都市の活動を評価した。こうした都市は、公共交通の無料システムを研究して維持し、成功を収めていた。利用者は大きく増え、ある小都市や大学都市においては、数カ月で20%から60%となった。一定の季節に人でいっぱいになる観光地においても同様だった。
どうやら「単なる無料化」だけでは不十分だったが、利用者の便宜をきちんと考慮した無料化は、成果を上げる例が多いとわかってきたようなのだ。無料でなくてもどうせ自治体からの助成は必要なのだから、その枠を広げて地元の活性化を図ればいいのだ。きっと元は取れる。
ちなみに、私自身の場合について考えてみよう。我が家から最寄りの常磐線取手駅までは、距離が 10km 足らずだが、バスに乗ると運賃がなんと 420円もかかる。クルマで行けばガソリンを 1リットルも消費しないから、せいぜい 100円かそこらなのに、420円とはいくら利用者が少ない田舎路線としても高すぎる。
高すぎる上に時間がかかる。クルマでいけば 20分足らずなのに、バスだと 30分以上、時には 40分もかかる。さらに本数が少ない。ラッシュアワーだと 15分に 1本ぐらいだが、それ以外の時間帯は 1時間に 1〜2本しかない。これではバスに乗りたいとは思わない。私も勤め人時代から取手駅の近くに駐車場を借りて、駅まではクルマで通勤してきた。
今は毎日通勤することはないが、それでも取手駅近くの駐車場は借り続けている。荷物が少ない時は自転車で行くことが増えたが、出張などで荷物の多い時はクルマを使わざるを得ないからだ。
毎日通勤する生活ではなくなった今、できれば駐車場の契約を打ち切って、自転車かバスを使うことにしたいのは山々である。それを躊躇させるのは、やはりバスの本数が少なく、時間と金がかかるという現実だ。
もしバス会社が、1日中図体のでかいバスを走らせずに、省コストで小回りのきく小型バスを、本数を増やし、低運賃で走らせてくれたら、私は喜んでバスを使うと思う。あえて「無料だったら」と言わないのは、こんな郊外の田舎町では、無料では到底維持できないだろうからだ。しかし片道 200円台だったら、駐車場の契約を打ち切って十分にコストが合う。
田舎のバス路線が不便で高いのは、まさに不便で高いという理由で敬遠されるからである。だから田舎では、遠方からの来客はクルマで駅まで迎えに行き、帰りも駅まで送るのが常識だ。バスで来てバスで帰ってくれとは、気の毒で到底言えない。しかし便利で安くしてくれれば、それも十分「あり」だ。
そして利用客は増え、交通渋滞は減り、空気もきれいになる。
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コメント
バス高い…。
片田舎の宿命でしょうか?
比べることもナンセンスですが、最寄りバス停からJRの駅までの定期券代と、その駅から名古屋に通う、距離約4倍の電車の定期券代と…、なんでバスの方が高いねん!
仕方がないとは思いますが…。
投稿: 乙痴庵 | 2015年3月19日 01:58
乙痴庵 さん:
高くて遅くて本数が少ないから、クルマを使う。するとますます利用客が減って、高くて遅くて本数が少なくなる。
いたちごっこですね ^^;)
投稿: tak | 2015年3月19日 11:33