フード・ロスを避けるために
Huffington Post が「売れ残り食品の廃棄を禁止する法律、フランスが全会一致で可決」という素晴らしいニュースを伝えている。
フランスのスーパーマーケットでは、販売できなくなった食品の多くを化学薬品で処分してきた(これは英国でも同様らしい)が、今後は売れ残った食品は慈善団体に寄付するか、家畜の飼料や肥料に転用しなければならなくなった。そのため、スーパーマーケットは慈善団体と契約を結ぶことが義務付けられるという。
フランスのレクスプレス誌によると、フランス国民 1人あたりの食品廃棄量は20~30キログラム/年に達する。トータルの金額換算では 120億~200億ユーロ(約1兆6000億~2兆6700億円)という膨大な無駄遣いになる。フランス政府は食品の廃棄量を 2025年までに半減させる目標を立てており、今回の法律はその一環だ。
翻って我が日本をみると、食料の60%を輸入しながら、その裏で、年間 2000万トン以上の食品が廃棄されている。これは食品全体の 3分の 1 に達すると言われる無駄遣いであり、さらに自然環境破壊につながる行為でもある。
このうちいわゆる「フード・ロス」(本来食べられるにも関わらず廃棄される食品)は 500~800万トンと試算されている(平成21年度農林水産省推計)。少なく見積もられた 500万トンという数字を採用しても、日本の人口 1億 2000万人で割ると、1人当たり 約 42キログラム/年となり、フランスの 1.4〜2倍に相当する。実際に日本のフードロスは、世界で断トツの 1位なのだ。
フランスの農産食品業担当大臣ギヨーム・ガロ氏は 「まだ食べられる食品が廃棄処分され漂白剤がかけられていることは、恥ずべき事態だ」 とコメントしたと伝えられているが、それなら日本の状況は 「恥ずべき以上」 である。なにしろ、世界の食料援助量(平成 23年で年間約 390万トン)を軽く上回る量の食品が、まだ食べられる状態で廃棄されているのだから、それはもう「罪」と言っていい。
日本のフードロスを大きくしているのは、「3分の1ルール」という食品流通業界の商慣習と言われている。食品の製造日から賞味期限までを3分割し、「納入期限は、製造日から3分の1の時点まで」「販売期限は、賞味期限の3分の2の時点まで」を限度とするものだ。
例えば賞味期限が 6カ月である場合、残り 2カ月を切った食品の多くは、十分食べられるのに店頭から消えて廃棄されてしまう。このルールは緩和される方向で検討されているが、まだまだ生きているようなのだ。
こんな馬鹿馬鹿しい商習慣が維持されているのは、消費者の責任でもある。主婦の多くは例えばスーパーで牛乳を買う場合、手前に並べられた賞味期限間近のものを避け、奥の方に手を突っ込んで新しい商品を買おうとする。そのため、手前に並べられた商品は賞味期限の前に「売れ残り」として処分されがちだ。
コンビニを経営する知人は、「陳列された手前の方から買ってもらえるだけで、どんなにありがたいか」としみじみ言う。どんなに奥の方の商品を買っても、実際には賞味期限を十分残して消費してしまうか、反対に冷蔵庫の奥に忘れ去ってしまうかのどちらかなのだから、全くナンセンスなのだ。
「素直に手前の商品から買う」習慣にするだけで、フードロス軽減に大きな効果を発揮する。日本人はまず、スーパーで奥の方に手を突っ込んで買うのは「恥ずべき浅ましい姿」として共通認識する必要がある。
それから、日本でフランスのように「売れ残り食品を慈善団体に寄付する」ことを義務づけたりすると、「いくら何でも売れ残りを食べさせるのは失礼だし、食べさせられる人が気の毒」などと、見当外れを言う了見違いがきっと出てくる。まだ食べられるものを食べさせずに捨てる方が、よっぽど気の毒なのだが。
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