太陽光パネルのゴミの同時的大量発生はあり得ない
Sankei Biz が 「40年度の太陽光パネルごみ 77万トン」 と報じている。「耐用年数を過ぎて、ごみとして排出される太陽光パネルが 2040年度に 77万トンに達する」と、環境省が推計を公表したというのである。しかしこの発表はかなり無茶苦茶なので、「そらみろ、太陽光発電なんて役に立たん」という言い方をするのは当たらないと言っておこう。
この推計の根拠は、太陽光パネルの耐用年数が約 25年で、大体 25年ぐらい経つといきなり使い物にならなくなって、即廃棄処分になるという前提に立脚している。それが本当なら、確かにゴミの大量発生になるだろう。しかし実際は、その前提自体が誤りだ。
太陽電池モジュールは駆動部分がないので、故障しにくいと言われている。壊れるのは大抵動く部分であって、動かないのは故障しようがない。問題は「故障」ではなく「経年劣化」だが、これに関しても、パネルの素材であるシリコン結晶は非常に安定的なので、劣化も遅い。
太陽光パネルは普及後間もないので、耐用年数に関しては未知数と言われているが、一般には 25〜30年とされている。しかしこれも「推測的な一般論」であり、事実の語るところをみれば、1966年に長崎県の灯台に設置されたシャープ製の太陽電池モジュールは半世紀近く発電を続けているし、 京セラの住宅用太陽光発電は 1984年から 30年以上稼働し続けている。
京セラの発表によれば、経年劣化に関しては「25年で 9.62%発電量が下がった」とされている。つまり、25年経っても 90%の能力をキープしているのだ。当然ながら個体差はあるだろうが、いきなり壊れて使い物にならなくなるわけではない。経年劣化で能力が 80%程度に落ちたとしても、即廃棄処分してしまうユーザーはごく少数だろう。しかも最新のパネルはさらに経年劣化が抑えられている可能性がある。
早めに設備更新される可能性があるとしたら、現在の技術水準を大幅に上回る製品が、大幅に安い価格で提供された時だ。それが実現すれば、従来の古い製品を撤去してでも、高機能で安い新製品に更新するユーザーが出てくるだろう。しかしその場合でも一斉にそうなるわけではなく、漸進的な動きとなるだろう。
さらに撤去された古いパネルが即廃棄処分となる可能性は極めて低く、途上国に非常な低価格で(タダでもいいぐらいだ)輸出してリサイクル使用( reuse : 再使用)してもらうことになるはずだ。まだ 90%ぐらいの、悪くても 70%以上の能力を残して稼働可能なものが非常に安価で入手できるなら、使わない方が損だ。
「エコ」を標榜して展開されているのだから、リサイクルしなかったら、世論の袋だたきに遭う。つまり、25年後に太陽光パネルのスクラップが同時大量発生するというのは、あまりにも乱暴な推論というほかない。ゴミは一度にどっとではなく、徐々に少しずつ発生するのだ。最終的にはどのパネルも廃棄処分されなければならないが、それは誰が考えても核廃棄物に比べればずっと始末がいい。
よりによって環境省がどうしてこんな馬鹿なことを言い出したのか、理解に苦しむ。ゴミの山になるから問題だという理屈を称えるなら、まず最初に警告を発しなければならないのは、より有害な廃棄物を発生し続けている原子力発電に対してだろう。
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コメント
僕も太陽光パネルのゴミは大きな問題ではないと予想していますが、根本的な事なのですが『パネルを捨てる必要はない』と僕は考えています。
もともと太陽光発電に適した立地なのでしょう。20年後には今より発電効率が良く薄いパネルが発明されていることだと思います。そこで今あるパネルの上にそのまま新しいパネルを敷き詰めたらいいと思うのです。
(古いタイルを剥がさずに上塗りするように)
そうすれば撤去費用も不要。ゴミも出ません。そして土台自体が長期間持つように今からしておけばこの問題の大半は解決するように思ってます。
(アイデアレベルで技術的なことはサッパリわかりませんが)
投稿: HASE | 2015年7月22日 13:14
HASE さん:
なるほど、捨てる必要はないですね。
ただ、「新しいパネルの下敷きにするぐらいなら、俺んとこにくれ」という需要も確実にあるはずで、廃棄に要するコストよりその方が安いはずですから、まずはリサイクルでしょうね。
個人の家の屋根に載せているケースでは、重量の問題もあるでしょうし。
投稿: tak | 2015年7月22日 17:05