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2015年6月16日

ビジネスマナー屋の妄言

ネット界隈で "ビジネスマナー屋「謎理論提唱して儲けるンゴ!」" という 2ちゃんねる のスレッドが話題になっている。最初のコメントは、こんなようなのだ。

「面接室のドアのノックは3回です。 2回のノックはトイレの時です。」
就活生 「身に付けなきゃ (使命感)」
ビジネスマナー屋「やったぜ。」

これに対して、「ワイの職場でもこの手のセンセイ呼んでるわ なんの免許も持ってないただの口八丁や」という、言い得て妙のレスが付き、あとは怒濤の如く、もっともらしさを装ったどうでもいいテーゼが挙げられている。誰でも 「はあ?」 と思ったことのあるであろう、こんなのだ。

「ご苦労様は目下の人に対して使います。目上の人に対してはお疲れ様です」
「あと 『了解しました』 は失礼理論もあるで」
「名刺交換の方法を教えて飯を食うンゴ!」
「ビールを注ぐ時はラベルを相手に見える様にとかいう謎マナーあったけど」
 などなど……

こんなのは「常識」だと信じ込んでいる輩にとってのみ常識なのであり、本当は「どーでもいいこと」だ。そもそもほとんどの人が 「へぇ、知らなかったわ!」 と思ってしまうまさにそのことが「常識でもなんでもない」ことの証明であり、単に「言い出した者勝ち」という世界になっている。

このようにして「ビジネスマナー屋」のまき散らす「非常識」を信じる人が増えるにつれて、馬鹿馬鹿しい滑稽な言い回しや仕草が「常識化」するというプロセスが進行している。「いらっしゃいませ、こんにちは」という妙な挨拶は悲しいことに、既にコンビニの定番となってしまった感がある(参照)。

それに加えて、みぞおちの前で手を組んでお辞儀するという滑稽な仕草が広まりつつあり、さらに「了解メール」を気軽に返信できなくなるという困った世の中になるかもしれない。これも皆、無責任なビジネスマナー屋が口から出まかせで儲けようとしているためである。

最近では、「グラスの脚をもつのはNGマナー!? ワイングラスの正しい持ち方を伝授!」というくだらない話が注目された。これに関しては、私が今年 2月 1日の "「ワイングラスのボウル部分を持つのが国際的常識」 という嘘" という記事で、きっちり粉砕しておいた。

ビジネスマナー屋ではないが、細木数子という趣味の悪いオバサンが、テレビで「神社で柏手(かしわで)を打つときは、女性は音をさせないのがマナー」と口走って、この時はさすがに、全国の神社から苦情が殺到したという。

音をさせずに柏手を打つのは「忍び手(「短手」という表記もある)」と言って、神道式の葬式や年祭(仏教でいう「法事」)の時の作法だから、普通の時にそんなことをしたら、「縁起でもない」と怒られる。

まあ、この手の人たちの言い草というのは、せいぜいこの程度のものなのだ。ビジネスマナー屋や思いつきのデタラメでメシを食っている人の妄言をいちいち粉砕するだけで、 ブログのネタには困らないかもしれないとさえ思えてきた。

 

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世間話」カテゴリの記事

コメント

了解しました!

投稿: 乙痴庵 | 2015年6月17日 08:59

失礼しました。
続きを書く前に、うっかり「投稿」押しちゃいました。(実は確信犯)

「了解」について、日本の兵隊さんが使う際は、「了解!」と言い切る必要があったと聞きました。
深い理由は存じ上げませんが、指揮命令に対して簡潔明瞭な返答を求められたから、と言うところでしょうか。

