アップル・ミュージックの出現で CD がなくなっても困らない
Huffington Post に「アップル・ミュージックの出現で CD はなくなるか?」という記事がある。書いたのは「林伸次(bar bossa)ファンになるバーのマスター」という方で、(bar bossa)というのは、林伸次さんという人の店の名前なんだろう。
この記事はアップル・ミュージックへの疑問というか、もっと明確に言えば、音楽の価値を下げるアップル・ミュージックに抗して、CD 業界はいかにして付加価値を確保すべきかという視点で書かれている。アップル・ミュージックは水道水みたいなもので、業界はいかにしてミネラルウォーターを提供すべきかということだ。
これを読んで私は、「うぅむ、ずいぶん乱暴なご意見だなあ」と思った。アップル・ミュージックは水道水だというのだが、それはあまりにも無神経な決めつけである。実際には、アップル・ミュージックで提供される曲には、極上のミネラルウォーターもあれば、泥水みたいのものもある。それらが区別なく、定額で聞き放題なのだ。
よく考えれば、曲の質に関わりなくほとんど一緒の値段ということに関しては、これまでの CD の売り方と変わらない。変わったのは、「1枚いくら」という売り方ではなく、「何曲聴いても定額」 ということだけである。
つまり、「ミソもクソも一緒」だったのは、今に始まったことではなく昔からのことなのだ。世の中にはミネラルウォーターが好きな人もいれば、泥水が好きな人もいる。いろいろな消費者がいるので、値段の差は付けられなかったし、これからも多分、付けられないだろう。
つまり、これまでは「お金のかかる平等な世界」だったのが、アップル・ミュージックの登場で、「お金があまりかからない平等な世界」になったのである。私は正直言って、「CD って、どうしてこんなに高いんだ?」と不満を抱いていたから、アップル・ミュージックの登場は歓迎である。
アップル・ミュージックによって、音楽はより民主的なものになるだろう。これまでの「わけのわからない権威の世界」的な様相はどんどん薄れていくはずなのだ。私はそれでいいと思っている。これまでの方がいびつだったのだし。
大切なのはメディアではなく、中身なのだから。CD なんて、なくなっても一向に困らないのである。インターネットで音楽のストリーミングを聴くということにどうしても馴染めない人もいるだろうが、そうした人の多くは、既に好きな曲の CD をきっちり確保しているだろうから、あまり問題ない。新しい曲にはあまり興味がないだろうし。
それに残して意味があるとすれば、それは CD じゃなく、アナログ・レコードだろうし、それは既に一定の市場が形成されている。
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コメント
60年代からビートルズ・ストーンズをはじめいろいろなものをラジオやレコードその他で聴いてまいりましたが、正直、今となっては音楽ダウンロードもCDも触手が伸びないですね~。
ゲルマニウムラジオでポップス等を聴いていたころの「こんなのあったらいいな」に一番近いのは、やっぱりyoutubeですかね。わたしだけ?
投稿: 萩原水音 | 2015年7月22日 21:49
萩原水音 さん:
YouTube もいいんですが、著作権関連でいきなり消されることが多いんですよね ^^;)
なお、Apple Music はダウンロードじゃなくてストリーミングですから、仕組みとしては YouTube に近いです。
投稿: tak | 2015年7月23日 21:14