「グスク」 を巡る冒険
9年前に沖縄に行った時、「城」のことを沖縄の言葉で「グスク」というと知った。
沖縄の世界遺産は、「琉球王国のグスク及び関連遺産群」という名で登録されているが、それぞれのグスクは登録名としては「首里城跡(しゅりじょうあと)」や「今帰仁城跡 (なきじんじょうあと)」などで、「グスクあと」ではない。このあたりはややこしいが、単純に考えて、沖縄では「城」は「グスク」というと思っていいようだ。
今回初めて知ったのだが、那覇の近くの「豊見城市」の読みは「とみぐすくし」で、「とみしろし」ではない。一時高校野球で甲子園大会の常連だった「豊見城高校」は「とみしろ高校」と読むのが正式名称で、名字によくある「豊見城」も「とみしろさん」と読むのがスタンダードだというので、これもまたややこしいが、とにかく地名の「城」は「ぐすく」と読むことが多い。
豊見城以外にも、宇江城(うえぐすく)、兼城(かねぐすく)、中城(なかぐすく)などがある。また「玉城城」という遺跡は、「たまきじょう」ではなく「たまぐすくぐすく」になるというので、これまたややこしい。
グスクは「城」であるとはいえ、内地のイメージの「城」と同じと思うと、イメージはかなり裏切られる。特徴的なのは野積みの石垣で囲まれていることで、私が行ったことがある首里城も今帰仁城も玉城城も、すべて見晴らしのいい小高い山の上に、石垣で囲まれた遺跡がある。
内地の天守閣のある城とはずいぶん違っていて、「グスク」というのは戦略上の要塞というよりもむしろ、その構造は日本の神社とよく似ている。多分、グスクの城主はほとんど「神」と同格の存在として崇められていたのだろう。神社の本殿にあたるところに、城主の住まいがあり、その前の中庭で、臣下が城主を礼拝するという図式のようだ。
「グスク」の語源としては、もともとは「城 = スク」で、それに「御」がついて「御城 = グスク」になったと考えられている。さらにグスクの最も古い形としては、その中心部に必ず「御嶽(うたき)」という礼拝の場所がある。私が日本の神社とよく似ていると直観したのも道理のようなのだ。
「御嶽(うたき)」は、日本語の読みでは「おたけ」 なのだろうが、いずれにしても祭祀を行う場所である。琉球王国最高の御嶽は、南城市の海岸にある「斎場御嶽 (せーふぁうたき」で、これも世界遺産に登録されている。私も今回行ってみたが、なるほど「聖域」というにふさわしい場所だ。
沖縄というところは、ものすごく奥が深くて何度でも訪ねたいが、何しろ遠すぎる。しかしできるだけ機会をつくって訪問したいと思う。
| 固定リンク
「比較文化・フォークロア」カテゴリの記事
- 区域と時間帯限定での「路上飲み禁止」は生ぬるい(2024.10.03)
- 米国の「日本ブーム」を音楽視点から見ると(2024.09.15)
- 「縄文人度合」という概念があるんだそうだ(2024.09.09)
- 北朝鮮の「汚物風船」と「エンガチョ」のまじない(2024.05.31)
- 鯉のぼりの「布製」と「ナイロン製」という表記って?(2024.05.07)
コメント
たぬ。お久しぶりです。
別にスピリチュアルは話をしているわけではないのですが、沖縄や、一部の南方の島にはどうやら足を向けてはいけないようです、私は。出身地でもないし恐らくはご縁の関係のようですが、なかなか楽しそうな固有文化があるというのに、遊びに行けぬとは残念至極なり。。。
投稿: 緑狸 | 2015年4月21日 08:26
緑狸 さん:
それはお気の毒に。
投稿: tak | 2015年4月21日 21:43