この話を聞いてから、「了解しました」、「了解で〜す」などの返答を聞くと、若干の違和感を感じます。

代わりに、アタクシは「承知!」と返答しております。

投稿: 乙痴庵 | 2015年6月17日 09:08

本筋ではないところへの長文のコメントでまことに恐縮なのですが、
「いらっしゃいませ、こんにちは」にひっかかってしまいました。

こちらの表現に完全に慣れてしまっていて、
違和感を感じていなかったところでしたので、リンクを開く前に少し考えました。

考えた結果、
招き入れる言葉をかけてから、今日は●●な日ですなと呼びかけるというのも変だ、
という自然な気持ちの順序からの倒錯への違和感かなと思いました。

コンビニ店員に心から歓待しろよとは言わないまでも、
気持ちの裏打ちがないことがあからさまに分かるような挨拶をされると、
さすがに気持ちが悪い。といったところか?と思い、
答え合わせのような気持ちでもってリンクを開いたところ、
「いらっしゃいませこんにちはぁ」 は、この 「いらっしゃいませ、おはよう」 に相当するのである。との記載があってたまげてしまいました。

これまでの人生で、「こんにちは」という呼びかけに、
タメ口の挨拶というニュアンスがあると認識したことが全く無く、
そのようなニュアンスを体感したことも無かったためです。
担任の先生にも、校長先生にも、師範にも、ボスにも、クライアントにも(順不同)
昼に会えば「こんにちは」と挨拶してきました。

「おはようございます」から「おはよう」の省略は、
丁寧表現の「ございます(ござる+ます、でしょうか?)」の省略なので、
まさに気軽な挨拶といった趣であって、
校門の前に立つ校長先生に「おはよう」なんて言う小学生がいたら
非常にけしからんと誰もが感ずるところかと思うのですが、

「こんにちは、●●」から「こんにちは」の省略や、
「左様ならば、●●」から「さようなら」の省略には、
出自において略語であることは知れているものの、
省略せずに正式に述べる人を見かけないこともあり、
本来言うべき何かを省略して略語で呼びかけているという、
気軽な挨拶というニュアンスがあるということを体感として理解できません。
Takさんのおっしゃることながら、俄かには信じられません。

「こんにちは」単体で挨拶されて、失礼なやつめと思う人は、いないと信じているのですが
(もしかして、ここからズレている?)、
「こんにちは」単体では際立たない略語という出自が、
「いらっしゃいませ」と連続することで対比されて、無礼さが際立つのでしょうか。
Takさんが「要するに 「いらっしゃいませ」 で持ち上げられて、「こんにちはぁ」 で落っことされるからである。」とおっしゃるところです。ここは薄っすらとは理解できますが、やはり「こんにちは」で落とす、というところが体感できないため、納得ができません。


いらしゃいませ、と、こんにちは の間に落差を感じる人がいて、それを失礼千万と感じる人がいる。ということに、今日、私は軽い恐怖を感じました。普段なら「そんな人もいるんだね。ごめんね。失礼な男で。いらっしゃいませ、こんにちは~。」てなもんだったでしょうが、いつも、切れ味するどいエントリを楽しんでいるので、Takさんに失礼千万と思われるのは嫌なんでしょうね。

ここでTakさんを不快にさせないようにするためには、自分の言語感覚、体感に基づかない配慮が必要になるわけです。相手を不快にさせないため、という理由で、その人が不快になる理由に納得できないまま、「いらっしゃいませ、こんにちは(こんばんは)」はアカンということと、Takさんの理由付けを暗記することになります。(この後、袈裟斬りにされて、心から「いらっしゃいませ、こんにちは」反対派に改宗しない限り。)

ビジネスマナーに夢中になる側を突き動かすのは、この手の恐怖だと思います。不快になる人がいると言われれば、理由抜きに従わざるを得ない立場が悲しいですね。
ビジネスマナー屋さんはこのあたり分かってやっているんでしょうからまことに悪質な商売だと思いますが、私としては、理由を聞いても納得できないマナーには従わない自由のある職を選んだ方が良いのでは?と思ってしまいました。
(最後、エントリのテーマに絡めてみましたが、ちょっと強引だったかもしれません。)

投稿: としお | 2015年6月17日 15:30

としお さん:

「こんにちは」は、本来かなりカジュアルな挨拶なんですよ。
(その理由は、リンク先の本文で触れた通り)

