フランス人は 10着しか服を持たない?
『フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ“暮らしの質"を高める秘訣~』 という本が、一部で話題だ。著者はジェニファー・L・スコットという米国人女性。ネットの紹介ページにはこんなキャッチフレーズがついている。
典型的なカリフォルニアガールだった著者は、
フランスの貴族の家にホームステイすることになる。
その家を取り仕切るマダム・シックから学んだのは、
毎日を“特別な日" のように生きること。
そのマダム・シックのワードローブには、服が 10着しかないのだそうだ。「上質なものを少しだけ持ち、大切に使う」のが、彼女のポリシーであるらしい。ジェニファーはそうした生き方に感銘を受ける。
しかし、へそ曲がりの私には、ワードローブの中に 10着しか服がないなんてことは、いくら何でも信じられない。
スーツ(上下で 1着とカウントする)、夏用と冬用のジャケット各 1着、シャツ(あるいはブラウス)、スカート、パンツを持つだけで 6着になる。それにコートとドレス、セーターを足したら 9着だ。そして、シャツ(あるいはブラウス)は洗濯しなければならないから、最低限もう 1着は必要だろう。それで 10着になる。
つまり、季節が変わらなければほとんど毎日同じ上着を着て、せいぜいスカートとパンツを交互にコーディネートし、たまにたった 1着のドレスかスーツを着ることになる。しかもそのドレスとスーツは、夏も冬も同じものだ。
私のように、年がら年中シャツとジーンズに、冬はジャケットを羽織るという暮らしをしていても、カッターシャツ、ポロシャツ、Tシャツが 3着ずつ(洗濯や着替えが必要だからね)で、それだけで 9着になってしまう。ワードローブが 10着というのは、針小棒大にもほどがある。
もしそれが本当だったとしたら、フランスのファッション業界はここまで発展しなかっかっただろう。たくさん買う人がいるから、パリはモードの中心と言われるのだ。まあ、輸出比率が高いことは確かだけれど、内需なしには「ファッション・センター」たり得ない。
「いや、そうではなく、アウターウェア(つまりジャケット、スーツ、ドレスの類い)が 10着しかないのだ」なんてことだとしたら、私のような者からみたら、それは取り立てて大したことじゃない。「ごくフツーじゃん。それだけあったら、十分すぎるじゃん」ということになる。
ジェニファーは結局、「パリの貴族」という「ブランド」 を利用しているのではあるまいか。まあファッションの世界では、「パリの貴族」は確立したイメージがあるから、アピールしやすいのだよね。日本だったら、さしずめ京都の老舗のおかみさんのライフスタイルとか。
ジェニファーがもし、未開の地の部族の家にホームステイし、その部族の女性が、彼らにとっての「上質」なものを少しだけ持って大切にし、毎日を「特別な日」として生きていたとして、ジェニファーはどんな印象を持つだろうか。
私だったら、そうしたライフスタイルの方に感動してしまうだろう。ジェニファーがもしそうした体験をしたとして、パリでの体験と同様に、本を書くほどに感動するとしたら、それは本物だと思うのだがね。
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コメント
10着のアウターなら、「そんなに持ってません。」
冬場のベスト(ぶたさん革)、綿のパーカーは20年以上愛用してますので、必然的に増えません。
安物買いではありますが…。
投稿: 乙痴庵 | 2015年5月25日 08:17
乙痴庵 さん:
「上質のもの」 というのも、ちょっと落とし穴的な感じがします。
つい脳内で 「ブランド物」 に翻訳しちゃう人が続出しそうで。
投稿: tak | 2015年5月25日 14:17