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2015年7月 9日

ヤマダ電機とイオンの苦境の原因

All About に「ヤマダ電機とイオンはなぜ同時に苦境に陥ったのか?」という記事がある。この記事は、この 2つの小売り大手の不振の原因が次の 4点であると指摘している。

  1. グロスメリットが出せなくなってきたこと
  2. 地方の不振
  3. 品質面での改良スピードの遅さ
  4. 消費者から飽きられてしまったということ

こうしたいわゆる「マーケティング・コンサルタントの視点からの指摘」というのは、私はいつも眉に唾をつけて聞くことにしている。しかもこの記事の筆者が、「軽自動車が売れるのはガソリンより安い軽油で走るから」 なんて書いた前科のあるお方だから(参照)、一層警戒してかからなければと思ってしまうのである。

まず「グロスメリットが出せなくなった」というのは、そうなる前に十分予測されていたことだし、「地方の不振」なんていうのは、何も今に始まったことじゃなく、10年以上続いていることだ。

イオンとヤマダがこの 2〜3年、急におかしくなったのは、その対策が遅れたこともあるが、今さらのようにことさらな言い方をしてもしょうがない。さらに品質だの消費者の飽きだのといっても、漠然とした話でしかない。

私はイオンの不振に関しては、今年 4月 30日の「イオンは恐竜すぎる」という記事で、あのどでかい出店形態は、じいさんばあさんばかりになってしまった田舎には向かなくなったと指摘している。品質がどうとか、消費者に飽きられたとか、マーケティング・コンサルタントの先生がいかにも言いそうなステロタイプな問題じゃないのだ。

それは実際に田舎に行ってみれば、実感としてよくわかる。今や田舎はじいさんばあさんばかりである。「おしゃれな品物が欲しい」なんて思っている若者なんか極々少数なのだ。そしてじいさんばあさんは、郊外の大型ショッピングセンターにクルマで買い物に行くことすらおっくうなのである。

軽自動車でようやく辿り着いたイオンの広大な駐車場は、店舗入り口に近いスペースはすっかりふさがっていて、遠く離れた隅っこの方に駐車しなければならない。そこから延々歩いて無駄にでかい店舗に入り、やたら広い売り場で小洒落た食い物なんか買ってたら、それだけで一日分疲れてしまう。

だから地方都市のじいさんばあさんは、日常の食料品を買うのにイオンの巨大ショッピングセンター内のスーパーになんか行かない。自転車で 5分ぐらいの、小さいが親しみやすい地元スーパーに行くのである。

お馴染みのちょうどいい規模のスーパーで、ちょいちょいっといつもの品物の買い物を済ませ、さっと帰ってきたいのである。他のご大層なショップなんか覗いてみたところで、疲れるだけだから、イオンは広いだけうっとうしく感じられのである。この傾向は今後さらに強まる。

「商品に飽きられた」なんてのは、地元のじいさんばあさんに聞かせたら「はぁ?」ってなもんである。彼らはそんな変わった食い物なんて欲しがっていない。いつもの品物さえ買えたら、それで十分だ。

地元スーパーは近頃、近海で獲れた生きのいい魚や地場野菜をしっかり仕入れているから、大手のわけのわからない商品よりおいしい。「いつもの品物」で十分なのである。逆に聞き慣れない新商品なんか押しつけられても、戸惑うだけである。

だからイオンは、今では地元高校生の遊び場でしかなくなっている。彼らはたむろするだけで金はあまり使ってくれない。若い層は実店舗で下見して、ネットで安く買うなんて技を知っちゃってるから、ますますイオンが儲かるはずがない。

要するにそういうことである。イオンは自前の大型スーパーで売ろうとなんかぜずに、傘下の地元中堅スーパーの地道な仕入れを支援しながら、それにちょこちょこっと PB のトップバリュー製品を織り交ぜていけばいい。

そしてヤマダ電機に関しては、これはもう単純な話。店がダサすぎるのである。いくら地方の店とはいえ、家電量販店で貧相なパソコン売り場のすぐ隣にスナック菓子や清涼飲料水の売り場があるのを見たら、誰だって 「この店、大丈夫か? 気は確かか?」 と思う。

ヤマダ電機の近くにケーズデンキがあったら、そりゃもう、家電を買うのにヤマダに行くなんて人はいない。それだけのことだ。

 

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コメント

>そしてヤマダ電機に関しては、これはもう単純な話。店がダサすぎるのである。いくら地方の店とはいえ、家電量販店で貧相なパソコン売り場のすぐ隣にスナック菓子や清涼飲料水の売り場があるのを見たら、誰だって 「この店、大丈夫か? 気は確かか?」 と思う。

その通りですね。パソコンを買いに行きましたが、4ブランドしかなく選択肢が少なくて買う気が失せました。すぐに退散して電車に20分乗ってヨドバシにいきました。

多分本業であろう家電の売り場を疎かにして、横でポテチを陳列されたんでは、この店大丈夫だろうかと誰でもおもうでしょう。高崎にある本店でも客はまばらです。

ヨドバシのニイチャンはあまりというか全然ほめられたもんじゃありませんが、それさえ気にしなければ品数が豊富でつい予定外の物を買ったりします。

軽自動車が軽油で走るなんて?
軽油で走るから軽自動車といつの間にか思い込んじゃったんでしょうか。だとしたら思い込みは怖ろしいですね。

投稿: ハマッコー | 2015年7月10日 16:38

へぇ~(失礼)、あたしは東京の北のほうに住んでいますが、両方とも行ったことないですね~。PCのお店も近くにあるし。
この間のマックみたいに、売る側と消費者の乖離が、規模が大きくなるほど拡大する好例ですかね。
それにしても今日のTBSラジオで「近未来の足立区、みたいな殺伐とした~」とか言ったお笑いタレント、超むっかつくぅ~!(場違いですみません)

投稿: のぅさぎまりこ | 2015年7月10日 17:59

ハマッコー さん:

本当に、パソコン買いに来てポテチ買って帰る人なんて、いるんかなあと思いますね。(まあ、少しはいるんでしょうけど)

軽自動車が軽油で走る云々に関しては、筆者がそんな勘違いしていたとしても、編集部段階で気付けよと言いたくなりますがね ^^;)

投稿: tak | 2015年7月11日 14:45

のぅさぎまりこ さん:

足立区は何をするにも案外便利ですよね。坂道が少なくて、自転車にはうってつけだし。

投稿: tak | 2015年7月11日 15:01

久々に横から…。

うちがお世話になっているディーラーさん、2年に1回ぐらいガソリン車から軽油を抜く作業が舞い込むそうです。

「だって、軽(自動車)だから軽油なんで(入れるんで)しょ?」
だいたい、初心運転者の仕業とのことです。

投稿: 乙痴庵 | 2015年7月13日 08:57

乙痴庵さん:

セルフのガスステーションで、たまにいるんだそうですね。
それで、「軽油」 ではなく 「ディーゼル」 とか表示しているところもあるとか。

投稿: tak | 2015年7月14日 05:11

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