このあたりは言語感覚の問題で、こう言っちゃナンですが、敏感か、鈍感かによります。

ですから、上下の関係をことさら厳格にしたがる芸能界などでは、先輩に対して 「こんにちは」 とは言いにくいニュアンスがあるので、朝から晩まで敢えて 「おはようございます」 と言うならわしです。

私自身は、「こんにちは」 とカジュアルな挨拶をされても、別に不快とか無礼とか思ったりはしません。ただ、「いらっしゃいませ」 と組み合わせられると、その対比において 「違和感」 を覚えるのであります。「居心地わるさ」 という方がいいかな。

いっそ、スタバみたいに 「こんにちは」 だけで済ませてくれる方が、ずっとしっくりきます。

投稿: tak | 2015年6月17日 16:55

乙痴庵 さん:

「了解」 という言葉自体はとてもニュートラルで、目上に使っても失礼なことなどまったくないのは、階級に厳しい軍隊において、上官に対して 「了解!」 で済んでいたことでも明らかです。

ビジネスマナー屋は、まともな知識がなく、勝手な感覚や思い込みでいろいろなことを言うので、困りものです。

私としてはそんなことより、何かというと「皆さんもご承知のように……」 と言いたがるオッサンの方を何とかしてもらいたいと思っています。

"それを言うなら 「ご存じのように」 の方がいいんじゃないのかなあ" と、ここではあえて穏やかに言っておきましょう。

(「相手に対して謙譲語的ニュアンスの言葉なんか使いやがって!」 とつっかかることもできるんですがね ^^;)

ビジネスマナー屋は、このあたりのニュアンスには、とんと疎いようですね。

投稿: tak | 2015年6月17日 17:07

コンビニの、”こんにちは” は ”あなたの顔を私はしっかり見ましたからね” という、防犯上の理由からだと解釈しています。ビルの警備員が訪問者にいちいち会釈をするのと同じ理由でしょう。

投稿: ハマッコー | 2015年6月17日 22:23

こんにちは

(笑)記憶では 接客業の「こんにちは」の習慣は 東京ディズニーランドが持ち込んだものだったと思います。
理由は たしか リンク先にあったように 「一方通行でないコミニュケーションを 云々」 であったかと思います。それまでの 「お客様は神様」形式の「いらっしゃいませ」に対して ため口的フランクさを持ち込んだ新鮮さがあり、割と良いものかと思います。

で、これを取り入れようとした人が 「そうは言っても あまりにタメ口なのもなぁ」とおもったかどうかは 謎ですが、「いらっしゃいませ」を くっつけて台無しにしてしまった。 ということじゃないですかね。

そう言えば はるか昔学生のころに ファミレス的な店で 「いらっしゃいませ」のお姉さんに「いらっしゃいました。」と答えて笑いをとる遊びが仲間内で流行ったのをおもいだしました。

投稿: Sam.Y | 2015年6月17日 23:24

ハマッコー さん:

>コンビニの、”こんにちは” は ”あなたの顔を私はしっかり見ましたからね” という、防犯上の理由からだと解釈しています。

へえ! でも、その割には全然客の方を見ないで、商品を棚に並べながら、ただ 「称えているだけ」 という従業員も多いですがね ^^;)

投稿: tak | 2015年6月18日 02:00

Sam.Y さん:

>記憶では 接客業の「こんにちは」の習慣は 東京ディズニーランドが持ち込んだものだったと思います。

ほほう。

>で、これを取り入れようとした人が 「そうは言っても あまりにタメ口なのもなぁ」とおもったかどうかは 謎ですが、「いらっしゃいませ」を くっつけて台無しにしてしまった。 ということじゃないですかね。

なるほど (^o^)

それで、スタバの 「こんにちは」 だけの方が、いっそ潔くていいなと思ってしまうわけですね。

投稿: tak | 2015年6月18日 02:01

>「こんにちは」は、本来かなりカジュアルな挨拶なんですよ。

衝撃です。幼稚園か小学校低学年あたりの道徳教育で、
その部分の言語感覚は徹底的に鈍感にされてきたようです。
(園長・校長への「こ・ん・に・ち・は!」、「さ・よ・う・な・ら!」)
あと、ここは世代間格差もかなりあるのではないでしょうか。


