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2015年5月28日

FIFA の汚職問題で考える

FIFA 幹部の汚職事件が大きな広がりをみせている。FIFA 内部の腐敗に関しては何年も前から指摘され、賄賂の横行については公然の秘密みたいなことになっていたから、こうなるのは時間の問題だったと思う。ただ、ちょっと興味を覚えるのは、この問題の捜査をリードしたのは米国の FBI だったということだ。

今、FIFA を主導しているのは、南米やアフリカの新興国である。なにしろ西ヨーロッパよりも圧倒的に国の数が多いのだから、会長選挙においてはすべての加盟国が平等に 1票を投じる権利をもつ FIFA においては、当然といえば当然だ。

現会長のゼップ・ブラッターも、国籍としてはスイス人らしいが、2010年ワールドカップの開催地をを南アフリカと決定する見返りに加え、さらに金をばらまいてアフリカ票を獲得して会長選挙に勝ったと、もっぱらの評判である。ちなみにこの人、一時は 「世界ガーターベルト友の会」 という団体を主宰、パンティストッキングの普及阻止活動を行っていたという、ちょっとわけのわからん人である。(参照

とにかくサッカーというのは、多分世界で一番盛んなメジャー・スポーツで、とくに開発途上国で最も盛んである。近代フットボールの発祥の地は英国とされていて、FIFA も最初は西ヨーロッパ諸国の主導で結成されたが、今では途上国の勢いの方が強い。ヨーロッパのサッカーリーグも、南米やアフリカ出身の選手がいなければ成立しないほどだ。

そうなると、少々乱暴な言い方だが、現在の FIFA で力をもっているのは、「賄賂はもらって当たり前じゃん」 という国々なのである。そうした国から来た理事が牛耳っていたら、組織が腐敗するのも当然だ。「賄賂は悪いこと」 という倫理が一応確立している欧米のサッカー団体としては、こうした状況には我慢ならなかったようだ。

腐敗が行き着くところまで行き着いたら、その反動が起きるに決まっている。一時は欧州のサッカー連盟は FIFA から脱退すべきだなどという議論までされていたらしいが、さすがにそこまでは行かずに、否応なしに内部浄化を促す手段が講じられた結果が、今回の事態なのだろう。

それを主導したのが、サッカーがそれほど盛んではない米国だったというのが、その間の言うに言われぬ事情を物語っている。米国では、ちょっとぶつかっただけで大げさに転倒してみせるサッカーは女子供のスポーツと思われているらしい。なるほど、米国女子サッカーは世界ナンバー 1 だが、男子はマチョなアメフトに流れてしまうわけだ。

FIFA で力をもっているのが途上国の理事たちでも、スポンサーなどはほとんど欧米先進国の大企業である。こうした大企業は、FIFA の腐敗に大きな不満を抱いていたようだ。さらにワールドカップの放映権の獲得でも、広告代理店やマスコミから 「いつまでもべらぼうな賄賂を使ってはいられない」 という圧力も働いていただろう。

というわけで、粛正が行われるのはかなり前から時間の問題となっていて、ついに「いつやるの?」「今でしょ!」ということになったのだろう。奢れる者は久しからずである。

ちなみに同じフットボール系でも、ラグビーは今でも先進国の方がずっと盛んで、「紳士のスポーツ」と言われている。そのためか、組織の腐敗ということもあまり聞かない。それにラテン系の血気盛んな国でラグビーなんかやったら、団体の腐敗以前に、選手だけでなく観客まで命がいくつあっても足りないだろうなんて思ってしまう。

 

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コメント

確かにラグビーの興業をめぐる腐敗はあまり耳にしませんが、紳士のスポーツだからというよりも、結局のところ、サッカーほど大きな利権が生じないからではないかと(^^; いちおう、ラグビーワールドカップも、FIFAワールドカップ、オリンピックに次ぐ(スタジアム系では)世界三大スポーツイベントの一つ、ということになってはいるようですが。

投稿: 山辺響 | 2015年5月29日 16:55

山辺響 さん:

私としては、紳士的でないと本当のケンカになりかねないので、無意識的な抑止力として 「紳士のスポーツ」 と言っている部分が大きいのではないかと思ってました ^^;)

>ラグビーワールドカップも、FIFAワールドカップ、オリンピックに次ぐ(スタジアム系では)世界三大スポーツイベントの一つ、ということになってはいるようですが。

俳句と短歌と現代詩みたいなものでしょうかね (^o^)

投稿: tak | 2015年5月29日 21:14

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