>ですから、上下の関係をことさら厳格にしたがる芸能界
>などでは、先輩に対して 「こんにちは」 とは言いにく
>いニュアンスがあるので、朝から晩まで敢えて 「おはよ
>うございます」 と言うならわしです。


あと、この芸能界のあいさつの理由は、本当にそうなのですか?
朝、昼、夜の区別がない商売だから説や楽屋に先にいる人への挨拶だから説など聞いたことがありますが、「こんにちは」は気軽な挨拶だから説は初めて聞きました。
歌舞伎なんかの古典芸能界に由来する慣習と聞いているので、Takさんにうかがうのが一番良さそうですが、これってそうなんですか?

投稿: としお | 2015年6月18日 11:11

としお さん:

あの世界で、例えば大先輩みたいな人に向かって、「こんにちは」 とか 「こんばんは」 とか言ったら、「はぁ!?」 って感覚ありますよ。

というか、言えませんわな ^^;)

投稿: tak | 2015年6月18日 22:43

>「おはようございます」 は丁寧なのだが、それに相当する 「昼間の丁寧な挨拶」 が、日本語には欠けている。いや、実際には 「欠けている」 わけではない。あることはあるのだ。「今日は、よいお日和でございます」 とか、「今日は、ご機嫌いかがですか」 などというのが、それである。

>現代人は、「こんにちは・・・」ではなく、「きょうは」と発するのではないでしょうか。
「こんにちは」なら「よいお日和でござる」とでもしないと しっくりしません。
やはり、「昼間の丁寧な挨拶」 が現代日本語には欠けている、と言わざるを得ませんね。

同じ省略形でも「こんばんは」は、目上の人に使っても それほどの違和感はないと思います。
「こんばんは よい夜ですね」は、現在も使われる言葉だからでしょうか。


p.s.
私は昼間目上の人に挨拶するときは、「コンニチワ」と発してから、深々とお辞儀をするようにしています。

投稿: McC | 2015年6月18日 23:39

いい勉強になりました。
ありがとうございました。

投稿: としお | 2015年6月19日 16:51

McC さん:

>やはり、「昼間の丁寧な挨拶」 が現代日本語には欠けている、と言わざるを得ませんね。

そうなんですよ。
その意味で、構わず 「こんにちは」 だけで通しちゃうスタバは、革命的ですらあります。
(ディズニーランドが発祥らしいですが)

ただ、ことさら上下関係にこだわる世界では「こんばんは」も、気軽には使えませんよ ^^;)

私自身は、相手から言われる分には全然こだわらないんですけど、相手がこだわる人だと、こまっちゃいます。

ただ、何度も言いますが、「いらっしゃいませ」 とのコンビネーションで使われると、「違和感」です ^^;)

>私は昼間目上の人に挨拶するときは、「コンニチワ」と発してから、深々とお辞儀をするようにしています。

私の場合は、初対面だったら、軽く自己紹介して、「本日は、よろしくお願いいたします」 をよく使います。

別に大した意味はないけど、その場を取り繕えます (^o^)

投稿: tak | 2015年6月19日 22:00

としお さん:

よく考えてみると、「こんにちは」って挨拶は、改まった場ではあまり、というか、ほとんど使いませんね。

「ちわ〜っす」 とか 「こんちはっす」 で済む場合ならいいんですが、改まった挨拶としては、まったく使いにくい言葉です。

ビジネスで、クライアント企業の社長に初めて会うときに、「こんにちは」 なんて、言うと思いますか? まず言いません。

その他の言葉で代用することがほとんどですね。いかにうまい言葉であいさつできるかで、年期がわかるというものです。

「本日はお時間を取って戴きまして、ありがとうございます」 とかね。

そして、いかに早く 「こんちわっす」 で済む関係に持って行けるかが、腕の見せ所というか (^o^)

投稿: tak | 2015年6月19日 22:13

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